表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃香理事長日誌  作者: 葉月 優奈
一話:新米の|理事長《ディレクター》
4/80

二階の廊下もとても広い。

あたしと露木さんは、前から歩いてくる男を見てきた。

歩いてくる若い男は、肩を怒らせて睨んでいるようにも見えた。目つき悪い。


露木さんきれいに立って頭を深々と下げた男は、真っ黒いスーツにジーパンというミスマッチな金髪の男。

若くてギラギラさせた目つき、耳にピアスも空いていた。生徒にしちゃ、不良っぽく見えるわね。

短い金髪でゆっくり歩いた男は、肩にカバンぶら下げてこっちに歩いてきた。


「おはようございます、北小路教頭」

「ああ、露木学年主任。その女は?」

「ええ、こっちが宇喜永理事長の娘さんの宇喜永 桃香理事長代理です」

「ふ~ん、この女が?」

男は少しガラの悪い不良少年みたいに、あたしをジロジロ見てきた。なに、こいつ?なんか感じ悪いわ。


「初めまして、宇喜永 桃香です。宇喜高の理事長代理として、しばらく働くことになりました。

よろしく……」頭を下げてあたしが手を差し出そうとしたとき、明らかに怪訝そうな顔を見せた男。

「ああっ、パス。俺は女が嫌いなの、知っているだろ。なんでこんなブス連れて来るんだよ」


初対面なのに完全に小ばかにしたかのような口調で、あたしを挑発してきた。

ムッとしたあたしは、すぐにその男の方を見上げた。


「あの、あなたはなんですか?あたしとは初対面で……」

「どうして理事長は、こんな女をよこしたんだよ。ここは男子校だ、女が来るところじゃない、帰れ!」

「失礼ですが、あなたはなんですか?言っていることが、おかしくないですか?」

「まあまあ、北小路教頭。落ち着いてください」

男とあたしに、割って入って来たのが露木さん。顔には冷や汗をかいていた。


「けっ、俺は忙しいんだ。こんな女とうまくやってくつもりはねぇ、ばかばかしい」

「あんた、なに様?いきなり言いがかりみたいなことを言ってきて、どういう神経しているの?

アンタの方が、馬鹿じゃないの?金髪かっこいいと思っているの?ダサいわよ」

「俺はこういう馬鹿女が大嫌いだ。女ってのは感情的で、馬鹿なところが特に嫌なんだよ。

単純でいいよな、女って。困ったら泣けば済むって思ってやがる」

「なによ、それ!完全な女性差別じゃない!謝んなさいよ」

あたしと男の舌戦は続いていた。いがみ合って、互いの目を逸らさない。

これは女と男の戦い、引くわけにはいかない。本能的にそう思えた。


「まあまあ、二人とも。今は学校が大変な時なんだから」

露木さんがなだめると、その男はあたしから離れるように嫌な顔を見せた。

あたしもまた、不機嫌な顔でその男を睨みつけた。


「一応は理事長の指示だから……ね。仲良くしてください。

北小路教頭も、これは大人の仕事なんだから」

「はいはい、分かりましたよ。だけど俺は、ガキや女の子守はごめんだ。

教頭命令だ!露木。おまえが、こいつの面倒を見ろ」

「そうはいきません、私も学年の仕事をしないといけませんから」

「クソッ」と、苦々しい顔であたしを見てきた『北小路教頭』と言われた男。


あたしは、腕を組んで北小路をやっぱり睨んでいた。

肩を怒らせた北小路は、あたしに背を向けて廊下をすれ違った。


「あんた、許さないわよ。女性の敵!謝りなさい」

「ぜってぇ、ヤダ!お前に謝る理由はない、むしろこの世の全ての女が俺に謝れ!」

その一言を、置き土産に北小路は廊下の奥へと消えて行った。

それを見送った露木さんは、ふーっと大きな息を吐いた。ポケットからハンカチを取り出して汗を拭く。


「いやー、困りましたよ。理事長代理」

「なんなの、あいつが教頭?最悪なんだけど」

「……まあ、ええ。彼の名は北小路教頭です、二年前に急遽我が学校に就任しました若手教頭です」

「でも、おかげで分かったわ」

あたしは指を一本前に出していた。

にっこりしながら、頭の中で考えたことを言葉にした。


「理事長代理就任の件、あたしがなぜ理事長代理かってことよ。

それは、あの不良教頭を父さんが何とかしたいからよ。あれじゃあしょうがないわよね。

見た目もダサイし、頭も悪そうだし、性格最低だし。

いいわよ、あたしが更生させてあげる」

「はは、それはどうも……とりあえず、理事長室に行きましょうか。すぐそこですし」

露木さんに言われて、あたしは理事長室に歩いて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ