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桃香理事長日誌  作者: 葉月 優奈
二話:鎖の|友情《フレンドシップ》
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秋の夜は、とても早くやってきた。

翌日、あたしが野球部のグラウンドに夜に来ていた。

照明に明かりがともり、金属バットのカキーンという音が響いていた。

手提げバックを持ってきたあたしは、ベンチに座っていた男性に声をかけた。

中年男性は、ユニホーム姿に上にジャケットを羽織っていた。

あたしもまた、リクルートスーツのままベンチに座った。


「それで、麻生君には……」

「麻生に何の用だ?彼は俺達のエースですよ」

あたしの前にいるのが、野球部の栗林監督。

彼はずっと練習を見ながら、メガホンで時折大きな声を送っていた。声が枯れてさえいた。


「彼がいじめに関わっている可能性が強いの、協力してもらえますか?」

「何を言っているか、よく分かりませんが……」

とりつく島がない栗林監督は、ずっと練習を見ていた。

グラウンドでは、ノックをしていた。別の選手が守備位置についた選手にバットでボールを打っていた。

乾いた音がグラウンドに響く。


「どこにいるんですか?」

「ジュース買ってきました、監督」

そう言いながら、栗林監督に近づいてきたのが重そうなビニール袋を持っていた学ランの男が着ていた。


「ご苦労、クーラーボックスだ。鍵な」そう言いながら、ポケットから鍵を投げ渡した。

「はい、わかったっス」

重そうなビニールを担いだマネージャーの男子生徒は、そのまま去っていった。


「栗林監督、麻生君はどこにいるんですか?」

「そんなに麻生に会いたいのですか?」

「彼から真実を聞きたいんです。彼がいじめにかかわっているという噂を聞いたので」

「理事長代理、あなたはご存知ですか?野球部は、学校広告の中でも最も優れたツールです。

この野球部を揺さぶるということは、学校としての広告塔を失うということです。

あなたがやっていることは、学校にとってマイナス……」

「それが部活優位の考えで、いじめが起きている要因じゃないんですか?」

栗林監督に、あたしはしっかり問い詰めた。

強い口調と強い視線を浴びせて、栗林監督は頭を掻いて難しい表情を見せていた。


「そもそも、天才は優遇されるべきだ。天才の発想こそ未来を作っていく。

できているシステム、できているすべての物は、一部の天才が批判を受けながら作られたものだ。

それを知らない人間は、凡人という」

「何を言いたいの?あなたは?」

「そのままの意味です。部活優位というのはあってしかるべきだ。そう思わないか?」

「理解できませんし、いじめと関係ないでしょう栗林監督」やっぱりあたしは理解できなかった。

「麻生は何もしていない。いじめも何もない、ただそれだけだ」

栗林監督は、あたしの話を切り上げて練習を見ていた。

ますます怪しい、あたしは食い下がるわけにはいかない。


「それでも、教育は教育よ。あなたがもし麻生君を引き出さなければ、校内放送で呼び出すわ」

「理事長代理あなたは強情だ、噂どおりですね。

あなたは、優秀なラグビー部員を停学させたそうで。そのあとの試合もラグビー部はぼろ負け。

県予選も勝ち上がれなかったと、何を考えているんですか?」

「強情でもいい、あたしはいじめをなくしたいの」

栗林監督は、あたしを見るなりすぐに唇をかんで前を向いた。

そのまま、難しい顔で頭を掻きむしった。


「しょうがないな、おい!」

そう言うと、そばにいた学ランの生徒を呼びつけた。マネージャーらしき男子は、監督に呼ばれて小走りで来た。

「ブルペンの麻生を連れてこい」

「分かりました」その男子学生が、監督に言われるとそのままベンチの奥へと消えて行った。

それから一分もしないうちにやってきたのが、縦縞のユニホームを着た若い男子。


グローブを持ち、坊主姿で筋肉質、見た感じかなり背の高い男子生徒が現れた。

背番号1を背負い、あたしを見下すような目だ。

あたしは、ユニホームを着た男子をじっと見ていた。


「ねえ、あなたが麻生君?」

「はい、なんですか?俺は忙しいんです」

「あなたに、見てほしいものがあるんだけど。部活小屋にビデオあるかな?」

あたしは、そう言いながらあたしの持っていた赤いバッグを開いた。


「ああ、あるぞ」と栗林監督。

「そう。じゃあ麻生君、来てもらえるかな。あなたのいじめに関してのことだから」

バッグを持ったあたしの一言で、麻生君の眉がピクリと動いた気がした。

あたしが振り向いた先には、グラウンドから歩道を挟んだ部室の小屋が見えた。


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