18
あれから三日が過ぎた。
慣れたスーツ姿であたしは、中庭にある自販機の前にいた。
宇喜高の中はかなり施設が充実していた。自販機も百円で安いし。
「南条君、何がいい?」
そして、あたしの隣には南条君が学ラン姿でいた。
あたしと南条君は、ジュースの自販機前で眺めていた。
「じゃあ僕はこれで」そう言ってボタンを押して出てきたのがコーラ。
あたしは、そのコーラを南条君に手渡した。
「ありがとう、かわいい理事長さん」南条君に笑顔で言われると、自然とドキドキしていた。
「ううん、いいの。南条君には協力してほしいことがあるから」
あたしと南条君は自販機のそばにあるベンチに座った。
四階建ての校舎の真ん中にある中庭は、箱庭のように小さくきれいにまとまっていた。
大きな噴水、ジュースの自販機、ベンチは憩いの中庭。
昼休みだから、ベンチは軒並み埋まっていた。
男子校だから、カップルはなくて男ばかりだけど。
「それより、僕に何の用?」
「うん、実はね。南条君に聞きたいことがあるの」
「かわいい理事長さん、顔が赤いよ」
「ええっ、うそ!」
あたしは、もじもじしながら南条君のそばに座っていた。
彼は一年生、あたしは理事長代理。立場が全然違う。
だけど端から見ると、いい感じのカップルに見えるかも。
「ははは、やっぱりかわいいね。桃香さん」
「あたしの名前、いつの間に?」
「うん、学内ネットで。とてもいい名前だね」
「あ、ありがと……」あたしは、顔を赤くしてうつむいてしまった。
やばい、南条君にそんなこと言われたら頼みに来たお願いできない。胸が熱いよう。
「それより、桃香さん。僕に頼みって……」
「ああ、そう。ちゃんと話さないとね。あたし、実はいじめを撲滅しようと決めたの。
この学校にはいじめも多いし、何とかしないといけない。
父さんが戻ってくるまでに、あたしが決着をつけないといけないから」
「そうか、桃香さんはやっぱりすごい人だなぁ」
「えっ、そうかな?」
「うん。いい心がけだね。みんな、いじめをなぜか隠そうとする。
僕も協力するよ、桃香さんだって辛い思いをしていたんだから」
南条君の笑顔が、光のエフェクトが見えてあたしは胸を抑えていた。
(本当に、かわいくてかっこいい。南条君を、いつまでも笑顔を見ていたい……)
恋する目であたしは見ていたけれど、南条君が不思議そうな顔であたしを見てきた。
「あの……桃香さん」
「ああっ、そうね。南条君は最近いじめを見ていない?」
「うん、見ているよ。生徒会長がいじめられているのを」
「生徒会長?」
「このまえ、この学校の学食でいじめられていたんだ。葛西生徒会長」
「どんないじめ?」
「定食に、ゴミを入れられていたんだ」
そのいじめを聞いて、あたしは怪訝な顔を見せた。
あたしにはそれが、とてもいたたまれないと分かっていたから。
「どうしたの?」
「うん、酷いね。それ。何人ぐらいでいじめられていたの?」
「二人組でどっちも二年生だったよ。ほら、上履きの色が青かったから」
南条君は自分の履いている上履きを見せてくれた。
白い上履きに線が入っていて赤が一年生、青は二年生ということらしい。ちなみに三年生は緑色。
「そうね、でも生徒会長がいじめられるって不思議よね」
「うん、だけどちょっとおかしいんだ……彼は何かをかばおうとしている気がするんだ」
「一度確認してみましょう。案内お願いできる?」
「うん、桃香さん。任せて」
そう言いながら、南条君はあたしに笑顔を見せてくれた。
やっぱりその笑顔がかわいくて、胸が熱かったあたしがいた。




