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桃香理事長日誌  作者: 葉月 優奈
二話:鎖の|友情《フレンドシップ》
18/80

18

あれから三日が過ぎた。

慣れたスーツ姿であたしは、中庭にある自販機の前にいた。

宇喜高の中はかなり施設が充実していた。自販機も百円で安いし。


「南条君、何がいい?」

そして、あたしの隣には南条君が学ラン姿でいた。

あたしと南条君は、ジュースの自販機前で眺めていた。


「じゃあ僕はこれで」そう言ってボタンを押して出てきたのがコーラ。

あたしは、そのコーラを南条君に手渡した。


「ありがとう、かわいい理事長さん」南条君に笑顔で言われると、自然とドキドキしていた。

「ううん、いいの。南条君には協力してほしいことがあるから」

あたしと南条君は自販機のそばにあるベンチに座った。


四階建ての校舎の真ん中にある中庭は、箱庭のように小さくきれいにまとまっていた。

大きな噴水、ジュースの自販機、ベンチは憩いの中庭。

昼休みだから、ベンチは軒並み埋まっていた。

男子校だから、カップルはなくて男ばかりだけど。


「それより、僕に何の用?」

「うん、実はね。南条君に聞きたいことがあるの」

「かわいい理事長さん、顔が赤いよ」

「ええっ、うそ!」

あたしは、もじもじしながら南条君のそばに座っていた。

彼は一年生、あたしは理事長代理。立場が全然違う。

だけど端から見ると、いい感じのカップルに見えるかも。


「ははは、やっぱりかわいいね。桃香さん」

「あたしの名前、いつの間に?」

「うん、学内ネットで。とてもいい名前だね」

「あ、ありがと……」あたしは、顔を赤くしてうつむいてしまった。

やばい、南条君にそんなこと言われたら頼みに来たお願いできない。胸が熱いよう。


「それより、桃香さん。僕に頼みって……」

「ああ、そう。ちゃんと話さないとね。あたし、実はいじめを撲滅しようと決めたの。

この学校にはいじめも多いし、何とかしないといけない。

父さんが戻ってくるまでに、あたしが決着をつけないといけないから」

「そうか、桃香さんはやっぱりすごい人だなぁ」

「えっ、そうかな?」

「うん。いい心がけだね。みんな、いじめをなぜか隠そうとする。

僕も協力するよ、桃香さんだって辛い思いをしていたんだから」


南条君の笑顔が、光のエフェクトが見えてあたしは胸を抑えていた。

(本当に、かわいくてかっこいい。南条君を、いつまでも笑顔を見ていたい……)

恋する目であたしは見ていたけれど、南条君が不思議そうな顔であたしを見てきた。


「あの……桃香さん」

「ああっ、そうね。南条君は最近いじめを見ていない?」

「うん、見ているよ。生徒会長がいじめられているのを」

「生徒会長?」

「このまえ、この学校の学食でいじめられていたんだ。葛西生徒会長」

「どんないじめ?」

「定食に、ゴミを入れられていたんだ」

そのいじめを聞いて、あたしは怪訝な顔を見せた。

あたしにはそれが、とてもいたたまれないと分かっていたから。


「どうしたの?」

「うん、酷いね。それ。何人ぐらいでいじめられていたの?」

「二人組でどっちも二年生だったよ。ほら、上履きの色が青かったから」

南条君は自分の履いている上履きを見せてくれた。

白い上履きに線が入っていて赤が一年生、青は二年生ということらしい。ちなみに三年生は緑色。


「そうね、でも生徒会長がいじめられるって不思議よね」

「うん、だけどちょっとおかしいんだ……彼は何かをかばおうとしている気がするんだ」

「一度確認してみましょう。案内お願いできる?」

「うん、桃香さん。任せて」

そう言いながら、南条君はあたしに笑顔を見せてくれた。

やっぱりその笑顔がかわいくて、胸が熱かったあたしがいた。


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