第1話 出会いはある日突然に
主人公は常にだるそうにしています。
でもやるときはかっこよく決めます。
森の中を一人の男が歩いていた。
男の格好は真っ黒なローブで全身を覆っていて
その足取りは頼りなくフラフラと右へ左へと行き先も定まらない。
「ねみぃ~。もう半日くらい森をさまよってんぞ・・・。全然森を抜ける気配もないし・・・少しくらい休むべきですよね?・・・よし!2日間くらい休息をとるべきだ!働きすぎはよくないって言うしそうしよう!・・・まあ働いてないけど。」
男は誰もいない森の中で自分で自分に言い訳をして近くにあった木の上へよじ登り一番太い枝に背を預け「お休み~。2日はおこさないでね~。」と言い。わずか数秒で寝息をたて始めた。
男が寝始めてからしばらくして・・・
「はあ、はあ。」
森の中を一人の少女が走っていた。
15歳くらいの少女だろうか。肩に届くか届かないかと言うところで切り揃えられた金色の髪。パッチリと開いた大きな瞳の色は青。世間一般でいう美少女だ。
だが今の少女の顔には余裕の色はなく何かから逃げるように森の奥へと走っている。
「あ~、もうしつこいのよ!」
少女の後ろには剣を持った男達が少女を目指して走ってきている。
「いい加減観念しなクソガキ!逃げ切れるとでも思ってんのか!?」
男達の中でも一際大柄な男が少女へ向かって怒鳴りつけた。
「うっさい!あんたらに捕まったら殺されちゃうでしょうが!あたしは逃げきってみせるわっフギャ!!!」
男の怒鳴り声に注意を反らされ少女は前方にある大きな木に気づかずぶつかってしまった。
「うぅ~、鼻打った~。いったぁ~い。」
「やぁ~っと追いついたぜクソガキ・・・」
男の声に気づき周りを見渡すとすでに男達に囲まれていた。
「あちゃ~、あたしったらモテモテなようね~。」
少女は絶体絶命なこの状況で余裕のありそうなことを言う。
「この状況でよくそんな軽口を叩けるな。てめぇは顔はいいからいい金になりそうだが雇い主からの依頼だ・・・てめぇら!!やっちまいな!!!」
一番大柄な男が男達に命令すると周りの男達は一斉に少女へ襲い掛かった。
「あたしはこんな所で死ぬわけにはいかないのよ!」
少女は腰に下げていた短剣を抜き軽快なステップで一番近くにいた男の懐に飛び込み男の喉に短剣を突き立てた。
「があっ!」
喉を短剣で突かれた男は短いうめき声を上げゆっくりと地面へ倒れていく。
「っ!?なんだこいつ!つえぇぞ!!」
仲間が一瞬でやられたことに動揺して男達は少女から距離をとった。
しばらく少女と男達のにらみ合いが続く・・・。
「てめぇら!!なにびびってやがる!!相手はたったの一人だぞ!?もういい・・・どけっ!!俺がやる。」
男達に命令していた男が仲間の男を蹴り飛ばし少女の前へと歩いてくる。
「可愛い顔してやるじゃねぇか。喜びな?特別に俺が相手をしてやる・・・。」
男は背中に背負っていた身の丈ほどある剣を抜き少女へ構える。
「あんたが頭ね?あんたを倒せば周りにいるやつらも引いてくれるかしら?」
少女は口の端をつり上げ不敵な笑みをこぼした。
「はんっ!・・・俺に勝つだと?ガキが夢見てんじゃねえよ!!」
男は剣を振り上げ少女に振り下ろした。
「甘いっ!」
少女は男の剣を横に跳ぶことでかわしそのまま男の懐へ飛び込み短剣で男の喉を狙う。
「だぁれが甘いって?」
しかし短剣を持った手を男に掴まれ短剣が男に届くことはなかった。
「っ!?はなしなさいよ!このっ!」
少女は男の手を振りほどこうともがくが男の手はびくともしない。
「残念だったなクソガキ・・・死ね!!」
「ヒッ!?」
少女は悲鳴を上げ掴まれていない方の手で顔を庇う。
少女に剣が当たるその瞬間・・・
「ゴッチ~ン!!」
なにか硬い物どうしがぶつかった音がした。
「へっ?」
「ドサッ」
少女は自分がなぜ死んでないか分からず音がした方へと目を向ける。
「すぅ~、すぅ~・・・うへへ。」
そこには真っ黒なローブを身に纏っているため確認できないがおそらく音が地面で寝ていた。
横には先程まで少女と命のやり取りをしていた男が頭を押さえうめきながらじめんで悶えている。
「・・・なにこの状況?」
絶体絶命のピンチに現れたのは黒いローブに身を包んだ男(爆睡中)
「どうしろっていうのよ・・・」
少女の呟きは森の喧騒へと消えていった。
ファンタジーって難い・・・・
まだ魔術の魔の字も出してない!?




