昔話を一度に読める話(前編)
昔むか〜しある所に……。
お爺さんとお婆さんがおりました。
お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
洗濯をしているお婆さん。
そこへ、どんぶらこどんぶらこ…と、大きな……いや……小さな小さな桃が流れてきました。
桃の大きさは親指ほど。ちょうど一寸くらい。
お婆さんが桃を持って帰宅すると、お爺さんはすでに帰っていました。
「おじいさん。川から桃が流れてきてねぇ」
「どれどれ、見せてごらん……ほう。小さいねぇ」
「どうしようかねぇ」
「すてちゃえよ」
「もったいないよ」
「じゃぁ……」
桃は食後、食べることに決まりました。
そして食後、お婆さんが包丁を持って
「切るよぉ!」
お婆さんは、桃をすっぱりと半分に切りました。すると…
桃から出て来たのは……小さな小さな男の子!
「あらまぁ!」
お婆さんは腰を抜かしました。
「マジかよぉ!」
お爺さんは目を丸くしました。
「どうしましょう?」
お婆さんは困惑の表情を浮かべました。
「どうしようかね…」
お爺さんは顎髭を触りました。
「育てられないよ…」
お婆さんは言いました。
「どうしてだい?」
お爺さんは聞きました。
「だって……出ないだろう…」
お婆さんは赤面しました。
「……お乳かい?」
お爺さんは苦笑しました。
「まぁねぇ……」
お婆さんは答えました。
「赤ちゃんポストなんてのも、あるぜ」
お爺さんは鼻をこすりました。
「馬鹿ねぇ。恥ずかしくて出来ますか!」
お婆さんは眉をひそめました。
「じゃぁ、どうすっか?」
お爺さんは、ふうっと息を吐きました。
「……そうだねぇ……」
何年か経ち、小さな桃から生まれた小さな男の子は、Sサイズのまま成長しました。
その男の子は「太郎」と名付けられていました。
そんな太郎にも、思春期が訪れました。
「ばあちゃん、じいちゃん。おら、隣の国へ行く」
「どうしてだい?」
「鬼退治だ。綺麗な女だけが、鬼に襲われるだとよ」
「それは鬼じゃねぇ。強姦魔だ」
「とにかく、何でもいい。隣の国へ行く」
「理由は何なんだい?」
「女にもてたいんだよ」
「それだけが理由かい?」
「そうだ」
「…………」
お爺さんとお婆さんは、太郎を止めませんでした。
逆ギレされるのが怖かったからです。
小さな太郎は、お爺さんからもらったお椀と、お婆さんからもらったお箸と、薬物中毒者が捨てた注射針を持って、隣国へ向かいました。
(注)後編へ続く可能性があります。