表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ずっと君が好きだった

作者: れん

彼は旅をする。愛する者の為に。いつも笑顔で旅をする。



晴天の空。日差しが容赦なく旅人を照りつける。水も無ければ、食料も無い砂漠を独りで旅をする。

「ふう、暑い。前の町でもう少し水と食べ物を貰っとくんだった。」

不毛の大地で弱音を吐きながらも、旅人は一歩一歩進んでいる。

彼が旅を始めたのは約三ヶ月前。大切だと心から思う人が死んだのがきっかけだった。恋人など、大それた関係ではなかったが、旅人はずっと彼女を思ってきた。彼女にもう一度生きて欲しくて旅に出た。旅人は弱音を吐いたりよくしているが、絶対に笑顔を絶やさない。笑っていればいいことがあると、小さい頃に言われたことを、未だ信じている。

もうすぐ、砂漠の町に辿り着く。


「やっとここまで来た。もう少しかな。」

旅人が町に着いてから始めに向かったのは、町の酒屋だった。町に着くと毎回酒屋に行き、酒を飲みながら食事をするのだった。

「ねえ、あんた旅人?」

勢いよく食事をカウンターでほおばる旅人に、一人の女性が話しかけてきた。旅人は口を一杯にしているのでコクコクと頷いた。

「あたしリア。あんたは?」

「ふーふ。」

「は?夫婦?」

やっと口の中のものを胃に流し込んで話した。

「ルース!で、何か用?」

旅人はまたがつがつと食べ始めた。リアという女性も少し引いている。

「いや、なんで旅してんのかと思ってさ。旅人ってここじゃ珍しいから。」

「好きな人を生き返らせてあげたいんだ。まだ、人生の半分も生きてなかったからね。もう一度生きさせてあげようと思ってさ。」

ニコニコ笑いながら話す旅人。その顔には食べかすが付いている。無邪気な笑顔だ。

「それってなんかおかしくない?さもその子の為みたいに言ってるけど、その子は『もう人生に満足した。』って思ってるかもじゃない?」

旅人の顔から笑顔が消えた。キョトンとしている。いきなり初対面の人に旅の意義を否定されたら誰でもキョトンとするだろう。もちろんリアが言うことは間違っては無いはずだ。

「リアに俺の旅を否定する権利ないと思うけど。」

少し怒っているらしい。目つきがキツイ。

「別に否定なんかしてないわ!だっておかしいじゃない!その子の考えとか全部知ってるわけじゃないのに『彼女の為』とか言っちゃってさ!結局は自分のためなんじゃないの?自己満足よ!」

「初対面のあんたにそこまで言われる筋合い無いだろ?俺のことなんだからほっとけよ!」

そう言って旅人は金をバンと置いて出て行ってしまった。

そこまで起こるのはもしかすると図星なのかもしれない。『彼女の為』じゃなくて『自分の為』。彼の頭はパンクしそうだ。どれだけ考えてもわからない。彼女が「生き返りたくない」と言ったら旅の意味が無くなる。


「どうしたらいいんだろ?」

その夜、旅人は小さな高台にのぼり月を見ていた。

「そっか、そうなんだ。難しく考えなくていいんだ。」

どうやら答えが出たらしい。



旅人が朝一番向かったのは酒屋だった。酒屋のマスターにリアの家を聞いた。

リアの家の玄関の脇に座った。

ガチャ

ドアが開く音がして寝起きっぽいリアが出てきた。

「ゴメン。」

「へ?あ、旅人。こんな朝っぱらから何でいるのさ?」

「謝りたくて。昨日の答え出たんだ。俺は旅を続けるよ。でも、彼女の為じゃなくて、自分の為。『俺』が彼女に逢いたいんだ。」

やはりニコニコとする旅人。リアももう怒ってはいないようだ。

「ふ〜ん。そんなこと言うんだったらさっさと行けばいいのに。…まあ、神の神殿目指して頑張りなよ。」

神の神殿とはこの町を出て砂漠を抜けたところにある。全ての魂が集まるところで、死者を生き返らせることもできるらしい。

「ありがと。」


旅人はまた砂漠を歩き出した。残りはもう少しなので顔が緩んでいる。

「アーシェ。もうちょっとで逢えるんだな。俺、伝えたいことがあるんだ。」

アーシェというのは多分彼の旅の目的、生き返らせたい人なのだろう。


一週間後にようやく『神の神殿』に辿り着いた。

「そなたは何を望む?」

これは神の声である。その声に旅人は少し驚いたが、ニコッと笑った。

「アーシェ・レミアムに逢いたいんです。」

「暫し待たれよ。」

そう神の声が告げた。旅人はまたニコッと笑う。

少ししてから目の前にアーシェらしき人物が現れた。もちろん幽霊だが。

「アーシェ、久しぶり。」

「うん、久しぶり…えっと折角ここまで来てくれて悪いんだけど、あたしは生き返らなくていいの。人生は短かったけど、楽しかったから…」

すまなそうなアーシェ。それを見て旅人は笑った。リアと同じことを言ったからだ。

「アーシェ、君がそういうなら無理強いはしないよ。でも、俺は君に伝えたいことがあるんだ。言ってなかったなと思って。」

「…何?」

旅人は一つ溜め息をついた。

「ずっと君が好きだった。」

少し照れる旅人。アーシェは驚いて一瞬声を失った。たったそれだけのために?という顔をしている。

「あたし…ルースのこと…」



この先の答えは旅人だけのもの。『好き』かもしれない。好きでも、『恋愛じゃない』かもしれない。それを知るのは旅人だけ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 余韻が残る作品ですね。最後が気になります。 最初の方に‘笑顔でいればいいことがある’と書いてあったし、主人公の方も笑顔をきちんと実行していたので、それをどこかで使えたら笑顔にこだわった意味が…
[一言] 死んだ人に会う、生き返らせるはファンタジー世界の特権ですね。 事故か病気で死んだのでしょう(少なくとも自殺じゃないと思いました)が、自分の人生に満足して死ねたのはよかったことですね。 ただ、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ