黒髪の女
この物語はフィクションです
暑い、暑い真夜中の事だ。
俺は友達と一緒に俺の家で星を見ていた。
「あっちぃー。」
「うるさいなぁ、暑いのは分かったから。」
そう、この日の夜は暑かった、だから部屋の窓を全開にして涼んだ。
夜の風は気持ち良い、だが…俺はこの晩、最悪な夜になった。
「酒のまねぇか?」
「ちょ、ここ俺ん家だぞ」
「分かってるって、でもこのクソ暑い日には冷えたビールだろ?」
「言ってることは…まぁ分かるけど。」
「な?じゃあ取ってこい!」
シッシッと手を振りながら双眼鏡で空を見る。
いま思えば何故双眼鏡で見てるのか謎。
俺は一階に降り、ビールを取りにいく。
缶ビール二本握り、二階にいるアホの所にいく。
人使い荒いんじゃボケェ。
そしてそのアホは双眼鏡で…て!?
「お前はなに住宅街覗いとんじゃ!?」
「いや、覗いてねぇよ、道路の自販機をずっと見てた。」
星に飽きてさー、とニコニコ笑うアホに缶を投げ飛ばし、自分の分を開ける
冷えたビールが喉を潤す。
うめぇー「ん?」ん?
「なに、どうした?」
「あの自販機の客…変じゃね?」
と指を向けるのは…自販機の前に居る白のワンピースで黒髪の長い女性
普通だろ、普通。
「どこが変?」
「いや変だろ?貞子っぽく顔かくしてこっち見てるんだよ!?」
なに…?こっちを見てる?
ばかな、ここからあっちはかなり距離はある、しかもこの夜に見つけるなんて無理だ!
もう一度窓を覗き、様子を見る。
彼女は…人差し指をこっちに向けた。
完全にバレてるな。
ソ ッ チ ニ イ ク ネ
!!?!!?
「おわぁああああああ!?」
「なになになに!?」
いま明らかに耳元で囁かれた。
体が硬直する。友達も聞いてたみたいだ。
そこからもう一度あの女を見るが…一歩ずつ動いていた、こっちに向かってる。
不味い、鍵かけてねぇ!?
そこから俺の動きは迅速に、一階に駆け降り、鍵をかけチェーンも付け、玄関を封じる。
その一瞬だった。
ガシャン!!と扉をガチャガチャと動き始めた。
なん!速すぎる、クソ!
玄関に置いてあるバットを握りしめ、一階の部屋全ての電気をつける。
ドドドドドドドドドドドドド!!と音が響く。
家の周りをグルグル回ってるのか、知らないが…
二階に駆けあがり、部屋の窓を閉めて友達の手を握り一階に行く。
バン!と窓の叩く音、振り向けば窓に赤い手形がついていた。
「こえぇよ、何なんだよ!?」
「知るかッ!!こっちが聞きてぇよバカッ!!」
そこからガタガタと玄関、窓が激しく動き始める。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!?
そのままずっと、バットを握りしめ、朝を待った。
今までで一番長い夜だったと思えた。
朝になって太陽が登り、光がカーテンの隙間から入る。
あれから音が止み、俺達は助かった…のかな?
「怖かった…俺もう帰るわ、疲れた。」
「あぁ…俺も外に行くわ、この家に居たくねぇ。」
俺達は、外にでて一気に人の多い道まで走った。
でも、警戒しながらだった。
「…また泊まりに来るか?」
「もうイヤだ、今度は家に来いよ。」
あの女は何だったのか、俺達は分からなかった。
ただ…
あいつとの泊まりは、二度と出来なかった
「続いてのニュースです。今日午前十時、○○市にて、バスが横転する事故が起きました。
負傷者多数、死亡者は男性一人、原因は、運転手によると、
道路に『黒髪の女性』が飛び出してき、
とっさにハンドルを回したとのこと。またーーーー」