ヘッドホンをしていると、彼が興味をもってくる
「何、聴いているんだ?」
休み時間、彼が私の席にやって来て、ヘッドホンを指してくる。
大音量ではなく、周りの音が聞こえるくらいにしてあったので、彼の問いにすぐ答える。
「え? 興味あるの?」
私はヘッドホンの片方を外すと、それを彼に差し出す。
「聴いてみて」
「ああ」
彼がヘッドホンを耳に当て、手で押さえる。
私はどう思うだろうかと、わくわくし、曲を聴いていく。
音が綺麗で、クリアな曲調。
うるさいというよりは、青く冷めたイメージが近く、癒やされるのだった。
私はふんふんとうなずきながら聞いていくと、彼がしばらくして口を開いてくる。
「この歌っている人達、誰?」
「バンドだよ。4人組なの」
私はえっへんと胸を張る。好きな人達なので、彼が興味をもってくれて嬉しかった。
同じものを共有したいと思うのは、恋人なら当然のことだと思っていると、彼が声をかけてくる。
「そうなのか? で、名前は?」
「名前はね…」
私はスマホを取り出すと、彼の前に差し出す。
「どういう意味なんだ? バンド名、英語だから」
「あのね、こういう意味」
私が1文を指し、彼が目で追っていく。
「ああ、なるほど」
彼は納得したらしく、うなずいてくる。
ますます私は嬉しくなり、彼の言葉を待つ。
「他にも聴きたい。別の曲を聴かせてくれ」
「いいよ。先生が来るまで、あと5分はあるから」
私は気軽に言うと、スマホをいじる。
「この曲、いいんだよ!、 すっと入ってくるというか。歌詞がいいんでしょう?」
「ああ、すごくいい。俺の気持ちに寄り添ってくれるというか」
「そう!! ファンを大事にするバンドなの」
私は満面の笑みを浮かべると、親指を立てる。
「後でスマホで検索してみるといいよ。私のオススメはこれと、これと、これ」
曲一覧を見せると、彼は驚いたようだった。
バンドのことを知らなかったらしく、悔しそうに唇を噛む。
ライオンが獲物を前にして、逃げられたかのような顔に、私は様子を窺ったが、喋っても大丈夫そうだった。
「ファンクラブもあるんだけど、入り方が特殊なの」
「ファンクラブか…。入っているのか、お前」
「うん。ライブには行きたいと思っているんだ」
「行ったことがないのか?」
「そう。残念何だけと…。その、もし行くってなったら、一緒に行ってくれる?」
私は上目遣いで窺い、両手を合わせる。
デートになるのだが、果たして彼の答えはと思い、唾液を飲み込む。
しかし呆気なく、彼はすぐにうなずいてくる。
「一緒に行ってやる。盛り上がろうぜ!!」
「うん!! 楽しみだな」
ヘッドホンから流れる曲は、はしゃぎ過ぎず、ガンガン鳴らすものではないのだが、一度聴くと忘れられない曲だった。
彼も気に入ったらしく、私に言ってくる。
「俺の悩みが小さいように感じられる。人の痛みを知っている人の曲だ」
「そうなの!! よく分かるね。私、バンドのメンバーの顔もいいんだけど、1番は共感できることかな」
スマホをいじると、私はバンドのメンバーの顔を見せる。
彼は何と言うだらうか。
興味があるだろうかと、固唾を飲んでいると、彼が聞いてくる。
「お前、誰が1番、好きなんだ?」
「えっとね…この人!!」
バンドのメンバーを指すと、彼がじっと見てくる。
何を考えているのだろうと知りたかったが、急かすのをやめ、彼の意見を待つ。
しかし、「おーい、お前ら、席につけ」
先生が来てしまったので、ヘッドホンを返してくる。
「サンキュ。また後で話してもいいか?」
「うん。詳しく教えてあげるよ」
私は大喜びで言うと、スマホとヘッドホンを隠し、彼と別れたのだった。




