ミリーナ3 これまでのこと
あたしは国境近くの小さな村で生まれた。
うちは、おばあちゃんのそのまたおばあちゃんのころから薬を調合して処方する薬師の家で、自然と薬に詳しくなった。
問題は生まれながらにあたしの目の色が真っ赤だったことだと思う。
赤い瞳はとても珍しくて、不気味がられた。
ただそれだけで、特殊な能力なんて、なにひとつないのに。
そしてある日、突然やってきた領主の使いに魔女呼ばわりされた挙句、あたしはあっけなく捕らえられてしまった。
その時既に、家族は治療のために出向いた村で疫病にかかって死んでしまっていたので、あたしに身寄りはいなかった。
村の人たちとは薬を渡す、受け取るというそれだけの関係で、親しい交流は一切なかった。
誰もが、連れ去られるあたしをただ遠巻きに眺めるだけだった。
連行されたのは領主の城。
そこにしばらく閉じ込められ、できることとできないことを徹底的に調べられた。
そしてあたしの身柄は森の奥深い場所にあるこの屋敷へと運ばれた。
門には領主の命令で派遣された見張りの兵がいつも立っているので、脱走は不可能。
あたしはここで領主に言われるままに薬を調合するよう命じられた。
領主はその薬を高価で売り裁いているようだった。
あたしは毎日、淡々と薬を調合し続けた。
そうしていれば、とりあえず命の危険はなかった。
庭では薬草を育て、時々怪我をして迷い込んでくる野兎や狐、狼といった動物たちの手当てをしてやったりしながら、それなりに平和に暮らしていた。
――ついこのあいだまでは。
ここのところ、魔女狩りが広まっているのは知っていた。
それが、最近顕著になってきて、領主はいよいよあたしの処遇に困ったらしい。
そりゃあそうだろう。
魔女が作った薬を売って儲けているなんてばれたら、領主の立場も危うい。
そこで領主はあたしを処分しようとした。
そしてあたしは、殺されるくらいなら自分で死ぬと言って、自ら棺に入って薬をあおった。
あたしを魔女だと信じていた見張りの兵たちは、そのままにしておくのが不安で棺の外から鎖をかけたのだろう。
「もし、誰も来なかったらどうするつもりだったんです?」
「どうもしないわ。そのまま死んでただけよ。さすがに何日も放っておいたら死ぬもの。飲まず食わずなんだから、当然でしょう」
「じゃあ、僕が来てよかったですね」
安堵したように、にっこりとラオルが微笑む。
――本当にそうかしら。
あたしは返事ができなかった。




