ミリーナ13 これからのこと
どれほどそうしていただろう。
そっと唇を離してラオルの様子を窺うと、ラオルは困ったような、戸惑っているような顔をしていた。
「迷惑……だった?」
こわごわ訊くと、ラオルは微笑んで首を横に振った。
「そんなことありません。あるはず、ないです」
「じゃあ……」
「ひとつ、訂正させてください。僕がミリーナさんと一緒にいて不幸になることなんてありえません」
「ラオル……」
「僕も、ミリーナさんのことが好きです。一緒にいられること、それが僕の幸せなんです」
「ありがとう、ラオル」
せっかく止まっていた涙が、再び零れ出す。
ラオルがあたしの頭を抱き寄せ、舌で涙を掬い取ってくれる。
「お礼を言うのは、僕のほうです」
「ううん、あたしよ。さあ、ラオル、ちょっと眠るといいわ。あたしはそのあいだに必要な薬を調合して、支度をするから」
「わかりました。逃亡の足手まといにならないように、少しでも体力を取り戻しておきます。……できることなら、人間の姿でいられるうちに、もう少しミリーナさんと話をしたかったんですけれど」
少しだけ残念そうに言うラオルがなんだか可愛く思えて、あたしはくすりと笑ってしまう。
「あたしを誰だと思ってるの? 黒冷月の魔女があなたを人間に変えてしまう呪いをかけられたのなら、あたしはあなたが人の姿にも狼の姿にもなれる薬を作ってみせるわ。あなたが望むのならね」
「ありがとうございます、ミリーナさん」
穏やかな表情でラオルが瞼を閉じるのを見届けてから、あたしは大急ぎで支度に取り掛かる。
痛み止め、化膿止め、その他必要になりそうだと思う薬の用意をする。
作り置きがあればそれをつめればいいけど、ないものは作らなければならない。
材料は領主から与えられていたものが残っているのでなんとかなるけれど、どうしても時間がかかってしまう。
途中で一度、ラオルに薬を飲ませに戻った。
少しだけあたしも仮眠をとってから、あたたかいラオルの隣を抜け出す。
時間がない。
あたしは作業を再開した。




