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ミリーナ1 魔女じゃない魔女

「棺?」


 あたしは体を捻って背後を確認したりして、自分が今置かれている状況の把握に努める。


 そして確かに細長い箱の中にいることを確認して、言葉を失う。

 箱の横には、棺の蓋と思われる板が立てかけてあった。


 屋内の薄暗い一室。床の上に無造作に放置された棺。

 そしてその棺の中で眠る女。


 ――あたしって、何者?


「しかも、棺は鎖でぐるぐる巻きにされていました」


 あたしを眠りから覚ました灰茶色の髪の少年が、困った顔をして、手に持った鎖をじゃらりと軽く持ち上げながら言う。


 棺。閉じ込められる。眠る。目覚めて起き上がる。


 ぐるぐる……。


 なにかを思い出しそうな気もするんだけど……。


「そして、最初、あなたは呼吸をしていなかったんです」


「それ死んでるじゃないの!」


「でも、あなたが握っていた小瓶の中の液体を口に含ませると、心臓が動き始めたんです」


 小瓶、液体……。

 呼吸が止まる。


 それだ!


「思い出した!」

「ほ、本当ですか?」


「うん」

「なにをしていたのかも?」


「そう。あたし、一度死んだんだった」


「ああなんだ。一度死んだんですね……。ん? え、死? あれ、今、なんて言いましたか?」


「一度、死んだの」


「ちょ、ちょっと待ってください。でも今、こうして……」

「生き返ったみたいね」


「生き返っ……た?」


 少年が口をぽかんと開けて、あたしを凝視する。


 理解不能、と顔に書いてある。

 

 だよね、とあたしは嘆息する。


 普通、こんな話信じられない。

 魔法でも使ったんじゃないかって疑われることもわかってる。


 でもあたしは魔女じゃない。


 誰もが魔女だって言ったって、あたしはあたしが魔女じゃないって知ってる。


 そう、あたしは全てを思い出した。


 誰もがあたしを魔女だと思ってた。


 不吉な感じのする真っ赤な瞳も、誤解を招く一因だったのかもしれない。

 でもあたしにできることは母さんから教えてもらった薬の調合だけ。


 ちょっと薬に詳しいだけがとりえの魔女。


 ――それって本当に魔女? 


 だいたい、魔女ってひと口に言ったって、いったいどこからが魔女で、どこからが魔女じゃないのよ! と誰かを問い詰めたいくらいだ。


 ともかく、あたしは普通の人間だし、魔法なんて使えない。

 それでも、人はあたしを魔女と呼ぶ。


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