ミリーナ12 ミリーナの告白
「ふざけないでよ! あたしが怪我人を残して逃げると思ってるんなら、あなたはあたしのことがちっともわかってないわ。なんでもかんでも自分で勝手に決めて、勝手に行動して、あたしのことなんてちっとも考えてないのよ」
「僕は……でも、僕は狼だし、もう、ミリーナさんと一緒にはいられない……」
ラオルが目を逸らしながら、呟くように言う。
「誰がそんなこと決めたの? ラオルでしょ、ラオルが勝手に決めただけでしょ?」
「それは……」
「でもね、あたしも勝手なの。勝手にラオルに期待してたくせに、今度は急に怖くなったの」
「それは僕が狼だからで……」
「違う。あたしが恐れるのは、あたしのせいであなたが不幸になってしまうこと。だからもう一緒にいないほうがいいと思ったの。それなのに、なんであなたはあたしのためにこんなにしてくれるのよ……」
話しているうちに感情が昂ぶって、涙が溢れ出す。
けれどそんなことには構わず、あたしは続ける。
「あたし……やっぱりあなたを置いてはいけないわ。あなたが怪我をしているからってだけじゃない。あたしは……あたしはラオル、あなたを、あなたのことを……」
ラオルの視線があたしへと戻ってくる。
あたしは静かにその場に両膝をついた。
ラオルの顔が、すぐそこにある。
「ミリーナさ……」
「あたし、やりたいことができたのよ。あなたが不幸になるってわかっていても、あなたとずっと一緒にいたいの。あたしを助けてくれた、たったひとりのあなたと。あたし、ラオルのことが好き……」
「でも僕は……」
「姿なんて、関係ないわ」
ラオルの目をまっすぐに見ながら、あたしは言った。
ラオルの瞳が、ゆらりと揺らぐのがわかった。
「ラオル……」
そっと、揺れる瞳へ近づく。
瞳にあたしの顔が映っているのがわかるくらいに近く。
そしてさっきあたしの手の甲に口づけてくれたラオルの唇に、あたしのそれを重ね、瞼を閉じた。
ラオルは動かない。
黙ってあたしを受け止める。
耳に届くのは、屋敷の外の激しい雨の音だけだった。




