ミリーナ9 明かされる真実
領主の手の者がいつか来るのは覚悟していた。
……でも、よりによってこんな時じゃなくても!
ラオルが怪我をしていているっていうのに!
そこまで考えて、はっと気づく。
ラオルはどこで怪我をしたの?
なんであたしを捕らえるために人がやってくることを知っているの?
「ラオル……?」
「ごめんなさい。僕が守るって言ったのに……」
ラオルが目を伏せる。
あたしはあの時、ラオルにあんなにひどい態度をとってしまったのに……。
「あなたのその怪我は……」
「ちょっとこの森を離れていたんです。
戻ってきた僕に、領主の手の者が小隊を率いてこちらに向かっていると仲間が教えてくれました。
偵察の数人は足止めしてきたので、少しは時間が稼げると思います。
でも、いつまで経っても偵察隊が戻らなかったら、今度こそ大勢で押しかけてくるはずです。
この怪我じゃ、僕はもう満足に戦えません。一緒に逃げようにも、足手まといになるだけです。
だから、ミリーナさんだけでも……」
「そんなのできるわけない! いったい、どういうことなの? あなたの仲間ってどこにいるの? あなたが怪我をしたこと、仲間は知っているの? あなたが仕えているお屋敷にも、知らせないと……」
「仲間は、すぐ傍にいます。僕が留守にするあいだ、僕の代わりにミリーナさんのことを見守ってくれていたんです。それに、僕が仕えているお屋敷っていうのはここのことなんです。自称ですけれど」
弱々しく、ラオルが笑った。
それが傷に響いたのか、うっ、と短くうめく。
「そんな……いったいいつから……」
あたしは驚きのあまり、言葉を失う。
ラオルがあたしのためにそんなことをしてくれていたなんて、ちっとも知らなかった。
「本当は内緒にしていようと思っていたんですけれど……。ミリーナさんが眠る棺を見つけたのは、偶然じゃありません。この家から去ってゆく二人組を見た時に、なにかがおかしいと思ったんです。
彼らに詰め寄り、全てを白状させ、ミリーナさんを助け出しました。
それからずっと、ここに近寄る奴らを追い払っていたんです。
これまでは数人だったから、なんとかできました。でも業を煮やした領主が、今回は小隊を送り込んできました。これ以上は……」
これまでの怪我も、全てあたしのためだった?
もしラオルがいなければ、あたしはとっくに殺されていたの?
「ごめんなさい、ラオル……」
あたし、なにも知らずに、あんなことを……。
「いえ。僕が好きでやっていたことなんですから、謝らないでください」
あたしはラオルの傍らに腰を下ろして、あたしの左手首をつかんだままのラオルの手を、右手でそっと包んだ。
「馬鹿……」
どうしてあたしなんかのために、そんなに……。
そんなにしてもらうほどの価値、あたしにはないのに。
ぽろぽろと涙が溢れ出し、握ったままのラオルの手の上に落ちた。




