ラオル6 黒冷月の魔女
ミリーナさんの笑い声が僕を追ってくる。
僕は足を止め、目を閉じた。
彼女に拒絶されるのは辛い。
けれど、だからといって諦めるつもりはなかった。
もとより、好かれることが目的だったわけじゃない。
彼女を救いたい。ただそれだけだった。
毎日言葉を交わせるほど親しくなれたことのほうが想定外だったのだから。
森の奥の屋敷で、ひとり静かに過ごしている少女。
ひと目見た時から、寂しそうな、哀しそうなその瞳が忘れられなかった。
そして怪我をした動物相手に傷の手当てをする時の彼女の優しい眼差しに目を奪われた。
彼女を救い出したい。
――そう思った。
僕は彼女が来るまでここに住んでいた魔女を知っている。
この森で暮らしているなら、知らない者はいないだろう。
金にがめつく、気まぐれで恐ろしい魔女。
黒冷月の魔女、と呼ばれていた。
まさかあの魔女が、ミリーナさんに呪いをかけた犯人だったとは。
怒りがふつふつと湧き上がってくる。
相手は魔女だ。
一筋縄ではいかない。
無理難題をふっかけられるかもしれない。
それでも、会いに行かないわけにはいかなかった。
いつかは会いに行かねばならない相手だ。
それが今になっただけだ。
ただ……あの魔女に会いに行くには、この森を離れなければならない。
今、ミリーナさんの傍を離れるのは不安だけれど……。
すぐに戻ってくるから、それまでどうか無事でいて。
僕は彼女の声を振り切るように、黒冷月の魔女が移り住んだと噂に聞く森へと駆け出した。




