ミリーナ7 なにも変わらない現実
馬鹿なあたし。
ラオルに期待するということは彼を危険に巻き込むことだって、今まで気がつかなかったなんて。
『僕があなたを守ります』
ラオルの言葉に、胸が震えた。
けれどまっすぐにあたしを見るラオルの瞳に浮かぶ決意の固さに気づいて、さあっと血の気が引いた。
何故、ラオルがあたしのためにそこまでしようとしているのかはわからない。
でも、ラオルのその目は、自らの命を顧みない危うさに満ちていた。
このままあたしがラオルに甘えてしまったら、ラオルはあたしのために命を投げ出してしまいかねなかった。
そこまで想われて、嬉しくないはずがない。
でも、もしあたしのためにラオルが死んでしまったら、あたしはまたひとりになる。
そしたら今度こそ、あたしは自らの命を絶つだろう。
もう、期待なんてしない。
小壜を用意したりなんて、しない。
ラオルの死など、あたしは望んでいない。
だからラオルを突き放した。
ラオルを巻き込むくらいなら、あたしはひとりで死ぬ。
……なんだ、と思う。
なんだ、結局、なにも変わらないんじゃない。
そう考えると、可笑しかった。
自分がいったいなにを求めていたのかわからなくなる。
自分を救い出してくれる、無敵の勇者?
そんな人、存在するわけがない。
わかっているつもりで、わかっていなかった。
あたしはどこまでも子どもだったのだ。
期待しちゃいけない、なんて言いながら、ラオルに期待していた。
その先にある現実から目を逸らしていた。
ラオルをあたしの運命の道連れにして、彼を不幸にしてしまう。
――それが現実だというのに。
乾いた笑い声が、屋敷の中に響き渡っている。
まるであたしじゃない誰かの声みたいに思える。
森の奥深く、薄暗い屋敷の中で笑い続ける女。
まるで魔女みたいだ。
魔女、魔女。
数えきれないほど、そう呼ばれてきた。
そうなのかもしれない。
そうだったのかもしれない。
あたしの中には、あたしの知らない魔女が潜んでいたのかもしれない。
なんだかますます可笑しくなってきて、あたしはいつまでも笑っていた。




