04 コーディネーター晴
入学式から、早1ヶ月半くらいだっただろうか。
汐音の学校が工業高校ということもあり、慣れるのはまだ先そうだ。
汐音の友好関係だが、親友と呼べるのは晴だけだろう。
その他のクラスメイトも何人かは友達と呼べるほどには仲良くなってきている。
中学生の友好関係の無さを思えば大躍進と言っても差し支えないだろう。
そんな汐音は緊張していた。
中学まで友達のいなかった汐音が、友達の家に遊びに行くなんて今までありえなかった。
今日は土曜日。
黒の薄手のパーカーに黒いズボン。それが休日に碌に外に出ない汐音が持っている比較的マシな服装だった。
電車に乗ること30分弱、目的の駅まで着いた汐音は晴が迎えに来るのを待っていた。
しばらくすると、
「わっ!」
背後から驚かされた。
心臓が口から出そうなくらい驚いた汐音が口をぱくぱくさせていると、
「なんか悪い。そんな驚くと思ってなくて」
「ゆるさん」
「ほんとに悪かったって。そんな驚くと思わなかったんだよ〜。昼メシ奢るからさー」
「…許す」
「手のひら返すの早ぇーよ」
汐音は今日の昼はお腹いっぱい食べようと心の中で誓った。
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すぐに晴の家に行く予定だったが、汐音の服装を見た晴が、行き先を服屋に変更した。
汐音も自分の服装を自覚しているので意義はない。
寧ろ、この機会に晴に服を選んでもらった方が良いだろう。
今日の晴はカジュアルな服装だった。
制服姿の晴しか見たことのない汐音が、一瞬誰か分からなくなるくらいの変貌ぶりだ。
普段はセットしていない髪をセットしている晴は普段のおちゃらけた雰囲気とは、どこか違って見えた。
晴に連れられて入った服屋は高校生にも優しい値段設定で、様々な種類の商品を取り扱っていた。晴の行きつけの服屋らしい。
ファッションに興味の無かった汐音には全て一緒に見えたのだか…。
そもそも、普段の汐音は服屋に殆ど行かない。
年に2回行けば多い方だ。
店内を一周しながら晴に服の説明をされたが、正直どれが良いのかは全く分からない。
そんな汐音の感情が伝わったのか、晴は汐音を試着室に連れて行き、
「ちょっと待ってろ。」
そう言い残し、また服を見に行った。
5分もすると、カゴにいっぱいの服を詰めた晴が戻ってきた。
さっき店内を見回った時には既に、当たりを付けていたらしい。
それから、晴コーディネーターによる汐音ファッションショーが2時間に渡り開催された。
晴の着せ替え人形に徹していた汐音だが、意外と楽しめた。
11時前なのに疲労困憊になったのは言うまでもない。




