12 茉莉の兄
「よろしくお願いします。」そう言って汐音は車へと乗り込む。
迎えた週末、茉莉の兄が家まで迎えにきてくれた。
「ああ、任せろ。それにしても汐音くん久しぶりだな。雰囲気が大分変わって、見違えるようだ。」
「前に会ったの数年前ですもんね、と言っても雰囲気が変わったのはここ数ヶ月ですけど。」
「そうそう、汐音ったら高校入ってからすぐに雰囲気変わっちゃって」
助手席から茉莉の声が聞こえる。
「茉莉もおはよう」
「おはよ」
「汐音くんは高校デビューってやつかな。昔より良いと思うよ。」
「汐音は高校デビューって言うには少し遅いタイミングだったけどね。お兄ちゃんと違って変な方向に変わらなくて良かったよ。見てて痛かったもん」
「茉莉、思い出させるんじゃない。」
「あぁ、そう言えば昔雰囲気ガラッと変わった時期がありましたもんね」
茉莉の兄は昔、高校デビューと称して言動がおかしかった時期がある。
所謂"厨二病"と言うやつだろう。
汐音はその頃から茉莉の兄と関わりが少なくなっていった。
仕方のない事だろう。今まで関わりが少なかったのにもそんな理由がある。
「そんなお兄ちゃんによく彼女出来たよねぇ。私だったら絶対なりたくないもん。まぁ、その彼女のおかげで今のお兄ちゃんがあるのかもしれないけどさ。あれ?今はもう婚約者だっけ?」
「そうそう、この前プロポーズしたんだよね。高校の時からだからようやくって感じかな」
「婚約したんですか。おめでとうございます。」
「ありがとう。いつ結婚するかはまだ話し合ってる所なんだけどね」
「相手方の親が全然認めてくれなかったんだもんねー。結婚の手順とかよく分かんないけど、色々大変そうだったもん。"お兄ちゃんが働いてからいくら貯めてなきゃダメ"とか"将来的なプランはどうなってるんだ"とか、聞いてるだけで疲れちゃうんだもん。」
「それは…、なんと言うか大変でしたね」
「汐音くんも結婚する時は気をつけた方がいいぞ。」
「その時になれば相談させて貰いますね。」
「あぁ、いいぞ。中々の経験してきたとは思ってるから大抵のことは答えられると思う。まぁ、うちの両親なら汐音君だったらすぐにOKだと思うけどね。」
「私、まだ汐音と付き合ってないよ?」
「え?本当に?昔からあれだけ一緒にいるのに?まぁでも、まだって事は付き合う気があるんだ」
「お、に、い、ちゃ、ん?もう、そう言う事、汐音の前で言わないでよね」
真っ赤になった茉莉が必死に叫んでいる。今にも飛びかかりそうな勢いだ。
「おい、運転中だから危ないって」
「お兄ちゃん許さないんだから」
そんな二人を見て汐音は、"茉莉の兄"という強力な味方を得られかそうな安堵感と共に、茉莉との関係を改めて進めなければと思うのだった。




