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軽く感知したら簡単に分かる魔力。

どうやら広大なる謁見の間にそれはある。

トリプル爺のG2こと魔法大臣の魔力のかたまり。

見事に隠匿処置が為されているが、魔女開祖ルクルッツは長い付き合い故に彼のちょっとした癖から見抜けてしまうのだ。


はークソが。ふざけんな。

そんな感じの感情がたっぷりと編み込まれた馬鹿でかくも強力な防護魔術。

その内側にて。



「国境警備極秘強化! 予備兵に招集伝令! 緊急転移魔術による集合承認! 王都治安維持隊、増員! 緊急招集! 救助隊も同様に招集、王都救助部隊と情報共有しつつ散開!」



「修復魔術人員、各都市配備部隊より半数、緊急招集。緊急転移魔術使用承認。回復部隊、同様に指示。浮遊魔術、防御魔術に長けた者も緊急招集しておきなさい」



「国庫をあけい! 備蓄配給人員準備! 緊急につき事務官も半数動員じゃ! 治安維持隊と協力し王都各配給支持地点にて配給準備! …………各国外交官、隠密警護。質問されたら情報開示は2級まで。把握隠密、忘却処置。要人暗殺容疑者は見つけ次第通常処理で」



魔女開祖にかかれば、フィールディアが誇る魔法大臣の防護魔術の中にするっと入り込むなど造作もない事。


リグルス王やその側近、丁度その場に居た者、逃げ込んできた高位貴族、その配下、王宮務めの者が避難している。


流石と言うべきか、リグルス王が真っ先に、ハーレムに抱き抱えられたマリアリア王妃に気付いた。


「マリアリア!」


軽々に移動してはならない身分である筈の国王が、こちらを見るなり駆け寄ってくる。

王が丁寧に妃を抱き抱えた時、王国の薔薇の目が覚めた様だった。


「……陛下。ご心配、おかけしました。ルシウムや魔女開祖殿、レムレス伯爵令息にもとんだ迷惑を。本当に申し訳ありません」

「王妃陛下の所為ではありません。緊急事の為、詳しい事情は後日申し上げますが、どうぞ気に病まれないで下さい」



国王夫婦なんてノーブルな方々のお相手は伯爵令息として育ったハーヴェスト・レムレスに任せるとして、魔女開祖は気配を薄めてこそこそ魔法大臣の元へと向かった。


魔法大臣はこちらの防護魔術を見るなりこう宣った。


「ば、ばばあばりあー!」

「ぶっ飛ばしますよ☆」


元気そうで何よりである。

魔女はトリプル爺を集め、簡潔に現状を告げた。

魔女の肩にて寛ぐ王子の前世は建国王と知っているらしいので。


「マジですか」

「マジなんですか」

「ボケじゃなく?」


「残念ながらね。ルシウム殿下」

『ルシウム、ね』


「「で、殿下猫……!」」

『女神目隠し、仕方のない事さ』


長い尻尾をしゅるんと揺らして魔女の肩に居着く猫が答える。


「つまり創世の女神はルシウム殿下にご執心で、連れ帰るためにこんな所業を?」

「そういう事になりますね」

『もっと試練に挑んで欲しいようだよ。現状以上の“奇跡”など俺には必要ない分かっているだろうに』


「どうなさるおつもりですか?」

『勿論、俺から女神の説得を』

「大丈夫じゃろうか」

「あれどう見ても、やべー御方ですじゃろ?」

『意外と言葉は通じるよ?』

「殿下はイケメンじゃから」

「創世の女神もイケメンがお好きなんですなぁ」

「しかし説得するにしても一体どうすれば」


最初の邪神ぷち、は奇跡か偶然だったのか、指は現在てんで見当違いの所を必死に捜索している。

このまま放っておいたら一生気付かない気すらしてくる。当然ながら女神らしい気の長さでそれをやられたら人類は滅亡するので、こちら側から気付いて貰えるように働きかける必要がある。


「そこは私に任せて。草原地帯まで引き付けてからデカいのぶっ放して気付かせるから」


私の得意が大量破壊系攻撃魔法ってのはもしかしたらこの時の為にあったのかも知れない。どうせなら出来るだけ派手にぶっ放してやろうっと。


「それは頼もしいですじゃ」

「山を輪切りする破壊力の見せ所ですじゃ!」

「何度も窮地を救って貰い申し訳ないですじゃ」

「じゃが女神とかワシ想定外ですじゃ」

「予測不可避! ワシ悪くないですじゃ」

「ですが、我らで対処出来ないのも事実」

「「「魔女殿、どうか我が国をお救い下さい」」」


頭を下げる3賢老。


「任せて! と言いたいところだけど、今回ばかりは断言できないよ。何たってこの世界を創った女神が相手だからね。でも出来る限りはやってみるよ」

『俺も誠心誠意分かって貰えるように頑張るよ』


「さっすが殿下!」

「さっすが魔女殿!」

「頼もしいですじゃ」

「女神相手もひるまぬお二人!」

「国の未来は安泰ですな」

「よっ! 年の功若夫婦!」


秒で神妙さをかなぐり捨てると、きゃっきゃと楽しそうに調子良い事のたまいだしたトリプル爺。


「あ、魔法大臣」

「何でしょう」


そんな爺共に実に軽い調子で、もののついでであるかの様な口調で魔女は言った。


「創世の女神が異界に封印されてる邪神待遇の豊穣神の頭脳体をぷちっとしたから修復寸前状態に蘇生しといて。豊穣神が死んだままだと困る事は分かっているよね? でも生き返ったら馬鹿強力な魅了してくるから、元いた場所に返したら自然と復活できるように調整しといてね。で、返還場所の座標はここ。“奇跡”の核を目印に顕現したからその繋がりもきちんと忘れず切断しておく事」


さも簡単そうに魔法大臣に告げる魔女。


「っっつあああああ!!! これだから天才ってヤツは!! 魔女水準で言いおって!」

「でも出来るでしょ?」


魔女は軽やかに立ち去りながら、当然そうにそう返す。


「やる事多すぎるんですが?! 魔法大臣的にもすべき事が山積みで!」


ブチ切れの魔法大臣の肩を叩くはG1こと大臣である。


「そちらはワシが代替しよう。懸念は今、伝達頼む」


G3こと騎士団長も身を乗り出して手を上げる。


「護衛は任せておけ」

「お主らも指示がクソほどろうに」


騎士団長が胸を張り呵々と笑う。


「貴兄と違って次代の育成バッチリなのじゃ。ワシはワシが育てた若いもんに任せられる組織を作った。貴兄と違ってワシは替えがきく。命については任されよ」


言葉の出ない魔法大臣に中年魔術師が足を踏み出す。


「こちらの防衛はお任せを」

「僕、魅了耐性があります! 盾にさせて下さい」

「ああ、その子ならば邪神ヴェレスの魅了は効かないですよ。連れて行っても大丈夫かと」


やや遠くから魔女の援護。


「おお、その年で魔女の認める才覚が。宜しい、これも経験と糧になさい」

「はい!」


場の重鎮達は知る由も無いが、強力な魅了耐性を持つ若き天才魔術師はヒロインちゃんの彼氏の一人。つまり原作ゲームにおける攻略キャラと言うヤツだ。




一応、国王夫妻にも挨拶してからこの場を辞そうとリグルス王らの傍に歩んでいくと、ハーレム野郎がその馬鹿強力なハーレムネットワークを災害支援に提供する旨を告げているところだった。

例のやり手実業者ハーレムメンが各都市の大量の浮浪児達に転移魔術を教え込んだらしい。距離が短い者も多かったらしいが、それはそれで活用方法はあるという方針のようだ。すっかり光堕ちしたその子達を救援支援に派遣してくれるらしい。


商売人らしい彼女の事、恐らく宣伝も兼ねている。

やらない善よりやる偽善。

助かるのなら何でも良いのだ。


辞去のご挨拶を申し上げた魔女開祖に対し、マリアリア王妃がしずしず歩み寄る。

魔女はするりと防音の膜を張る。

他の貴族に聞かせられない話の予感を感じたからだ。



「創世の女神に捧ぐ創世感謝の儀式、ご存じでしょうが、建国王アレンが生きた年数周期で開催されるの、わたくし正直、ちょっと気持ち悪いと思っておりました。女神といえど、子離れの時です。魔女開祖殿には他力本願で申し訳ないのですが、息子のこと、どうかよろしくお願いいたします」

「私からもどうかお願い申し上げる」


この国の頂点に立つ者が出来る最大限の敬意を示して魔女に跡取り息子を託した。


「出来る限りの全力を尽くしましょう」


創世の女神なんていう存在に対して人の王ができる事は余りにも少なかった。

魔女開祖なんていう、ただひとにとっての伝説に縋るほか無いのだ。王といえども。






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