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これでも魔女開祖ルクルッツはルシウム王子の婚約者ですので。驚きのアッサリ具合で面会申請は通ったらしい。

伝令の飛行猫からの返信を読んだ途端に、今更新鮮に驚く魔女ルクルッツに呆れるハーレム。


「良いんだ! 私の面会願い通るんだ!」

「おいおい立場思い出せよ未来の王妃」

「ちょ止めて。申し訳なさで死にそうになる」

「お前頑固かよ。どうしてそこまで原作通りにこだわるかね」

「能力・立場が無法過ぎて。目先の親切心でちょっと設定から逸脱した途端に技術と思想が進みすぎるんだって。そうなると原作ゲームが始まらない。その場合の世界破綻するって分かったから。“奇跡・未来予測”ってのが大昔にびこってね。あの時ほとほと思い知りました」

「ふぅーん?」


一瞬にしか見えない速度、最速にして緻密に完成された転移魔術を魔女は悠々展開させた。

大いなる魔力のうねり、転移による空間の揺らぎ、耳が遠のくその刹那、


「なら原作終わったら俺の好きにして良い?」


返事は無い。

繊細極まる魔術を扱う魔女の耳には届かなかった。

ハーヴェスト・レムレスは誠実そのものに見えてしまう爽やかな造作の癖にニィと挑発的に口角を上げた。


原作通りが絶対正義、そんな訳あるか。

少なくとも、本編開始してからは好きに行動しても問題ないだろう。男がハーレム作れるんだし。世界詰みポイントさえ潰せばもう後は好きに出来る筈!



俺という存在がそれを証明している。

まあ、多分。

乙女ゲーに男がハーレム作る展開、あるわけ無いよな?

俺は異物だ。

“奇跡・愛され”は俺の情報が無いと言っていた。転生者だからだ。産まれたが育たなかったハーヴェストという枠に死んだ魂が滑り込んだ、在るはずの無い生き物。異物。

でもこの世界は俺という異物、異常行動を許容している。


そんな柔軟なゲームってあるのか?

ここがゲームならば、俺がルール外行動がやった時点で即BAN、唐突に何か死んだだろう。

男がハーレム作るという乙女ゲー的に許容できないであろう行動をしても、今の今まで何のお咎めもないのが大丈夫な証拠! たぶん、きっと。


ここはゲームじゃなくて似ている世界。

元の世界の誰かがここの情報受信して、乙女ゲーを作ったんだろ。恐らくきっと。

ふわふわにふわふわを重ねた予測であるが、じゃないと700年も世界の守護者やってたこいつが報われねーだろ。それくらいは許されるべき。



王城、第一王子執務室にて。

長時間の執務に対応した典雅な椅子に腰掛け、長い足を優美に組んだルシウム王子。


「ああ、母上のかな」


転生者2人はぱちくりと瞬きをする。


「マリアリア王妃? 何か根拠あるの?」

「“奇跡”を感じる首飾りをしている。父の贈り物らしい」

「げ、破壊するの難しそうですね」

「あの、一応確認しておくけど、このアレンが贈ってくれたペンダントは」

「ああ。俺の持ってる“奇跡の核”の一つだね」

「“奇跡”一つであんなやべーのに、まだあるんスか!?」

「まさかの“奇跡”の二重受刑者?!」

「あはは、受刑者。酷い言われようだね。その通りだったけど。まあ、“奇跡”は二つだけって事にしておこうかな」

「ウソでしょ!? まだあるの??」

「取れる選択肢増やしたいんスけど、ソレそんなに隠す意味あります? 格好付けたいお年頃?」

「そうだよ? 好きな人の前ではずっとね」

「アレン……」


ハーヴェスト・レムレスはうへ~という気持ちを顔面いっぱいで表現した。それから数瞬、軌道修正を試みる。


「それで“奇跡・愛され”の核が王妃様の首飾りだという根拠はおありなんですか?」


真面目な様子のハーレムにハッと正気に返った魔女開祖がパッと距離を取ったのに少し残念そうな顔をして、それから切り替え臣下に頷くルシウム王子。


「そうだね。丁度もうじきアフタヌーンティーの時間だ。そろそろいらっしゃるから美味しいもの、戴こうか」


ルシウム王子が軽やかにベルを鳴らすと、しずしずと教育の行き届いた様子のメイド達が入室し、一同に向かって丁寧に一礼する。そして洗練された所作でアフタヌーンの準備を始めた。

黄金時間で注がれる美しい色合いの紅茶。サクサクのナッツが薫り高いクッキー。ふんわりと甘いベリーのマフィン。剣を極めるため良く運動するハーヴェスト・レムレス的にはクッキーよりも嬉しいサンドイッチ。


さくと軽やかにほどけるクッキーを楽しみながら魔女開祖は婚約者に尋ねた。


「つまり今からマリアリア王妃がこちらに来られると?」

「最近はずっと、今頃にね」

「え、急に緊張する!」

「ルクルッツは母に会った事あるんだろう?」

「結婚式でちょっとだけね。私、ここ20年くらい遠方での私的な所用でフィールディアに居なかったから、面識なんて無いようなものよ。その上よめになりますってどの面すぎて死にそうです……」

「ははは。大丈夫、彼女それどころじゃ無いから」

「??」



先触れも無く、ノックもなしに第一王子執務室の扉が急に開かれる。普通に不敬で無礼な行為だ。

しかし彼女ならばこの非常識も咎められない。

この国で2番目に偉いとされる地位の女性であるからだ。


国母マリアリア、突然の来訪である。






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