涼宮ハルビンの折伏(後)
第 五 章
「♬♬♬♬♬♬♬♬」
俺が知ってた速報に狂喜して16ビートを奏でていると、スズコ(日蓮)は中支那さん(親鸞)に向かって、、
「目標の虚数空間座標を伝える」
「おかのした」
中支奈さん(親鸞)は忠実な部下がYes,sirするように数珠を巻いた両手を伸ばした。
「114514」
スズコ(日蓮)の指が、中支奈さん(親鸞)の指と濃厚に絡まり、緩やかに結束バンドする。……それだけ? しかし中支那さん(親鸞)はそれだけでよかったようで、
「日本語でおk、スズコさん。そこに行って『決着』を付ければいいのね。でももう犬作は亡くなって、創価学会のインフルエンスは落ちているはずだし……」
仕事が終わって一息つく親鸞大聖人に日蓮大聖人は唱えた。
「チョ・マテヨ」
スズコの指がさらに強く、中支那さん(親鸞)に絡まり、青春をコンプレックスさせて、
「元から死んでいたようなものよ。何をいまさら。公明党はまだ与党だし、原田会長は5期目再任で御健在だし、ゆりこも3期目突入よ。俺たちの旅はまだ始まったばかりよ」
早く打ち切れよ。スズコ(日蓮)は数珠を絡めた手を離さない。
「祈りを」
スズコ(日蓮)の数珠が光り、中支那さん(親鸞)の数珠も共鳴した直後、
「♬♬♬♬♬♬♬♬」
シャンシャン鳴っていた16ビートのリズムが加速し、俺らを巻き込み、
「すわwwwww」
思わず声が出てしまった。だが、それも仕方のない反応だと思うね。妙な音符の輪が俺らを取り囲み、次第にそれが、南無妙法蓮華経と南無阿弥陀仏の共鳴だとわかった。
何も怖くはない。散々聞かされた感情のこもっていない念仏だ。1か月間OPのイントロをこしたんたんされたこともある。調教に慣れ切った俺が動じるはずがない。
輪になって念仏を唱えられるくだり。このままこの世界を抜け出せられるのではないかと、一抹の希望を抱きつつ、五分か十分か、南無の光を拝んでいただろうか、音が止んだ。
プロジェクションマッピングで鎌倉の世を彩った出来事が、走馬灯のように流れ出す。114514鎌倉幕府成立、そんなこともあったよなぁ。あの頃の由比ガ浜は今より治が良かったのだろうか。元寇、結局日本の判定勝ちだったようだが、疑惑が残らないか。情報知らん日蓮! 1時にエリと同窓会。鎌倉新仏教のペナントレースは結局どうなったんだ。
「対宗教法人幹部隊遮蔽スクリーンに映像を流しといたわよ」
そんな便利なものがこの時代にある訳…ついでにスマホも使えるようにできないか。
スズコ(日蓮)は全く動じず、淡々としている。中支那さん(親鸞)が両手で口を覆って驚いているくらいだ。俺は妙な痺れを感じて手首を見やる。インシュロックにより俺とスズコと中支那さんの手が結束されていた。なんちゃらスクリーンが環状になり、無重力状態の俺たちは4DXさながら全方向に回転をはじめ、知らない間に気を失っていた。
『まもなく、京都です。朱雀大路、八条大路はお乗り換えです。今日も、対宗教法人幹部隊遮蔽スクリーンをご利用くださいまして、ありがとうございました。』
どう見ても新幹線です。本当にありがとうございました。
「………」
京都に降りたった俺たちは、三点リーダの使い手に、出会った―――