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いなくなった元旦那から手紙がきた

作者: さとう あか
掲載日:2024/05/18

 

 別れた元旦那、芳雄が死んだらしい。

 

 そうなんだ、としか思えなかった。


 反応の薄い私をこの弁護士がどう思ったのかはわからないが三つの封筒を出した。


「これは芳雄さんがあなたと子供たちへ残した手紙です」


「はあ」


「あなたは何も思わないんですか!?」


「芳雄さんはひとりで亡くなっていったんですよ!?」


「病魔に蝕まれて誰にも死を弔われることなく亡くなったんです!!」


「そうなんですか」


「そうなんですかって、まるで他人ごとみたいに」


「他人ですよ」


「子供が小さいうちに家を出ていってそれっきり。10年以上経って私たちに手紙って、他人ですよ」

 

 私は他人だと思う。でもこの人は違うのだろうか、そう思って聞いてみる。


「それとも、あなたは他人ではないと思いますか?」


 少し、間があった。息を整えるくらいの間だろうか。


「あなたはそうかもしれない、でもお子さんたちにとっては血のつながった親です」


 なんとなく、この人は悪い人ではないんだろうな。と思った。なので私は元旦那が遺したというその手紙を受け取った。宛名が子供たちと違うが、そのことは黙っておこう。


 


 内容は意外にも私たちに向けたものだった。でも、私達の名前は全部違う。


 心を病んだんだろうか。知らないが。

 その手紙には自分の闘病生活がいかに大変で辛いものなのかが綴られていた。自分はこんなにかわいそうなのだということを私たちに伝えたかったのだろう。子供を置いていなくなったことへの謝罪なんてものはこれっぽっちも書かれていなかった。


 ああ、いつまでも我が身がかわいいだけだったんだ。そう確信した。


 子供たちに宛てたものを封筒を慎重に開けて読んでみると、私に宛てたものと同じ感じだった。いかに自分が苦労をしたかということ、そして子供への謝罪もなかった。


 高校生の娘と、中学生の息子にこの手紙を見せることはできなかった。でも、二人が成人してこの手紙を読んでみたいと言ったら読んでもらおう。今の私にはそう考えることしか出来なかったのでその手紙を引き出しの奥に絶対に子供たちにみられないようにしまった。

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