プロローグ ヴァルノ帝国
物語は帝国へ
リンドブルー要塞を通して、帝国領内に入ることに成功したクウガだが、すぐに、後悔する羽目になる。巨大な森に周囲一面が木だらけで方向感覚が狂いそう。フライブ(空を飛ぶ魔法)を使えばよかったと。ここが敵地、むやみに飛び回すと、見つかれたら大変なことになる。帝国本部が必要以上に警戒したら、目的が破算しかねない。飛行馬が用意してくれたが、さすがに出口が見えないと不安になる。クウガはひたすら西へ進んだ。
ようやく森を抜けだしたが、そのさきがクウガが久々の感情を思い出した。
「絶景とはこのことだな、」
色鮮やかな花が地面に埋め尽くし、そして、その真ん中には雄々しい巨大な木がある。何千年もしくは何万年以上存在していたかもしれない。周辺には、人が通った形跡もなく、むしろ数十年の間も人が侵入したこともない。
(ここは聖域か何か、なるほど、リンドブルー要塞に積極攻めてこないのは、ここを避けて遠回りしたからか。律儀なことで)
ここでクウガが一つの疑問を解決した。そして、新たな疑問も少しつづ鮮明になってくる。その疑問がやっと形になったのは、クウガが最初の町に入ってからしばらくした時。
門番をスキを見てヒプノス(催眠の魔法)を掛けて、町への侵入に成功したが。町の空気が思った以上明るい、人の流動が激しく、あちこち値引きの声、雑談の声、子供の声、ひいては喧嘩もあり、それを取り締まる衛兵の声も。へたしたら、いいえ、明らかに王国より生気が溢れている。これ程の繁栄、これ程幸福度、故にクウガが帝国の動きに不可解に思える。
(なぜ侵攻した?)
そもそも食料問題がさほどではないし、軍事力が圧倒的帝国に有利、王国があるのは、海鮮物と農業、そもそもあの森の隣に海資源がたっぷりあるから、いずれにしてもそれらも自給自足ができる。口減らしの可能性も、そもそも防具の仕様上兵士は死ににくい、むしろ兵士の生存を最優先で、しかも少数で攻めてきたなら、残りは国内に回せる。残りの可能性は考えれる限り三つ
私怨、支配、宗教
そして、可能性高いのが私怨だと、クウガが考えた。そして、一刻も早く中央都市へ行き、もっと情報を集めたいと思っている。
町の聞き込みを進んでいく中、中央都市への行き方を知り、クウガは帝国の中央都市ベッザムへの馬車に乗り込んだ。そして、ベッザムへ到着したのが夜だった。夜のベッザムが美しかった。不夜城ともいえるその光景は、クウガは息の飲むほどに。
どうやら、夜になると自然に光る魔石によるもので、その石が帝国の特産品の一つで、使用年度もかなり長い。
魔石は周辺の生き物の体内に精製され、故に、産業動物産業を積極進める帝国のおかげで、それ自体のコストが高くない。帝国の繁栄が当然だと、クウガは思う。
そして、クウガは帝国の宿屋に部屋を借りた。もちろん、王国と帝国の通貨が違います。よって、今朝門番にヒブノスを掛けた門番から少し借りた、とクウガが返す気でいた
(さて、城に侵入したいところだが、魔法を使うと、バレるよな)
現に最初の門番に魔法をかけようとした際、門番がすぐさま戦闘態勢に入った。ミラズで近づき、両方の門番に魔法を掛け、そして、そのからくりを知った。どうやら、門番達には反魔法石の欠片を配られて、魔法自体を消せる威力がないが、魔法自体が近くにいると反応するらしい。そのおかげで、明日城内へ侵入が困難と見たクウガでした。中央都市、さらに王様の城には当然欠片ではもの足りない。へたしたら、玄関が石そのもので出来ていたかもしれない。クウガが今朝から見た帝国の様子からそう結論した。
そして、問題を明日に投げて眠りに付こうとした。
『ご主人様、これからどうしますか?』
不安そうにこちらを見ているような感じをした自分の相棒に、クウガは
「どうもこうも、やるしかないが、方法は明日にお預けだ」
『。。。。』
「とりあえず、お前も休め、明日とりあえず町中を見よう、やり方がそれからでいい」
『かしこまりました。それと、私には睡眠が不要です。』
「やっと調子が出てきたな。それじゃ、また明日」
『おやすみなさい、ご主人様』
そして、不安な相棒を宥めて、クウガは眠りについた。
「詰んだ、まじ詰んだ」
『ご主人様、口に出てますよ』
今は正午、二日も聞き込みをしたが、クウガは休憩場のテーブルの上でぐったりしていた。
それはそのはず、朝から、図書館、道端、そして酒場等々、クウガは聞き込みをしたが、そもそも今の皇帝が人気が高く、市民の生活も不満がなく、兵士の報酬も高く、その上福利がしっかりしているときた。
「実際どう思う、メイ」
『それよりも、その恰好はなんですか?』
「うん、変装だよ変装」
『全身黒一色はさすがに目立ちます、あと、変なメガネも』
「いやあ、王国で買ったやつでよ、どう、かっこいいでしょう」
前の大戦、王国ですっかり有名人になったクウガでしたが、もちろん帝国にもその話が届いていった。
そしてリンドブルー要塞でクウガの姿を確認され、兵士によって大体の姿を国中に広めた。しかし、あくまで大体な姿、詳しい姿を知っているのは例の大太刀の女性とヴァルガンのみのはず。そう思うようにしたクウガでした。
『そして、あんまり話しかけないでください』
「どうして?」
『変人に思われますよ』
クウガは周辺を見渡して、客達が変な物を見るような目で自分を見てると察した。
「まあ、いいではないか、むしろこのまま」
『何かお考えが?』
カラーーーーン
とメイが答えを知りたいその時、店に覚えのある姿の客が入ってきた。
その客が、クウガのテーブルの前の席に座り込みクウガと目が合った。
「昨日から真っ黒で変なメガネを付けた者が町中であっちこっちで聞き込みをしている報告を受けたが、知りませんか?」
「くくう」クウガは少し咳をし、発音をわざと変えて、
「知りませんね、むしろなぜお嬢さんのような美人を探さないのかが不思議だ」
「貴様、、、、」
客が例の女性である。どうやら昨日からクウガをマークしてたらしい。時を見て動き出した。
「これから連行する」
「どんな罪で?」
「白々しい、王国の人間が帝国に居っていいわけがない」
「僕、王国の人間ではないが」
「嘘をつくな」
「残念ながら嘘ではない」
「ならば、帝国兵を大量虐殺した罪で拘束する」
「証拠は?」
「なに?」
「証拠はないじゃ、僕を拘束できない、違う?」
「この、」
女性は次第に背にある剣に手を伸ばす、
「いいのか、ここでやり合って、」
女性は辺りを見渡す、驚いた逃げてない客も大勢いるので、女性は手を下ろした、その時
「おいおい、それはないぜ、ここまできて、」
ドスのきいた声が響いた。そして、その声の主が、いつの間にかクウガの後ろに立っていた。
クウガは驚くあまりに体が膠着した。
(いつの間に)
「ミヨさんよ、こいつが敵の切り札らしいじゃないか、ここでやらないと帝国も危ういじゃないか」
「ゼハース、やめなさい、民間人が」
「民間人がどうしたよ、こいつを殺せば、戦争も勝ったの当然だ、おらーーーーーー!」
シャーーン!
ゼハースという男はつかさず鋭いなにかでクウガに切り掛かっていく、その瞬間、クウガは杖をもって横に回避、そして、先居たテーブルが三つに分裂した姿を見た。そして、クウガはすぐさま外へ逃げ込み、そこには五、六人の兵士が剣を構えている。続いてゼハースも酒場から出て、服を脱いた。ようやく先の武器が判明した。両手にアイアンクローの痩せた中年な男、そしてなによりも。
(武器よりも先の動き、気配が感じない、魔力の揺れも感じない、厄介な)
『ご主人様』
「珍しいね、どうした。」
クウガはゼハースに睨みつつ、メイの話を聞く
『あの者かな一切の魔力を感じない』
クウガは心底震えた。魔力がない、つまり魔力探知に引っ掛からない。また先のように後ろを捉えられたら、クウガでも危ない。
「よせ!!ゼハース、ここで戦っては!」
数秒の沈黙がミヨの声で終わらせた
クウガはゼハースと正面衝突を選び、ゼハースはまず左手のクローをクウガに刺そうとする、クウガは片手で杖を持ち、その拳に向けて振り上げて、クローを弾く、そしてゼハースはつかさずに右手のクローを使い攻撃するが、クウガは空いた左手で流す、そういった攻防を繰り返していた。
「は、動き一つ一つ、まるで素人だな、てめ、さては接近戦苦手だろう!!」
「前誰かに言われたね、戦闘中にお喋りは素人だってな!!!」
「は、ほざけ!」
確かに、クウガは格闘において素人同然、いくら親衛隊と一緒に訓練しても、熟練からみればまだまだ。だが、そこで魔法で補う、最大の強化は動態視力、あらゆる動きを10倍ほど捉えて、通常の人間の動きなら、止まっているように見える。そして、その動きに対応できるように、身体能力を向上させ、達人とも渡り合えることができる。反面、攻撃魔法を唱えることができない。
そう、対応できるのみ、勝てるのがまた別、現に、ゼハースに対して、防戦一方である。
そして、もう一つクウガの注意力を阻害するものが、ミヨという女性の存在である。兵士は何とかなるが、死神と呼ばれた彼女がいつ襲ってくるかもわからない現状、クウガにとって非常にやりにくい。
そして、その心配が現実になる
「いい加減に、しろ!!!!」
即座に危険を感じ、クウガは空へ逃げただが、ゼハースも追ってくる。
「逃がすかよ!」
「バカ、、、、」
そして、一閃、黒い斬撃が空を割いて、遠くかなたへ飛んだ。
「。。。。。躱したか」
ヨミが右を凝視し、そこには左手が血を流しているクウガは居た。そして、左の壊れた屋根からゼハースが出てきた。
「てめ、なんのつもりだ」
怒るゼハース、どうやら先の一撃でクウガはゼハースを斬撃から逃れるためその脇に蹴りを入れた。そして、そのまま、風の魔法の反動で斬撃を躱した。完全ではないだが。
「どうも先から妙だな、さて貴様、、、、人を殺したことがないんだな?」
「「「!」」」
「ゼハース、それはありえません。前の大戦で奴の魔法は」
「てめえからは、血の匂いがしねんだよ!!!!!たくさん人の血がよ!!!!」
「。。。。。」
それに答えないクウガだが、その時、一人の兵士がこちらに向かってくる。
「伝令、国王よりその者を直ちに城へつれてくるよう命令が下した!直ちに戦闘行為を禁止せよ!繰り返します、戦闘行為を禁止せよ!」
さすがの予想外の展開に、みんなが唖然としたが、更にもう一人現れました。
「よう、小僧、久々じゃの」
「あんたは」
巨鐘のヴァルガン が現れた
ゼハース・クライシス
年齢 40歳
身長 180cm
体重 61kg
特技 解体
元々死体解体屋で帝国の徴兵に応じ、様々な戦場に巡って才能を開花した。ただ人格の異常も露になって、それを補う程の力で、現帝国最強の三人に君臨することになった。
ヨミ・X・カエサル・ヴァルガン
年齢 18歳(?)
まだ謎が多い人物ですが、前の大戦の責任を問われ、現在やっと謹慎から解かれ、平日中央都市の警備にあたることが多い。