プロローグ ある魔法使いの雇用
これは、7つの世界をめぐる物語であり、7つの欠片の物語でもある。
夢を追う者、絶望する者、足掻く者、壊す者、繋ぐ者、祈る者、捧げる者。
そして、全てを一つにする者
リヴォノ王国。隣国のヴァルノ帝国との戦争に備えて、徴兵を行っている。しかし、メインの産業は農業の上、政府は今まで戦争を回避する方針を取ったため専業兵士が不足している。また冬の蓄え作業も相まって、農兵が思いのほか集まらなかった。その為かいかに時間稼ぎをするか、王国内政の重鎮達は頭を抱えている。
そんな中、一人茶色なフードを被った者が、王国の南方バアルという町の徴兵役場に踏み入れた。
「あの、徴兵と聞いてやってきたんだけど、いいかな」
「はい、では、こちらの書類のご記入をお願いします。」
「旅な者で、住所はないんだけど、それでもいいかな」
「はい、もともと宿無しにも徴兵できるようになりますので、住所は空欄で結構です。」
「いやあ、助かる」
フードの人が記入欄を書き終え、受付に渡した後。奥の広場に案内されました。そこには、仁王立ちしてる爺さん一人がいった。
「では、これより、適正試験を始めます。よろしいですね」
「あ、頼む」
「グロさん、お願いします。」
どうやら爺さんの名前はグロというらしい、そして、
「では、あそこの案山子を倒してくれ、壊しても構わん」と言いました。
広場中央を見ると、大きな、それも石でできっている体を持つ巨人がいる。
(案山子つうか、ゴーレムだな、兵士不足と聞いたが、量より質作戦か?そりゃ応募するやつあんまりいねえわけだ。下手すりゃ試験だけで死人がでるぞこれ)
心を呟いたがすぐにグロに怒られた。
「はよせんか!!若造!!!!」
(やれやれ、やるか)
心を決めたが、その前にまず確認したいと思って、爺さんの方に
「最後一つだけ、あれ、本当に壊してもいいんだな?」
「ああ、やれるもんならだな」
(よし、言質を取った)と内心ガッツポーツして、案山子に面を向って、そしてフードの内から杖を取り出した。
(魔術師?しかし、見ない杖だな。)と爺さんの内心思う
それもそのはず、世界中の魔術師は基本大陸魔法業界に所属し、杖も業界が認めるものしか配ってない。故に大が小なり、杖の形には一定の法則を守っている。
しかし、フードの人の杖は先端には月の形を表した構造で、輪の中に太陽のシンボル的なデザインを施している。さらに両端には、鈴もついている。そして、
(デザインもそうじゃが、あの持ち方、重心がおかしい。もしや)
爺さんの見立て通り、一般の杖よりもやや前乗りの形で保っている持ち方。そして、持ち主が呪文を唱え始める
「星よ、砕けた先の物を知るといい、そこには何もない、唯虚無と帰るといい、スぺースフォース!!!!」
そして、案山子の中心からあり得ない角度で彎曲し、周囲が中心に吸い込むように、最後そこに何もなかったのように、案山子が消えた。
「今のはなんだ、呪文?だが、聞いたこともないぞ」
「独学です」
「。。。。。」
あっさりした返答に、グロは考え込む、そして
「そなた、名は」
フードの人は顔を表すのように、フードの頭を後ろに下げこう答えた
「クウガ、クウガ・ゼン」
「クウガ・ゼン、お主の入団を認める、ようこそ、ヴェノ騎士団」
そして、クウガの宿舎先を決め、見送った後、グロは受付嬢にこう言った
「あのクウガの素性を探って欲しい、内密にな」
「よろしいですか、グロ支団長」
「あの杖といい、あの魔法といい、そしてあの歩き方、どうも気がかりじゃ、頼む」
「わかりました。」
こうして、クウガの入団が決めて、運命の転換点が始まることになる。
「終わった終わった、うんんんん」
宿舎先のベットの上で大の字になって横たわっている。ただその顔に疲れがなく、むしろこれからのことに期待と楽しみが溢れているような顔をしている。
(ここに来て、やっと解放された感じだぜ。しばらくの間だが、思い存分力を震えるのがいつぶりだろう。)
心をこうやって呟いて、しばらくしたら、ドアをただいた音がした。
「はい」
ドアを開けて、そこには管理人らしい人物がいた。
「明日朝徴兵役場に到着し、そこから支団まで案内します。」
「わかりました。ありがとうございます。」
そして一礼して、管理人が去ると、クウガは再びベットにつき、眠りについた。
翌朝、徴兵役場に到着したが、昨日と違って、慌ただしい様子。
その様子に違和感を感じ、受付嬢に聞いてみる。
「おはよう、どうかしました?」と周囲に対して指を指した。
「おはようございます、どうやら要人の馬車が盗賊に襲われているらしい」
「なるほど」
この国は現状兵が少ない、故に隣国の侵攻に耐えるはずがなく、宣戦布告されて僅か3か月弱でほぼ3分の1の領土が奪われた。敗残兵はもともと傭兵が多く、そのまま帰国しても旨味がないと見限り、また帝国に付くとしても、前線で消費されるのもオチ。故に、盗賊落ちとなる。
「で、なんで役場まで、普通なら支団やもっと上の組織が動くはずでは?」
「支団は今辺境で警備してます。他も似たようなもの。この町の警備隊はすでに動きましたが、正規兵ではないため、傭兵崩れに対抗できるかどうか。それに、事件に一番近いのがこの役場ですから」
「なるほど、そういうわけか。。。。。」
クウガはしばらく考え込んで、そして不敵な笑顔をする。
「?」
さすがの受付嬢も少し疑問だったが、そしてある予感をし、やがて予感が的中する。
「ねね、その場所は」
「ダメです、まず支団長の指示を」
「まあまあ、そう言わずに」
「相手は盗賊とは言え、元傭兵だよ、一人では無理です」
「大丈夫、僕、強いから」
「ですが」
「行かせてやれ」
受付嬢の戸惑いに遮るように、グロが答えを出した。
「爺さん分かってる。」
「ただし、要人の無事は絶対条件じゃ。」
「任せて、受付さん、事件からどのくらい経ちました?」
「1刻前ですので、伝言石が今も連絡を取り合っているから、まだ無事ですが、あんまり時間が」
「方向は?」
「南北先の、ガラという村の近くに」
と受付嬢が地図に指を指して。
「分かった」
そう答えて、クウガは外に飛び出し、それに続けるように、他の皆さんも外に出たが、すでにクウガの姿がなくなっている。
「あいつ、どこに」
他の入団者がクウガの姿を確認できずに戸惑っている中、一人だけ空に向けてこう呟いた。
「飛行もできるんだな、やはり」
入団試験を見た者のみ、今の現象を理解できる。そして次の行動に移せる。
「さあ、我々も行くぞ、ついてこいひよっこども!!!!」
ここは荒野、かつては緑に包まれた場所だったが、過度の伐採が災いに、今や何にもない荒野と化した。そして、そこには、馬車と、それに追う一団がいる。
「姫様!姫様だけ転移を」
「馬鹿言わないで頂戴、逃げるならあなた達も、それに、今スイブ(速度上昇の魔法)を連続にかけたから、しばらく魔法を使えないんだ」
「ですが、このままじゃ」
「安心して、伝言を放ったから、もうすぐ応援が来る、それまでの辛抱だ」
「はい、きゃあ!」
答えた後、馬車の隣に火柱が起きた。
「向こうにも魔法使いがいるわね」
「冷静に分析しないでください」
「けどこのままだと、まずいわね」
「そして冷静に不安をくちにしないでください」
「。。。。ツッコミの切れが悪いね、アン」
「ほっといてください、姫様!!!」
長年の付き合えもあってか、友人ともいえるやり取り、だが、状況はそんなほのぼのとした物ではなく、間もなくスイブの効果が切れ、絶体絶命の状況となる。その時、後ろの馬の音を聞こえなくなってきた。不思議と窓から顔を出す姫様。
「危険です、姫様」
「あれは、」
後ろを見ると、そこには盗賊の一団と、一団の前に浮いている者がいる。
「や、諸君、君たちは落ちこぼれ雑技団でいいかな」
「貴様、死にたいか?」
団長らしき者が静かにキレて、禿げた頭には血管が浮き出した。ただそれをお構いなしに、クウガが続けた。
「いやね、僕てさ、今日初出勤なのよ。いくら僕でも緊張するんだよ、だから君たちに感謝してるんだ、緊張する場面を壊してくれて、お礼に雑技団の入団をプレセントしたいわけ、どう?」
「あーそう、こちらからもプレセントしたいどころだよ」
「どんな?」
「あの世へ逝く駄賃だ!!!!!」
そう言ってクウガの周りから炎の嵐が包まれていく
「どうだ、この生意気な野郎がよ!!!あの世で精々悔いがいいぞ!!!ははははは!おい何してる、早く追わんか!逃げられたら承知しねぞ!」
「「おう!」」
そして、追跡再開するようとしたその時。
「うんうん、悪くない、盗賊団にしては、だ」
その返事に反応し、すぐ馬を止めた、顔にはすでに疑問しか残らない。
(馬鹿な、だとえ上位魔法使いでも、抜け出すことが不可能のはず、しかも、4人同時完全演唱やぞ、それを耐えるわけが)
疑心暗鬼の団長だが、唯一つ、目の前にあの生意気な野郎が生きている現実がそこにある。
「炎はどうした!!!」
「消したよ。」
「馬鹿な、こんな短時間で」
「ふーん、ま、そう思うのも無理ないか、で、どうする?」
「なめるな、放って!!!!」
そう叫ったが、何も起こらなかった。魔法使い達は困惑した、なぜなら、杖の先端がいつの間にかなくなっている。
「そんな、弓体、何をして」
「頭!弓はもう」
すでに弓も破壊されている。団長はさらに困惑した。一体、いつから、どうやって。長年の経験が団長の中に警報を鳴らしている、これ以上やると、死ぬ、と。しかし、もはや考える時間すらない、ここで決断しなければ、死ぬのは自分一人だけではなくなる。
「降参する、だから部下の命だけは」
「ほう」
目の前のくそ野郎は不敵な笑顔をしてるが、団長は怒りをしっかり飲み込んで、地面に膝をついて、両手をあげた。それに続けて部下達も武器を捨て投降するようになった。
「プリンズ」そう唱えたあと、ひとまとめにされた盗賊団の周囲から光が溢れて、やがて光る牢屋となった。唖然とした盗賊団だが、次第に無気力となっていく。
(これで良し、あとは警備隊の到着を待つ、、、、、、しまった!連絡手段が!!)
己の不覚に悔いつつも、遠くから接近する物体を察知し、その方向を見渡すと、そこには一台馬車が向かってくる。
(あれは、、、)
やがて馬車が目の前に止まり、そしてそこから二人の女性が降りてきた。
片方が茶髪のボニーテールをし、侍女の様な服だが、気苦労が絶えないの様な女性で、もう片方が簡素でそれでも高級な白をメインの服を纏い、長い白髪を立体感のあるロープ編みにし、翡翠の瞳を持つ女性。一目見てグロが言っていた要人は後者である。
「初めまして、お嬢様方、僕は新しい入団者の、クウガと申します。以後お見知りおきを。」
ここでクウガがとるのは敢えて知らない振り作戦。そして
「私はテネジア・ヴァン・ローゼン・リヴォノ。リヴォノ王国第一王女。此度の働き、大儀である。」
(やはり、そうでしたか)
「王女殿下でしたか、誠失礼いたしました。私今まで辺鄙な場所で育てられたせいで、王女殿下に大変なご無礼を、、」
「それはいいのよ、それに、私救われた身でございますので、もっと自由にしてもいいですのよ、先あちらの方に対してたように」
(すごいお方だ、というか聞こえてたのかよ、あの距離で、となると)
「姫様も魔法を、、」
「え、ほんの少しだけよ」
「姫様!」
とさすがに侍女が静止しに来ました。そして二人の顔が近い距離で手を口の部分を見えないように置いて
「姫様、あんまり外部の人間に情報与えないでください」(小言)
「分かってるわアン、大丈夫なのよ」(小言)
「姫様の大丈夫はあんまり信用しないですが」(小言)
「見てて」(小言)
そして二人は手を下ろして、侍女が一歩下がって王女が続く
「こほん、失礼しました。お礼をしたいがよろしければ王城に来てもいいですか?」
「よろしいですか?それに私はこれから支団と合流する予定の様ですが。」
「構いません、そちらの支団長には私が伝えますので、日時は追って知らせます。確かバアルはここ一番近い町ですよね、アン」
「はい、徴兵役場を有する町でしたら、バアルが一番近いかと存じます。」
「でしたら、日時は役場の職員にお願いするわ。」
「かしこまりました。」
「あなたはどうしますの?」
「分かりました。王女殿下の仰せのままに」
「まあ、仕方ない人ですね、では、ごぎげんよう」
そして、王女は馬車に乗り王城方面へ向かいました。
(にしても、すごい姫様だな、部下の気苦労が想像がつくけど、さて)
そしてクウガが盗賊団に向けて、一つの疑問をぶつけた。
「さて、お前たち、王女だと知って襲ったのかな?」
「。。。。。」
「だんまりか、姫様が姿現してから、一応反応をちらと見たが、団員が驚くが、団長、あんたが全く動じなかったぜ、さあ、吐いた方が楽だし、部下も酷い拷問しなくて済むけど、どうする?」
「。。。。。」
「。。。。。。わかった」
と判断した瞬間団員の一人を牢屋から引きずりだした、牢屋の破損場所がすぐに修復し、牢屋がざわついたが、団長は冷静でいった。
「今からこいつを窒息させる、三つ数える内に吐いた方がいいぜ」
「。。。。。。」
団長が動かない、それを見てクウガが続く、
「一」
「。。。。。。」
「二」
「。。。。。。っ」
「頭、、、、おれち、、、、を、、、、、かま、、、、、、ず、、、、、、」
「いい根性だ、傭兵崩れにしては、なら」
「まって!!!」
ここに来て団長の心が折れた。
「依頼人はフォンスウエイ伯爵だ、帝国と内通し、王女様を誘拐せよ、との事だ。」
「誘拐?殺すではなく?」
「生存は条件らしい、具体的な内容は知らない、教えてないし、必要もない。」
「だろうな、まあ、王女様が生きてりゃ利用価値もあるだろう。」
「頭」
団長が答えた後、団員を牢屋に戻して、そしてクウガが続けた。
「ここに一つ提案なんだけど、どうかな」
「なんだ」
クウガが続けて提案を示す、そうしたら団長がみるみるうちに驚く顔に。
「正気か?」
「狂気でこんな事言わないのさ」
「狂気でしかないんだが」
「捉え方の違いだろう」
そう言い切ってるクウガを見て、団長が最初は渋ったが、やがて笑顔でこう言う。
「お前、本当に辺鄙育ち、いやあ、王国育ちか?」
その問いに、クウガは笑顔で答えた。そしてこう言う。
「どうせ処刑されるんだ、この際、僕に賭ける?」
「。。。。。」
「それに伯爵はこれで終わりだ、宿主がこれからいなくなる。悪い話ではない」
「。。。。分かった」
「交渉成立」
やがて警備隊が到着し、盗賊団を連行した。それに続けてグロの部隊も到着した。クウガが今までの事全てグロに報告し、盗賊団の処罰を自分が王城で謁見の後でお願いしたら、グロがそれを了承したとの事。何せグロはバアル支団の支団長だから、ある程度采配ができる。なぜ支団長が支団にいないかというと、新人を自ら選抜したいのと、辺境の守りを薄めたくないらしい。
そして、一連の報告を済んだ後やっと宿舎に戻れたクウガだが、休みもなく、管理人がノックしてきました。どうやら、明日王城の謁見が決まったらしい。
(いくらなんでも早すぎ、バアルは確かに王城に近いが、明日はねえだろう。暇か王様。)
と内心呟いつつも、クウガが眠りについていく。
翌日、王城に到着したクウガ、そして、謁見の間に驚くことに、なんと玉座には、あの王女が座っているからだ。
簡単紹介
クウガ・ゼン
年齢 不詳
身長 187cm
体重 87kg
特技 魔法かもしれない
プロローグの主人公、ほぼ謎
グロ・ファング
年齢 67歳
身長 167cm
体重 67kg
特技 スピア
バアルの支団長で、本来バアルを守護するのでしたが、戦時中辺境守護が最優先となり、支団が辺境警備となりましたが、グロが今回選抜試験するため、一時バアルに戻りました。高齢ですが、まだまだ現役(本人曰く)、ただ現時点で曰く速度なら王国一になります。
バゼール・アシュガ
年齢 47歳
身長 197cm
体重 100kg
特技 両手剣捌き
盗賊団団長、名前はまだ名乗ってません。元々傭兵で、王国が戦争の時、徴兵に応じた一団の団長。戦争に負けて、仲間も大勢死なせたせいもあり、王国戻ってもまた戦争に駆り出されるし、帝国にも行けば処刑されかねませんので、拗らせて、ほぼ自暴自棄状態で盗賊紛いなことをやる羽目に。ちなみに禿げたのがその心労だと思う。
テネジア・ヴァン・ローゼン・リヴォノ
年齢 18歳
身長 165cm
体重 秘密
特技 補助魔法
リヴォノ王国第一王女。お茶目だが、カリスマがあり、内政もこなせる手腕があります。ただまだ若いので、視察のついでに寄り道しがちで、そのせいで今回の事件に巻き込む羽目になります。城を出た際、宰相が取り仕切る仕組みです。また弟がいますが、ほぼ補助しかできません、だが優秀。
アン・グレイブ
年齢 20歳
身長 170cm
体重 61kg
特技 財政
そもそも王女が寄り道できる時間を作れたのがこの人。宰相も認めた才女。そもそも侍女にしておくには惜しい人材。ただ本人の強い希望故、王女の侍女の地位に居続けている。ちなみに、王女のスケジュールを采配したのもこの人です。縁談も上がりましたが、本人は王女に全て捧げる為全部断った。が、王女本人はアンの幸せのために、奮闘中との事。