#9 俺のキズ。
#9 俺のキズ。
俺は何時になったら救われるんだ?
何度も辛いことを心に受けて、何度も何度も何度も、見えない凶器で刺されては抜かれての繰り返し。
そのダメージを隠し通す為に自分を偽って、優しい人間で居続けてきた。
いつしか、その優しさすらも凶器に変わって、知らない誰かを傷つけてしまった。
俺は、一体…何者になれば良いんだ?
俺が俺で居れば、きっと心は少しくらい回復するかもしれない…
でも、俺が俺で居る度に、友人や親友が離れていくのが怖いんだ…!!!
睨まれながら、嘲られながら人が離れていく…。
そんな日々が耐えられないんだよ…!
俺は人の笑顔が好きだ。
だから、自分がキャラを偽って笑い掛けてあげれば、その人が笑顔になってくれる。
そのお陰で友人が増えて、次第に心は満たされていく…そう思って、ずっと仮面を被る人生を歩み続けた。
でも…何で!!!!!
俺はこんなに孤独なんだ?
何で…こんなに寂しいんだ??
どうして、、こんなに心が痛いんだ…?
「生きていれば救われる」なんて、誰かが唱えた呪文のようなものに惑わされて、ずっと耐えて生きてきた。
でも、それで手に入ったのは何だ???
…
こんな事を嘆いたって、何も解決しないのは知ってる…。
ゴミのような自分を変えたくて夢に縋って、仮面を被って、心を塞いで生きた末に合ったのは
嫌な事から目を逸らして走り去る俺の滑稽な姿だった。
救われたい。
愛に溺れたい。
誰か…俺の心を壊してくれよ。
自殺すらできない俺の身体を、
「ーい」
心を
「ーーい」
殺してくれよ…。
「おーーーい!!!」
「…へっ…!?」
あれ…俺は何を…?
「もう…立ったまま気絶してしまったのかと思いましたよ~!大丈夫ですか!?お怪我は…あーーーーっ!!」
え??どうして俺の手を見て驚いて…
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
‥‥
「良かったです…あまり深くない切り傷で…」
「すみません…絆創膏も貼ってもらって…」
はぁ…やらかしてしまった…。
まさか洗い物の最中に考え事に没頭して、洗っていた包丁で指を傷つけて出血したまま皿洗いをしてるなんてなぁ…。
この考え事する癖の治し方、Googleに乗ってたりするかな?
「どうして、あの状況で固まってたんですか?」
「えと…少し考え事をしていてですね…」
「どんな事を考えてたのですか?」
「それは‥‥」
‥‥口が、開かない…。
喉が詰まる‥‥。
この子に聞かせたら引かれるかもしれない…。
また、この不安だ。
「…今すぐには聞きませんよ!言いたくなった時にまた話を聞かせてくださいね♪」
…。
「ありがとう…ございます」
「はいっ!えと…私…ですね?貴方に凄く感謝してるんですよ」
「え?」
「このマンションに帰ってきてから、鍵を失って、友人が誰一人居なくて、行き場の無い私をこの部屋に入れてくれた…それだけで私は一生分の喜びを感じてるんですよ」
「一生分なんて…そんな…」
「だから、貴方が何かに傷をつけられているなら、私はその傷を癒してあげたいんです…!」
‥‥。
「本当にありがとうございます、このご恩は死ぬまで忘れませんよ…!」
‥‥俺は…。
やっと…救われるのかな。
「こちらこそ…ありがとう…ございます」
涙が…人前で流したのは何時ぶりだろう…。
「ふふっ♪それじゃ、私はお風呂に入ってきますね~♪」
「分かりました」
…ティッシュ、どこだったっけ?
あぁ、パソコンデスクの端か…。
「ちょっ!?すみませーん!床に赤色のカビが繁殖してるじゃないですか~!!洗ってもらえませんか~?」
‥‥やっぱり、俺の母親に似てんなぁ…。
心の傷は癒えないまま。