#8 俺の電話。
#8 俺の電話。
俺は≪社会不適合者≫と言われた時に、否定ができずに受け入れてしまうかもしれない。
現に今も、辛い事から逃げ続けているのだから。
きっと綺麗事を謳う者は『辛い事を乗り越えた先に光がある」とか『逃げたら折角のチャンスが無駄になる』だとか、こっちの心情も知れず自分の美談を語るだろう。
でも、そればかりが清廉潔白な将来や運命に繋がるかとは到底思えない。
俺だってまだ18歳で、この先の時はまだまだ長くて予想できない事が多いんだと思ってる。
だから、選択次第で大きく未来が動くかもしれないんだという事も分かっている。
でも…
何で辛い事を乗り越えた人たちが≪犯罪者≫になるんだ?
おかしいと思わないか?
辛い事を乗り越えたら、また別に辛い事がやってきて…心の葛藤故に敗北して赤く手を染める。
一難去って、また一難は繰り返し繰り返し俺たちの前に現れてさ…。
その度に心の傷が増えていって、自然に治癒できないままベッドに倒れ込んで、涙を流して…。
一体俺たちは、何の為に日々戦っているの?
好きなものを手に入れたいから?
好きな場所に行きたいから?
好きな事をしたいから?
違う。それは単なる後付けの目標に等しい。
俺達は無意識的に≪自分の居場所≫を手に入れようとしているんだ。
言うなれば≪依存≫に近いかもしれない。
それほど人間は何かに≪依存≫しなければ生きる意味を目的を失って、生きていけなくなるんだ。
だから、今の俺は生きる意味を失って彷徨う抜け殻に近い。
正直、煙草や酒があったらやってる。
でも18歳だから無理だろうな。
それ故に、人間の3大欲求に縋って満たしながら今は生きていく他ない。
自分を見つけるまでは…。
「ごちそうさまでした♪」
「ごちそうさまでした」
っと、久しぶりのまともなご飯だったからやけに早く食べれてしまった。
「それじゃあ、お皿を洗いますね♪」
わぁ、至れり尽くせりだな…。
ありがたいけど、流石に罪悪感が精神に来るからお皿洗いくらいは部屋主である俺がやるとするか。
「いえお気持ちは嬉しいですけど、全てをお任せするのは気が引けるので俺がお皿洗いをしますよ」
「え…でも」
「大丈夫ですって、くつろいで待っててくださいよ」
にしても、鍋や皿を洗うのって何日ぶりだろうな?
一人暮らししてる癖に、食器洗い久しぶりって面白いな。
まぁ…なんだ、これくらいはやってあげねぇとな!
って、あのロりっ子…妙にソワソワしてるが大丈夫かな?
ま、俺が気にする事じゃないか。
このキッチン、めっちゃコバエ出るから使いたくないんだよなぁ…。
よくこんなキッチンで料理できたな…その精神は賞賛・尊敬に値するぜ…マジ。
まぁ別に、特別皿洗いが久しぶりだからってやり方を忘れるほどじゃねぇよ?
キッチンに置いてあるキュ〇ュッとが底を付きそうなのは、不思議に思うけどな?
そっか…入居当初は張り切って料理してたもんなぁ…。
唐揚げ・豚カツとか…あれ?
俺、揚げ物しかやってなくね?
‥‥なんかリビングの方からバイブ音が聞こえてくるのは気のせいだろうか?
ん~、、な~んか冷汗が止まらないぞぉ???
あのロりっ子何ヤッてんだ…。
「貴方の電話鳴ってますよぉ~?」
リビングからロりボイス!
あっ…なんだ電話のバイブ音か、びっくりした…。
でも、今の時間に電話…?まだ朝5時だぞ?
こんな朝早くに電話なんて…
あっ。
「その電話、切っておいてくださ~い!」
水がシンクにぶつかる音で聞こえにくいだろうから、少し大きめの声で言っておいた。
着信拒否設定にしてなかったなぁ…。忘れてた。
煙草があれば吸ってる。