#3 俺のご飯。
前回のあらすじ。
前回を見ろ。
#3 俺のご飯。
別に俺が、この世界に期待してるものなんて何も無い。
今までだってそうだった。
何か良い傾向が掴めれば、必ず不幸が訪れて何事も上手くいかなくなる。
その度に俺が責められて、悪い人扱い。
相手は悪びれもせず、ノウノウと今日という日常をお日様の下で幸せに暮らしている。
そんな人間共が俺は嫌いだ。大嫌いだ。
鬱陶しいんだよ。
謝る事もすら出来ない偽善者共のくせに。
その発言で傷ついてる人だって居るってのに、無自覚のフリしてよ。
それで俺が指摘すれば、空気を乱した俺の責任になる。
だから俺は…。
人間が大嫌いだ。
「どうしましたか?私を見つめて…」
こいつを部屋に上げたのは、別に優しさとか哀れみとかの感情を含んでいる訳では断じてない。
どうせ、この一夜が終われば同時に滅却されるであろう関りだ。
なら、面倒事になる前に俺で対処しておいた方がマシだと、そう思っただけだ。
「もう、ずっと見つめられたら照れちゃいますよぅ」
おっと、いかんいかん。
俺のゴミだらけの部屋に女性が座ってるという異様な光景に、頭がショートしていたみたいだ。
「あっ、すみません。そんな事より…夜ご飯って食べました?」
よし、何事も無かったかのように会話の転換をしていくぅ。
まぁ…営業スマイルやら営業的話術は、何度もやってきたからな。
早く何か食って、早く寝て帰ってもらうか。
取り合えず…2つ分のカップラーメンを出しておこう…。
「‥‥?」
…って、あれ?
滅茶苦茶無言なんだが?
ってか、首傾げてるよな…俺の話が聞こえていなかったのか?
仕方ねぇ…もう一度言うか…。
「あの、夜ご飯っ…」
「夜ご飯は…近所のラーメン屋で済ませたのですけど…今、深夜の3時ですよ?これから夜ご飯を…?」
スゥ‥‥
なるほど…うん。
そこは正論を言ってくるんだなぁ。
確かにそうだ。
今の俺は体内時計は狂い、アニメ・エロゲに没頭して時間や日付感覚を忘れ、尚且つ部屋の電気は常に暗くしてカーテンを閉ざしたまま生活している状態だからこそ、常人が行うであろう【早寝早起き朝ご飯】なんて言う健康的で国民的な生活を拒絶して真反対のリズムで生きている。
言わばニートである。
外に出なくなったり、外界から光をシャットアウトしてたから気づかなかったけど…。
この子は、いたって健康的な少女なんだ…。
俺とは違う…立派な子だ。
「ご…ごめんね。俺はまだ食べてないから、取り敢えず一つだけ作りますね」
「待ってください」
え?なんだなんだ?
今俺の居るキッチンの方に来てるが…どうしたんだ?
何か俺、気に障る事でもやったか?
「はぁ…深夜のカップラーメンは身体に毒ですよ。タンスに仕舞って下さい」
はぁ…!?
「俺、まだ夜ご飯食べてないんですよ?」
何言ってんだ…この子…さっきから言わせていれば。
下ネタは言って、次は俺の行動を制限してくるのか?
何だってんだ面倒くせぇ。
俺だって健康的な生活を送りてぇよ当たり前だろ。
食事のレシピ・レパートリーも何個か持ってるから、毎日作って食べてぇよ!
でも無理なんだよ。
もう、億劫なんだよ。
食事作る・食う・皿洗いする。
こんなん…毎日やってられるかよ!!!
「私に…貴方のご飯を作らせてください…!」
「・・・へ?」
「え…えと…この部屋に泊めてくださったお礼をしたいんです…。それで、私にできるご奉仕が料理だと思いまして…えへへ…」
…可愛い。
はっ…!いかんいかん。
見惚けてたなんて口が裂けても言えねぇわ。
足をモジモジさせないでくれ…性癖に刺さるだろうが…。
「すみません!その前におトイレ…!」
「お…おう…」
なんだ、照れ隠しのモジモジじゃなくて、漏れそうだからのモジモジかよ。
別に構わんが。
「この中、小型カメラとか仕掛けてませんよねぇ?」
「良いから早く行ってください!」
「はーい、フフ♪」
全くあの子は…初心なのか天然なのか…もしくはバカなのか分からねぇキャラしてんなぁ。
本当に小型カメラを仕掛けて本性を見てやろうか?
いや、やめとこう…。
お縄になって自由を束縛される人生なんて送りたくは無いからな。
にしても、女性の手料理か…。
母さんと祖母以外の異性からの手料理なんて初めてだから、謎にときめいてしまうわ。
別に期待はしてないが…少し心の底で楽しみにしている自分も居る。
それは認めよう。
たまにはやるじゃん、俺の運。
ま、いつかは消え去る縁だろうけど、今くらいは素直に受け取っておくか。
「ぶえぇ…このトイレ匂いが酷いので、私がご飯を作っている間に洗っておいてくださいね」
お前は俺の母さんか!?
神果みかんだ。
どうやら、俺も昼夜逆転してるらしくて午前4時まで起きてた方がぐっすり眠れるようになったようだ。まぁ、後悔は無いが…流石に、健康状態が怖い。
そして、人間も怖い。
それじゃ。