#15 俺の衣装。
#15 俺の衣装。
ずっと、空っぽだった。
ずっと、何者にもなれないまま生きてきた。
ずっと、ずっと、自分を偽って
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、自分も、他人も、傷つけて
泣いても、嘆いても、、誰の耳にも届かなくて
嫌って、拒んで、蔑んで、恨んで、、
俺は一人孤独になろうとした。
それでも、今の俺が生きれているのは‥‥
≪馬鹿な俺≫を救おうとしてくれた、僅かな人が居てくれたから。
でも。
ふと、その呪縛から解き放たれたからと言っても…
染み付いた孤独は、怨恨は、呪いのように消えないまま脳を巡ってくる。
それを思い出す度に、被害妄想を繰り返しては…呪文のように自虐の数々を心で唱えてしまう…。
人を拒絶して、自分の好きな事に時間を使うようになった。
だが、、それも、長くは続かなかった。
好きだった事の筈なのに…いつの間にか手が止まって…。
それでも必死に足掻こうとして、掴んだ手を離したくなくて、ずっと趣味を続けた。
そうして居たら、いつの間にか…少しばかりだけど、やっと俺に居場所や仲間ができた。
声にならない程嬉しかったよ。
願いも少しづつ叶うようになって…徐々にだけど、日常生活が楽しく想えるようになったんだ。
こんな自分でも…誰かを救えたり、誰かの心を動かせれるんだって、前向きに考えれるようになった。
だから俺は頑張った。
毎日、毎日、毎日、毎日、ネタを考案してはメモ帳に書いて…
自分の手にした力を繋ぎ止めようと、力強く握っていようと、そう決めた。
でも。
いつの間にか…何にも、考えれなくなった。
言うなれば、頭の中が真っ白のようになる感覚がずっと脳を覆っているようだった。
それからは、ずっと焦りながら、≪何か≫に怯えながら、趣味に打ち込んだ。
その先に待って居たのは
≪無≫
だった。
好きな事すら続かない…。
だから、これからも俺は…何者にも成れないんだろう。
そんな自分を受け入れられないし、こんな人間なんて…誰も受け入れてくれない。
今までも、これからも、俺は…孤独のままなんだろうな…。
「目移り厳禁ですよぉ~」
…あっ、そうか。
あの成人済みロりド貧乳少女が、俺のマル秘18禁制タンスの中からコスプレ衣装だけをかっさらっていきやがったんだっけ。
キッチンとリビングを繋ぐドアが閉められていて、彼女はキッチンでお着換え、俺はリビングでダラダラァとして待ってる状態だ。
ファッションショーを開演するって言われてもなぁ…俺の持ってた衣装、露出度高い代物ばっかだから…少し嫌な予感してるんだよなぁ…。
‥‥あ、別に俺が着ようと思って買ったものじゃないからな?
そりゃあ…同人ゲームのキャラクターが着てる服とか、興味湧くに決まってんじゃん。
しかも、その服が家にあるだけでさ?
そのキャラクターが家に居るような雰囲気が醸し出されるから、最高な訳よ。
んで…いつまで準備してるんすかねぇ…。
「それではっ!ファッションショー、開演ですっ!」
おっ、ようやく始まるみたいだ‥‥って‥‥
「これ、一度着てみたかったんですよね~どうです!?」
「お~…に、似合うと思いますよ~」
うー、、、ん。
申し訳ないが‥‥物足りない。
特に…胸が。
チャイナドレス…赤を基調としていて派手なデザインで、必と言っていい程スタイルで差が出ると思うような衣装なんだが‥‥
うん、胸が、、足りない。
おっぱいが足りねぇんだよぉ!!!!!!!!!!
でも、普段あまりお目に掛かれないようなお団子ヘアーが相性良いのか、少し大人っぽく見える。
身長は子供だがな?
「よ~し、それじゃあ次いきますよぉ~!」
‥‥
「次は…これです!」
「お!良いですね~似合ってます!」
「子供の頃を思い出しますね~、憧れた時もあったなぁ…」
次は魔法少女のコスプレだな。
ピンク色のフワフワなスカートから、まるで…ま〇かを連想させるような配色をしてるが、違うからな…!!!!
やべ、今の俺って最高に厄介オタク…まぁ、そんな事はベランダに置いておいて。
貧乳でも全然違和感ないし…むしろ体系が子供っぽいからこそ、かなり似合ってるんだよなぁ…。
っていうか、よくコスプレ姿を見せてくれるなぁ…初めて会ってから、まだ数時間しか経ってないってのに。
まぁ別に、嫌とかじゃないんだけど…。
…ちょ…おい、待てよ?
「次、行きますよぉ~!」
一瞬だけ、次着るであろうコスプレ衣装を見てしまったんだが…
まさか…本当にあれを着る気か…?
‥‥
「次は…これです~!」
「‥‥」
「ダ~メです!目を逸らさないでください!」
ですよねー。
猫の型に繰り抜かれたビキニ上下セットだ…。
胸元が大きく猫型に切り抜かれていて、下も少しばかり切り抜けれているような…大胆過ぎて、警察のお世話になりそうなビキニ。
これは…まぁ…一応コスプレに入るな…はは…。
だって、へホゲで着てる子居たんだもん…そりゃあ気になって買うに決まってんの!!!
てか、彼女が着てるのを見て初めて知ったが…
「あれ~?どこ見てるんですか~?」
「い…いえ別に…!」
マジで、下の切り抜かれた場所が…ギリギリを責めてるなって…。
「はい!おしまいです!一発抜くなら、夜にしてくださいね~?」
「しませんから…!」
なんて確証も無いことを言いながら次を待つ。
‥‥
「最後は…これです!」
…それは…。
学校のセーラー服だ…。
上のシャツは白、下のスカートは青を基調とした衣装で、腹出しなのがポイント…。
そして…俺が初めて買った、コスプレ衣装だ。
まさか、思い入れのある衣装を女性に着てもらえる日がくるなんてなぁ…少し嬉しくなっちゃったよ。
「これまでで、一番似合ってると個人的に思いますよ」
「ほんと!?やった~!まだまだ、私も高校生と張り合えるって事だね~」
なんなら…中学生ともいい勝負かもね。
‥‥
「コスプレ衣装、ありがとうございました!」
「いえ、もしかして、コスプレイヤーさんだったりするんですか?」
「え?どうしてですか?」
「だって…知り合って数時間の男の前でコスプレを披露するって、手慣れたコスプレイヤーでしかできないような事を軽々とやってたので…少し気になってしまって…」
「あ~…別に私はコスプレイヤーじゃ無いですよぉ~」
「では…どうして…?」
「‥‥秘密…です」
‥‥。
何で…。
「でも…貴方は、こんな私でも受け入れてくれている…とても…とっても優しい人…」
「いや、俺は…別に…」
「そんな風に…貴方にも、自分を受け入れてくれる人が絶対に居ますよ…」
「‥‥」
「お金が無くても、力が無くても、誰かを暖かく包み込んであげられるような…そのままの貴方だからこそ、受け入れてくれる人が絶対に、ぜーったい居ますよ」
「…そんな…の…」
「私が居るじゃないですか」
「‥‥っ!?」
「私は、貴方の優しさのお陰で…エントランスで一人孤独に夜を明かさないで済みました…これは間違いなく、貴方が起こした行動なんですよ」
‥‥俺…が…。
「そうです…だから…私と同じように、救われた人や、貴方を心配している人が絶対に居ますよ、その人たちの事を忘れないであげてくださいね…」
「‥‥っ…」
「今は、泣いても良いんですよ、次は…私が暖かく包んであげますから」
「…っあぁああぁぁぁぁぁぁああぁあぁぁぁ...!!!!!!」
雲で陰っていた陽気がじわじわと部屋を照らしていく
彼女の暖かさの中で泣く彼
この時は疑問に思う事も無く。
よ、神果みかんだ。
んじゃ、またな。




