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僕について来る赤い軽自動車の正体

作者: 武正幸

 高校の授業が終わり、いつも通り自転車に乗って、

校門を出たところで、路肩に停めてある赤い軽自動車が目に入った。


 至って普通の車だが、なんとなく気になった。


 しばらく走って信号待ちをしているときに、

何気なく後ろを振り返ったら、さっきの赤い軽自動車が、

車列の後方に止まっているのが見えた。誰が運転しているかは見えない。


 ボディが真っ赤な軽自動車。さっきと同じ車だと分かったのは、

ナンバーが一緒だったから。

「1208」

今日は、12月8日だから、覚え易かった。


 また少し走って、いつも寄り道するコンビニに自転車を止めて、

店内に入った。ふと外を見ると、さっきの赤い軽自動車が、コンビニの駐車場に止まっていた。夕日が当たり、ボディがキラキラ輝いていた。何か嫌な感じがして、漫画雑誌だけ買ってコンビニから、すぐ外に出た。車内を覗くと、誰も乗って居なかった。


 家に着くころには、日が沈み、街灯が夜の始まりを告げていた。

川沿いに建つ我が家にも、やさしい明かりが灯っていた。


 自転車を止めようとして驚いた。

我が家の車庫に、さっきの赤い軽自動車が止まっていたのだ。

ナンバー1208の真っ赤な軽自動車。


急いで玄関に駆け込んだところで、母親に声をかけられた。


「おかえり。どうしたの慌てて。」


「あ、あの、赤い軽自動車は?」


「ああ、おばあちゃんが買ったんだって。」


 謎が解けた。

僕の通っている高校の近くに自動車の販売店がある。

そこから納車の為に僕の帰り道と、同じルートを辿っていても不思議ではない。


「あれ?おばあちゃんて、自動車の免許持ってたっけ?」


「持ってないのに買ったんだって。ハハハッ。」


「どういうこと?」


 その時中学生の妹が部活を終えて帰ってきた。

「ただいま。どうしたの?お兄ちゃん。」

すぐ後ろから 父親も帰ってきた。

「どうした?みんな集まって?」


 おかしい。何かが、おかしい。

いや、全てが…。



 私は、都内の大きな総合病院に勤める医師。集中治療室に入っていく藤堂博士の姿が見えたので、声をかけた。

「この患者は?」

「10年前の事故から、意識が戻らない患者だよ。事故当時は高校生だったが、

今は、27歳か。」

今にも目を開けてしゃべりだしそうな、目鼻立ちの整った美青年が、カプセルの中で静かに眠っている。

頭に繋がっているのは電極か。


「意識が戻る見込みはあるんですか?」

「わからない。でも希望は捨てたくない。」


 藤堂博士は、世界的にも有名な脳科学専門の名医である。今までに様々な患者を救ってきた。

「脳にいろいろな刺激を与えて、反応を見ている。反応が確認できる間は、彼が生きているという証だから。」

「今日はどんな刺激を?」

「赤い色の刺激を与えたよ。電気信号でね。」

「反応したんですか?」

「反応したよ。でも、今日はご家族がお見舞いに来て、皆さんに声をかけてもらった時が、一番反応したな。」

「そうなんですか。」

「お父さん、お母さん、妹さん。彼が大好きだったおばあさんは、3年前に亡くなってしまった。一番声を聴かせてあげたかったんだが・・・。」


















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