藍色の瞳
「主よ。あまり老いぼれを虐めないでくれ。」
「運動不足じゃないのぉ?」
「そうかもしれんのぅ。」
「…あ,貴女達は一体?」
加子の前に現れたのは二人の女性だった。一人は首を刎ねた張本人ともう一人は大きく息を吐いて苦笑いを浮かべていた。
「少年、大丈夫?」
「あ、ありがとうございます。」
加子は命を助けられたにも関わらず呆気に取られていた。剣と地面には大量の血。そして助けてくれた女性の顔に返り血。一番呆気に取られたのは今の事が何も無かったような笑顔で女性が加子と鼻と鼻が付きそうなぐらい顔を近づけて来た事だった。
「あなた…」
「…」
女性の綺麗な藍色の瞳に加子は吸い込まれそうだった。
「策殿、気を付けて下され。」
「分かってるわよ。」
「?」
「あなた、私と来ない?」
「えっ?」
「策殿!」
「…商人さんだったのかな?」
女性は顔を離して辺りを見て加子に尋ねた。
「…はい。」
辺りには倒れた荷台。割れたり倒れたりしている大量の瓶。散らばる食べ物が散乱していた。
「いきなりこの森で襲われて捕まってしまって。」
「それは災難だったね。もし少年が良ければ商人を始められるまで手助けしてあげる。」
「策殿。またですか?」
「だって祭~今までで一番良いんだもん。」
「そう仰られて、前の孺子も逃げ出したばかりではありませんか。」
二人の女性が立ち並び、完全に加子を置いてけぼりに会話が進んでいた。