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魔女裁判後の日常  作者: 一桃 亜季
7/121

魔女裁判後の日常7「過去」


偽りの神々シリーズ

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」


シリーズの6作目になります。

       ※


 ジウスからの呼び出しは唐突なものだった。

 母セドリーズが住まう神殿の別邸を訪ねた折だ。妹が出来るのだけど構わないかしら、と寝耳に水な話をきかされ、どういうことかと、ちょうど問い詰めるところだった。


「あらら、私から事情を説明するといっているのに、あなたに悪いと思ったのね。直々のお呼び出しだわ」

 やんわりと微笑んだ母は、それじゃあ後はジウス様から事情を聞いて頂戴と、放任する姿勢を決めたようだった。


 妹が出来るだなんて、普通聞けば単にめでたいことで片付けられたことだろう。

 しかし、月に数回、顔を合わせている母の腹は、いつもぺたんと凹んだままだった。いったいいつ懐妊し、出産したというのだろう。どう考えても母の子供とは考え難かった。


「……まさかジウス様の隠し子ですか?」

 あの容姿であれば、それくらいのことはやってのけそうだった。しかし第三后妃までいるジウスが、わざわざ他に女性をつくるだろうか。

 サナレスの頭は混乱していた。


「とにかく、ジウス様自らが貴方に事情を説明されると言っているのだから、私はもう何も言わない。お願いね、妹を歓迎してちょうだいな」

 我が母ながら、相変わらずジウスに甘い。

 他所の娘を自分の娘として育ててくれと頼まれ、おいそれと承諾するなど、サナレスには考えられないことだった。


 これは父には苦言となっても、丁重に断らなければならない、と思った。


 第一にサナレス自身、妹を持つなど煩わしかった。

 早くに親友を失くし、百年という年月を親しいものも作らずに過ごしてきたサナレスにとって、今更妹が出来たから可愛がってくれと言われても、まして何処の馬の骨とも知れない娘を妹にしてくれなどと、受け入れられるはずもない。


 それでなくとも、親友が残した忘れ形見をまるで自分の子であるかのように噂されながら、養育してきた。これ以上、しがらみにがんじがらめになるのは、望むところではない。


 それを思うと結局、セドリーズと自分は似ているのかもしれない。

「こっちはやっと子育てが終わったところなのだ……」


 ぼそっと呟いて困惑するサナレスの横で、セドリーズはあっけらかんとしている。

「ちょうどいいわよ。可愛い女の子の赤ちゃんだもの。思わぬところからあなたにも愛情が芽生えて、早く結婚して子供が欲しいなんて思うんじゃないかしら?」

 ふふふふと邪気なく笑われ、サナレスは全身全霊で否定的なため息をついた。


 ーーそんなわけがない。

 頭を抱えたサナレスが母に視線をやると、母はにっこりしている。


 彼女の言いたいことはわかる。

 適齢期も疾うに過ぎているというのに、一族の跡継ぎが妻も娶らぬのはどうかと、常日毎心配しているからだ。


「私は、そういったことに特に興味はないだけです」

「ではどういったことに興味が? 適当に女遊びはしているようだから、まさか一風変わった男色の気質でもあるわけじゃないでしょう?」

 悪びれるわけでもなく、ずばり聞いてくる母を相手にするには、サナレスは少々疲れていた。突然の妹出現という話だけでも、かなり頭が痛いのだ。


 サナレスには一生涯忘れられない女性がいた。


 ムーブルージェ。

 彼女が居なくなって久しく、恋愛感情や后を持つという感覚は無くなってしまっている。サナレスは彼女を生涯の伴侶と決め、それ以外は排除すると決めていたから。


 母に対して、そして一族の皇子としては申し訳ないことだという認識はある。

 でもそこは、頑なに生涯貫きたかった。

 自分は一族のために、ここに居るのではない。

 愛する人はただ一人だと。


「神殿へ向かいます」

 もはや口論する元気もなく、サナレスは母の別棟を後にした。

「魔女裁判後の日常7」:2020年11月4日


 二世代目の主人公ソフィアの話になかなか行かないので、ちょっと回想が多くてすみません。

一章(1話)ごとそれ読んでわかるようにしたいけれど、

その辺へたくそで、ふー。


 感想など頂けると幸いです。

 誤字脱字は、たぶんやばいなと自覚してます。


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