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魔女裁判後の日常  作者: 一桃 亜季
115/121

魔女裁判後の日常115「他人」

 偽りの神々シリーズ

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

シリーズの6作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」

       ※


「この赤子の行く末を嘆き、リンフィーナの感情を波立たせているのは、ーーやっぱりおまえだよな、ソフィア」

 泣き疲れて眠ってしまったリンフィーナを抱き上げたサナレスは、確認するように言ってきた。

「やめてもらえないか?」


 眠った振りをやめ、ソフィアはサナレスの腕の中からひらりと飛び降りた。

「良くも悪くも、おまえとリンフィーナの気持ちがシンクロする」

 ソフィアはサナレスを睨んで、不服そうに彼の胸を手で押した。


「この娘も、望まれて生まれてきたわけじゃない空蝉じゃないか? 私もあの子も、この体神も同じだ」

 何も私が忌々しい過去を思い出して感傷的になったわけではないのに、人のせいにするのはやめてもらおう。ソフィアは眉根を寄せた。


「彼女は君と同じじゃないし、今日誕生した赤子もまた、誰とも違う。たとえ同じように思っても人それぞれ経験して成長していく過程が違うのだから」

 サナレスの方も先程まで向けていた優しい眼差しではなく、鋭い目つきを向けてくる。


 自分がリンフィーナの中で大人しくしている時のサナレスとはまるで違う。

「えらくガラリと他人行儀になるものだ……」

 ヤサくれた心で苦笑すると、サナレスは「他人だろ」とバッサリと切り捨てた。

「あんたが私に契約を持ちかけた時点で、他人だ」

 そう言われても当然だったので、ソフィアは首肯した。


 サナレスは涼しい顔で嘲笑している。

「あんたさ、恨み捨てられない限りは、幸せになれないよ」

 生きているときに不遇だったことには同情するけれどな、とサナレスは言う。


「では何故、芝とラン・シールドの総帥の同行を許した?」

 義賊である彼の目的も自分と近しいものがあり、放っておけば彼も兄の意思を継いでウィンジンを狙うだろう。

「向かった場所は海だ。火の使い手である芝が海でウィンジンに敵うものか」


 こいつーー!

 ソフィアは面白くなさそうに目をすがめた。

 

「キコアイン一族では不意を突かれたからな。あんたのせいで私は大きな責務を背負うことになった」

 たとえリンフィーナの命を救ってくれた恩人でも、もうそうそう油断はしないと言ってくる。


「ーーサナ、私はおまえとは敵対しない」

 どういうわけかそれは絶対事項で、サナレスに嫌われたくはない。

 白旗を上げるソフィアは、サナレスが自分との契約を守ってくれるのであればそれていいと観念した。


「おまえにリンフィーナの身体を握られている以上、望むなら貴族を何人でも狩ってやる。だが今日みたいに、自分の感情に彼女の心を蝕ませるなら私は何もしない」

 不可抗力だ。

 確かに自分は望まれなかった存在だったことを追憶の中で自覚して苦しんだ。それが一つの身体を共有する娘に伝心してしまっても、そんなこと自分の知ったことではないと言うのに。


 内心では無理難題だと不服を言いながら、「善処しよう」と小さい声で伝えていた。

 サナレスは自己主張が強い。それは好き嫌いが激しいと言うことが同義で、懐に入れないものについてはどこまでも冷淡だ。

 それでも、玉龍ーー自分の育て親を思い出す以上、ソフィアはサナレスから目を離せない。


「検体も手に入れたことだし、明日ここを発ってラーディア一族へ帰る」

「ラン・シールドの総帥や芝は? 待たないのか?」

 彼らがどうなったのか確認しないままでいいのかと聞くと、サナレスは「私たちは仲間ではない」と返答してきた。


魔女裁判後の日常:2021年2月25日

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