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魔女裁判後の日常  作者: 一桃 亜季
112/121

魔女裁判後の日常112「同意」

 偽りの神々シリーズ

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

シリーズの6作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


        ※


「ねぇ正気!? あんた達何考えてんの? 女の腹切り裂くなんて尋常じゃない!」

 我が主人アセスのためにリンフィーナのそばにいて、彼女を今一度アセスに会わせたいと思っているけれど、彼女の周りに集まった一行には変わり者が多い。


 ーーいや、リンフィーナという存在自体、ナンスにとっては不確定要素が多い。貴族であるのに自分を友達だと言ったり、科学というもので呪術ではない形で空間を爆発させたり、挙げ句の果てに時折違う人格に入れ替わる。


 あんた、今は誰!?

 そう聞かなければならないリンフィーナは厄介な相手だ。


 今はたぶん、自分が知るリンフィーナだと思うけれど、イドゥス大陸での彼女は、全くの別人だった。


 こんな荒唐無稽なことが日常の彼女は、果たしてアセスに相応しいのか!?

 それを悩む。

 アセスはラーディアの皇女であるリンフィーナを望んでいたが、彼女がラーディオヌ一族の王妃に相応しいのかどうか、ここにきて彼女の様子を不安に思ってしまう。


「本当にやるの!?」

 手術という奇怪なことを提案したリンフィーナに、同行者は完全に賛同して着々と準備を進めているのを傍目に、ナンスはもう一度確認した。


「いたって正気。やりましょう」

 リュウセイがナンスの迷いと疑問を、上から目線でペシャンコに凹ませることを言う。

「いいんちゃうか、母体の痛みとる麻酔作れるんなら、ショック死することもないやろ。まぁ大丈夫ちゃう?」

 とても頭が良さそうには見えない、本能で生きているような男、アキまで理解して賛成してしまっている。この場で理解できずに悶々としているのは自分だけだった。


「リンフィーナが王妃の許可を取った。手術をする一室は厨房に近い場所がいい。水もいるし、湯を沸かしたい」

「だったらそこ徹底的に消毒やな」

 サナレスの言葉にアキが応えて、ナンスの気持ちを他所に一行の指揮は上がっている。


「ナンス、手伝ってくれない? ナンスは薬草の知識が豊富でしょう? 手術中、彼女に痛みが生じないように、水溶性にした薬を的確に投与しなければならないの。それにお湯も沸かさないと……」

 助手するのがちょっと一人じゃ自信がなくてーーというリンフィーナは、ナンスに型破りなことを手伝えと頼んでくるので、ナンスは踏ん切りが付かない。


「リンフィーナ、わかってる!? 妊婦の腹を切って子供を取り出すなんて、妊婦を殺すかもしれないし、子供だって……産まれる前に腹から出すなんて、正気じゃないんだけど」

「わかってる。私も本当は不安。ーーだから力を貸して欲しいの」

 不安って……ねぇ。

 そんな状態でやることじゃないと思ってしまう。


 頭が理系なアセスは、よく確率を口にする人だった。

『成功率何%ならお前は動くんだ?』

 それはもちろん100%に近い時に。

 ナンスがそう答えるとアセスは可笑しそうに笑っていた。

『おまえ結構、石橋を叩いて渡るタイプんだんだな。私の暗殺に失敗した割にーー。あの殺害計画は成功率何%だったのだ?』

 くすくすと嬉しそうに自分の失態を口にする主人は、性格がいいとは言えない人だ。


「サナレス殿下、一つ確認してよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

 自分の方を一瞥もせず、手を止めることもしないまま、サナレスは反応した。

「この呪術という奇行、ーーその……、どのくらいの確率で成功するんですか?」


「94%」

 間髪入れずにその答えが返ってきて、その細かい数字にナンスは怯んだ。

「1%はリンフィーナの尻込み、それから残り5%はお前の不信感だ」

 そのままでも別に構わない、とサナレスに言われて、ナンスは歯を食いしばって両肩を上げた。


 なんだよ、それ!?

 こうなったら、やってやる。 

 5%でも確率を下げるなんて、自分には許せないことだった。

「リンフィーナ、何を手伝うの?」

魔女裁判後の日常:2021年2月23日

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