監視役
神奈川支部防衛局に和真が戻ってくると、神の全身と長谷川、大地、美咲、愛花を分けた。神の全身はチーム[リベンジャー]が住まう屋敷に連れていき、残ったメンバーは和真の元にいた。
「……引き続き任務について貰いたい。今回はナギアも一緒にな」
「分かりました。それで、内容は?」
大地は断る事無く、任務の内容を尋ねる。
「神の全身の存在に気がついた者が居る管理する神は探りを入れに神奈川支部に侵入した。チーム[ハンド]はここに向かっている。時間稼ぎをして貰う」
「どこに向かえば良いのでしょうか?」
「二手に別れて、ここに書いてある場所に行ってくれ」
大地は和真から受け取った紙を見つめる。
「それでは任せるぞ」
和真は紙を渡すとその場から足早に出ていく。
大地は二つのポイントにそれぞれの名前が書かれて居ることに気がつく。
「どうやら、配属場所は決まっているみたいだな」
大地のその一言にそこに居たナギア以外のチーム[リベンジャー]のメンバーは大地が手にしている紙を覗き込む。
その紙には大地と美咲、愛花と長谷川とナギアに別れていた。
「取り敢えず、ここに書かれている場所に移動するぞ」
大地の指示の元に全員は移動を始める。
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同時刻。
神奈川支部のチーム[リベンジャー]が住まう屋敷に居る京は神の全身から今までのあった事を聞かされていた。
しかし、神の全身の説明には要らないジェスチャーや言葉が多く膨大な時間がかかっていた。
話の途中で京はこのままでは更に時間がかかると思った京はその事態を避けるべく行動に移す。
「もう分かった。お前はあいつらに連れて来られたって事だろ?」
「……少し違う」
「少しね。代々合ってれば問題無い」
京はチーム[リベンジャー]のメンバーを探す為、部屋を出ていこうと歩き出す。そんな京の目の前を一人の男が塞ぐ。
「安藤和真」
「何処へ行く?」
「あんたには関係無いだろ?」
「あるさ。上官なんだからな」
「あいつらの元へ行く」
「その前に話がある」
「……なんだ?」
「座って話そうか」
和真のその提案を断る事無く、京は大人しく従う。
京と和真の間には絶対的な地位、力の差があった。
チーム[リベンジャー]は建物は人間を傷つけ、犯罪を行ってきたその全てを揉み消したのが和真である。京にとってそれは弱みと言えるものだ。
それがある限り、チーム[リベンジャー]は和真からの任務を断る事は出来ない。しかし、神奈川支部に来る事も断る事は出来たが、ナギサの提案によって京は和真に従う事に決めた。
世界一の知識を持つナギサが言う事だ京はそれを断る理由は無い。そもそも、京が断るか、どうか等ナギサにかかれば瞬時に理解出来る事だ。
京と和真は対面するようにソファーに座る。
京座ったソファーの後ろには無表情な少女とナギサが立っていた。
そんな京と和真の間には神の全身が立ち尽くしていた。
「……二人にしてくれないか?」
「何故?」
「ゆっくり君と話したいからだ」
「二人にならなくても、出来るだろ?」
「聞かれたく無いこともあるからね」
「……分かった。二人にしてくれ」
今日の言葉を受け、ナギサと無表情な少女は部屋を出ていく。
京と和真は話を始める事無く、立ち尽くしている神の全身を見つめる。
「……お前も出ていけよ」
「……えっ?」
「えっ?じゃねぇよ。出ていけ」
「すみません。二人と言われたので」
「言ったけど、お前ではねぇよ」
「そうですか。それでは」
神の全身は申し訳なさそうに頭ををペコペコと下げながら、部屋を後にする。
「それでなんの用だ?」
「神の全身に監視役を付けたいと思ってね。チーム[リベンジャー]の誰か、と考えているんだが」
「……それで?」
「その監視役には365日、24時間やって貰いたくてね。頼めるか?」
「……今、答えるべきか?」
「今日中で良い。それだけだ」
和真が部屋を後にしようとしたその時、京は聞きたかった事を聞こうと行動する。
「一つだけ聞く」
「なんだ?」
「……あんたの目的はなんだ?」
「それを聞いてどうする?」
「神の頭脳に神の全身をこの神奈川支部に集め、その保護をする。なんの目的があってやっている?」
「……神の人体シリーズと言われる神能力者が居る事は知っているか?」
「あぁ、ナギサから聞いた」
「全ての体のパーツ、能力が集まるとどうなるかは、聞いたのか?」
「……嫌、聞かなかった」
「……人類はそれを阻止する必要がある。特に管理する神には渡す訳にはいかない」
「そこまで必至になることか?」
「……全ての神の人体シリーズを集め、儀式を行うと神を造れると言われている」
「……あっ?」
「疑うか?」
「当たり前だろ。そんな簡単に神が造れますなんて言われて信じられるか」
「ナギサの神の頭脳を知っても、疑うか?」
京はナギサの神の頭脳の能力を思い返していた。
神の頭脳は考えた事を直ぐ様知識を得る事ができ、頭上からは光輝く脳を出現させ、その光輝く脳から光の糸のようなものを伸ばし、その糸を他人の脳に繋げると相手に情報も与えたり、記憶を書き換えたり出来る能力である事を思い返した京は考え込む。
脳、単体でこれ程の事が出来るなら、全て集まった時にはどうなるのか京には予想すら出来なかった。
「……それであんたは神誕生を阻止して正義を気取ってんのか?」
「そうだ。神誕生はなんとしても止めなければいけない事だ。俺の正義と言う名の信念にかけてな」
「……で、俺みたいな男に神の全身を任せる?」
「神の全身と言う名の時点で分かるだろ。あの発光を続ける者が神の器、嫌体となる」
「……はっ?あの訳も分からない奴が?」
「そうだ」
「……365日、24時間なんて無理だ。俺はナギサを守っている」
「君はチーム[リベンジャー]に率いているだろ?」
「あいつろに任せろと?」
「他に頼れる者、しかも実力があるなら誰でも構わない」
「……一日はくれるんだろ?」
「あぁ、答えを待ってるぞ」
和真はそれだけを告げると部屋を後にする。
和真と入れ違いにナギサと無表情な少女が入ってくる。
「京、大変だよ!」
焦るナギサを見て、慌てて京は駆け寄る。
「どうした?」
「……ここに居ないチーム[リベンジャー]の全員がチーム[ハンド]と戦う為、配置されたみたい」
「何であいつらが?」
「東京本部では今、チーム[ヴァルハラ]の攻撃を受けているらしいの。それで神奈川支部の最高戦力チーム[アサシン]を出動させたみたい」
「……チーム[ハンド]って言えばー」
「うん。管理する神の日本を拠点とするチーム[ゼロ]の女性だけで結成されたチームだよ」
「あいつらでなんとかなるのか?」
「出来ない。絶対に」
京は言い切ったナギサのその言葉に動揺する。
ナギサのその説得力は京にとっては凄まじく、その言葉だけで京は一瞬で判断する。
「俺も行く。それなら、どうだ?」
「京の戦闘力なら問題無いけど」
不安そうな表情でナギサは神の全身を見つめる。
そんなナギサを見て京はため息を溢す。
「……そう言えば、こいつの監視役を見つめる約束だったな」
「そうだよ。それに……」
言葉を詰まされたナギサのその続きを京は理解出来ていた。
ここには、神の全身を守る事は勿論だが、何よりも京が守らなければいけないのは、ナギサだった。
管理する神に命を奪われそうだったナギサを守ると誓った京が最も優先するのはナギサの命の安全のみだ。
ここで京が屋敷を出て、戦いに乱入するとなると、ナギサや神の全身を連れていける訳も無い。
しかし、ここに置いていけば身の安全は保証されない。
そんな状況では京は動く事は出来ない。
「京?」
京の様子からナギサは心配そうに声をかける。
ナギサに心配かける事をしたく無い京は咄嗟に答える。
「何でも無い」
京は何事もなかった様にソファーへと向かう。
「京。京は私に縛られる事なく、行動して」
「なんだよ、それ?」
「……苦しそうな京を見ていたら、分かるよ」
「……俺の表情なんか見なくても、神の頭脳で分かるだろ?察してくれ」
「能力なんか使用しなくても分かるよ。京の事なら」
「……なら、俺がどうしたいのか、分かるのか?」
「……能力を使えば直ぐにでも……能力を使って無いから、京がどうするのか分からないけど……嫌、無くても分かる。私の時と同じでしょう?」
ナギサのその言葉を受け、改めて京は考え直す。
「俺は……」
京はナギサとの出会いを思い出すとフッと思わず笑みを溢す。
「そうだな。おまえの言う通りだ。ナギサ。俺はまた同じ事を繰り返す」
「……出来るよ。京は私を救ってくれたもん」
「だったら、また救えるな。お前を救う事に比べれば全てが楽に感じる」
「……じゃあ、しっかりと救ってね。私達もついていくから」
「待ってれば良いだろ?」
「そしたら、京は心配するでしょ?」
「……好きにしろ」




