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神が宿る世界でー外伝ー能力者が行き交う世界で  作者: 斑鳩
第1章 神の全身(ゴッド・ボディ)
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猛毒蝶羽(ポイズン・バタフライ)

山梨支部の外の山奥、渡辺京はそこに居た。

京がここに来た目的は手元にある二枚の写真にあった。

この二枚の写真に映る二人の男女はチーム[プロダクション]のリーダーディジーによって造られた人間だと言う事だけの情報しか持たない京はただ足を進める。歩いても歩いても、景色が変わる事は無く、京の表情は次第に疲れによって歪んでいく。

重い足取りで歩く京は写真を確認する。

二人とも造られたとは思えないと京は思いながら足を進める。


(ナギサも造られた人間なんだよな……クローンや人造人間とは違い普通の人間として誕生させるディジーってどんな奴なんだ?)


京は純粋にディジーに興味を抱く。

そんな考え事をしていた京は一人の少女に気がつく事無く、通り過ぎる。

無表情な黒髪の少女は真横を通りすぎていく京を止める事無く、正面を見続ける。そんな少女であった自身の使命を果たす為、振り返り、京の姿を確認する。


「……何の用?」


自身の存在に全く気がつかなかった京に話かける。

声をかけられた事によって京は振り返りようやく、少女の存在を認識する。

そんな少女の姿を見て、京はどこかで見たような顔だなと思いながら、手元の写真を顔に近づける。

二枚ある写真の内の一枚の写真に写る少女と目の前で無表情なまま立ち尽く少女の姿が同一人物である事を把握した京は警戒心を強める。


「……お前達を拘束しに来た」

「拘束?」

「あぁ、造られたお前たちだ。地下に送りエネルギー源にするらしい」

「……エネルギー源?」

「……何も知らないらしいな」

「私は研究所に近づくものを始末しろとしか教わってない。後、日常生活に必要な事だけ」

「……それじゃ、俺を殺すんだろう?」

「……それが任務」

「そうか。俺も任務でね。あんまり女は攻撃したく無いが、仕方ねぇ」

「話、長い」


無表情な少女は背中から黒い蝶の羽を生やす。

その黒い蝶の羽は無表情の少女の背丈よりも大きく、常に羽が動いており、目視出来る程、燐分(りんぷん)が舞い始める。


(……確実に魔法じゃないな。と、なると能力か異能力か?……あれ?)


京は異変に気がつく。

視界が狭くなり、思考がまとまらずに、ろくに考える事が出来なくなる。

それどころか、体が痺れ、自由を奪われた京は抵抗出来ずに地面に倒れる。

訳も分からず、京は這いつくばりながら、上を見上げる。

無表情だった少女は不適な笑みを京に向ける。


「何でこうなったか、分からない?」

「……」

「これが私の能力、猛毒蝶羽(ポイズン・バタフライ)。私が生み出す燐分は相手から自由を奪い取る……そう自由を、最後には、死をもたらす」


無表情な少女から告げられた一言に京は死を受け入れた。

普通の人間なら、死の淵に追いやられれば足掻くものだろうが、京はそれをしない。

薄れていく意識の中、京は無表情な少女をどう倒すか考えていた。


ーーーーーーーーーーーーーー


京は気がついた時に山道に立ち尽くしていた。

京は辺りを見渡し、ここに来た事があることを認識する。

地獄戻り(デッド・リターン)

死んでから一分~五分前に戻る事が出来る能力である。

時間の調整は京は出来ず、能力の事もあまり理解していなかったが、ナギサと出会った事で、地獄戻り(デッド・リターン)の知識等、ナギサの半生等の知識を与えられ、更に地獄戻り(デッド・リターン)で死ぬ度、地獄を経由してから戻る事をナギサから知識を共有した事で能力向上(レベルアップ)を果たし、六道輪廻へと進化を遂げた。

そんな京は一度の死を受けた情報から行動を開始する。

まずはこのまま歩き、再び無表情な少女の元へと歩いていく。


「……何の様?」


無表情な少女の前で立ち尽くした京に無表情な少女は疑問を京にぶつける。


「……拘束しに来た」

「……そう」


無表情な少女は不適な笑みを浮かべると背中から自身の背丈よりもデカイ蝶の羽を生やす。


(猛毒蝶羽(ポイズン・バタフライ)か。……なにが来ようが、構わないが)


京は全身から黒いオーラを漂わせる。

そんな京の姿を見て無表情な少女は困惑する。


「……悪いが燐分は吹き飛ばさせて貰う」


京は全身から溢れる黒いオーラを右手に凝縮させる。

地獄戻り(デッド・リターン)の能力は能力向上(レベルアップ)をすることで六道輪廻へと進化させる事が出来る。京の全身を覆うこの黒いオーラは六道輪廻の人間道の力によるものだ。

地獄戻り(デッド・リターン)によって何度も死に、地獄を経由することで、六道輪廻の力は高まりつつあり、人間道の力は絶大である。

人間道の黒いオーラは人間以外の全てを弾き、無効にする事が出来る。

京はこの人間道の力を使って、ブラックホールを弾き飛ばした事もある。

そんな人間道の力を凝縮させた黒いオーラを無表情な少女に剥けて放つ。

蝶の燐分が漂っていたが、京が放った黒いオーラによって燐分は吹き飛ばされる。燐分を吹き飛ばした黒いオーラは無表情な少女の体にも直撃する。

しかし、人間道は人間以外の全てを弾き、無効する事ができ、人間へのダメージは低い。しかし、無表情な少女は簡単に吹き飛ばされる。

そんな無表情な少女を見て京は能力だけで、本体は大した事がないと、期待はずれな事にため息を溢す。京としては戦闘を通じて力をものにしようとしていたが無表情な少女との戦闘ではそれが望めない事に京はつまらなそうな表情で無表情な少女を見つめる。


「……何が起きているの?」


無表情な少女は何が起きたのか理解出来ず、呟く様に告げる。


「……人間が振るう力は俺の法の前では無力だ。人間の常識は捨てておけ、俺が立つこの戦場では地獄の法だけが絶対だ。そして、地獄の力を振りかざす、俺だけが許されるこの理不尽な力を」

「……その地獄の力って万能じゃない」


無表情な少女は体を起こし、京の前で堂々と告げる。

無表情な少女は京には勝てないと思いながらも、黙る事はせずに強気に告げる。


「燐分は吹き飛ばせても、この蝶の羽は私の背にあるまま。その地獄の力はに、出来ない事もあるみたい」

「……あぁ。それ程万能じゃ無いからな」

「だったら、勝機はある」

「……そうか」


この状況で無表情な少女から勝機があると言われても京には関係の無い事だ。六道輪廻とゆう能力の一部は教えたが、京には能力向上(レベルアップ)前の地獄戻り(デッド・リターン)があり、死んでも元に戻る事が出来る能力もあるため、京には余裕しか無い。

無表情な少女は背にある黒い蝶の羽を羽ばたかせる。

蝶の羽からは黒い燐分が舞い、京の元へと向かっていく。

黒いオーラを全身から放出している京は黒いオーラは勢い良く放出させる。黒いオーラは黒い燐分を無効にしながら無表情な少女の元へと向かっていく。無表情な少女は蝶の羽の羽ばたかせ、空へと飛行して回避する。

そんな動きを予想していた京は右手に圧縮させていた黒いオーラを飛行を始めた無表情な少女に向けて、放つ。

飛行始めた無表情な少女は京の放った一撃に気がつく事に遅れたことによって回避出来ずに直撃してしまう。

撃ち落とされた無表情な少女に京は近づく。

全身から黒いオーラを放出している京は無表情な少女の首もとを掴む。


「このまま、人間道のオーラを浴びつつければ、想像も出来ない苦しみを伴うぞ」

「……貴方のその言葉を信用するにはー」

「信用なんて要らない。人間道、すなわちこの世界は四苦八苦があるとされる。俺の人間道は人間を殺す事が出来ないが、苦しみを与えるだけだ。ナギサ(あいつ)の話によれば人間道は苦しみだけでなく、幸せも少しだけだが与えるそうだ。それが人間道だ。苦しみを味あうか、それとも」


京はポケットから無表情な少女の写真と共に鋭い眼光の男の写真を無表情な少女に見せつける。


「……この写真の男の元へと案内するか、選べ」

「研究所なら案内する」

「……そうか」


無表情な少女は研究所を守る為に戦いを続けるだけの存在と言っても過言では無い人物だ。そんな無表情な少女が簡単に研究所への案内をすることに京は戸惑いながらも無表情な少女の後に続く。

罠があったとしても京には関係の無い事だ。何があろうとも京は止まる事はしない。


「……ここが研究所です」


無表情な少女が案内したその研究所は清掃が行き届いて、現在も頻繁に使用している事が伺える。

研究所よりも高い木が生い茂っており、辺りは暗い。なのに、研究所には明かりが全く無い。木の間からは日の光が差し込んでおり、監視カメラ等も目視できる。

京は監視カメラを見つめる。


「ここの防犯はどうなっている?」


監視カメラを凝視する京は監視体制に疑問を持つ。

そんな京に対して無表情な少女は淡々と答えていく。


「現在はこの研究所には誰も居ません」

「……どうゆう事だ?」

「この研究所は捨てられたと、ゆう事です」

「いつだ?」


京は疑問に思っていることを無表情な少女にぶつける。

この任務は無表情な少女と、眼光の鋭い男を捕らえる事を目的とした任務で、男の居場所はこの研究所となっていた。もしも、この任務前からこの研究所が機能していなかった場合、任務を与えた者の失態とゆう事になる。


「今日です」

「今日?」

「はい。チーム[ヴァルハラ]と共にチーム[プロダクション]のおおよそのメンバーは後にしました」

「チーム[プロダクション]……ディジーも居たのか?ここに」

「居ましたよ」

「……そうか。それじゃこの写真の男も一緒に行ったのか」

「彼はチーム[ジャンク]として行動していますよ」

「……別行動をしているのか?」

「はい」

「……それでなんでお前は取り残されている?」

「……私の存在は誰からも必要とはされませんから」

「……なら、俺と来い」

「……えっ?」

「チーム[リベンジャー]は人手不足だ。手伝え」

「……はい」


ーーーーーーーーーーーー


「京、お帰り」

「……あぁ」


笑顔で出迎えるナギサに対して京はぶっきらぼうに答える。

ぶっきらぼうでも答えが返ってきた事にナギサの笑みは更に増す。

そんなナギサは京の背後に居た無表情な少女の存在に気がつく。


「京、後ろの人って」

「……チーム[リベンジャー]に入れる」

「……そっか。京がそうしたいなら、私は良いと思うよ」

「そうか」


それだけを言い残し、京は自身の部屋へと向かう。

京が部屋へと向かっているその最中、残されたナギサは無表情な少女に笑みを向ける。

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