神の阿修羅(ゴッド・シックス)
京と対峙していた案内を務めた青髪はその部屋に一つだけあった椅子に腰かける。
「客人を立たせるのが、ここのルールか?」
「ルール?そんなものは無いよ。座りたいから座ったのさ。良かったら、代わろうか?」
「断る!」
「だったら、何も言わないでくれよ。それよりももう一度約束してくれよ。君が勝ったら、チーム[リベンジャー]に加えてくれよ」
「ナギサが認めたらなぁ」
「……そんなに信用しているのかい?」
「この世のあらゆる知識を持つ神の頭脳の言葉なら信用出来る」
「そうか。うちにも神の知識が居てね。彼女の言葉は信用しているよ。この戦いの後、チーム[ジャンク]は救われるって言うけどどうなるんだろ?」
「知らねぇよ。さっさと始めようぜ」
「随分とやる気だね」
京のその言葉を受け、男は椅子から立ち上がる。
「一応、チーム[プロダクション]のリーダーディジーに造られた中でも、上位に食い込むとされる神の阿修羅の力見せてあげるよ」
「早くしろよ。でないと、俺が見る前にお前は終わるからな」
京は右手から黒いオーラを放出させ、それを維持させる。
「黒いオーラ。随分とどす黒いね。一体その黒いオーラはどういったものなのかな?」
「俺が大人しく喋るとでも?」
「……それは無いよね」
「正解だ!」
京は右手に維持させていた黒いオーラを男に向けて放出させる。
男は避ける事なく、迫り来るその黒いオーラを受けてたつ。
「……この黒いオーラは地獄属性以外の全てを無力させるだけでは無く、凄い攻撃力を持つみたいだね」
男のその言葉は事実である。だからこそ、一瞬で見抜いた男が洞察力の高さに京は戸惑っていた。
京の能力は地獄戻りであり、京の死が確定するとその死後から約一分~五分までのランダムな時間に戻る事が出来る。その際に地獄を経由して戻ってくる。そんな能力の能力向上は六道輪廻である。地獄を経由している事を理解し、それをものにしている京だからこそ、六道輪廻の力を最大限引き出す事が出来る。
京の右手に覆われた黒いオーラは六道輪廻の一つ人間道の力である。人間道の黒いオーラは地獄属性以外の全てを無効化出来るが、京の力量によって、無効化出来ない事もある。つまり相手が格上の場合無効化出来ない。
「……一目見て、見抜くとは……大した洞察力だな」
「……実は、神の知識がここを出る前に教えてくれたんだよ」
男のその言葉を受け、今まで感心していたが、今は軽蔑へと変わっていた。
そんな京の変化を京の表情から察した男は笑みを溢す。
「どうかした?」
「何でもねぇ」
そう答えた京は右手に纏わせていた黒いオーラを更に放出させる。
京は右手を前に突き出し、右手に纏わせていた黒いオーラを男に向けて、放出させる。男は再び迫り来る黒いオーラをまた避ける事なく、立ち尽くしていた。
「……このまま何度やっても同じ結果になるだけだよ」
「その様だな。地獄属性以外を無力化させるだけなら、何も思わねぇが、この黒いオーラには攻撃力もあるんだ。そんな黒いオーラを受けても何も無いなんて、それがお前の神の阿修羅によるものみたいだな」
「……流石に、隠しきれないよね」
黒いオーラを放っても男によって、無力化される事実がある以上京は戦闘方法を変える必要があった。
京は右手だけに黒いオーラを纏わせていたが、左手にも黒いオーラを纏わせる。
「……ただ手から放出される大量な黒いオーラを纏わせるを止め、微少な黒いオーラを纏わせる。それだけ見れば、黒いオーラを放出させる攻撃方法は止め、殴りかかって来ると教えている様なものだよ」
「知られようが、変える事はしねぇ」
京は走りだし、男に殴りかかる。
両手を使った京のその攻撃は男に完全に見切られ、全てかわされる。
「……その黒いオーラは魔法、能力、異能が地獄属性でなければ、全て無力化出来る素晴らしい力だ。でも、完全ではない。当たらなければ意味は無いし、君よりも実力のある人間には全く意味を成さない」
京の攻撃をかわしながら、男は余裕を見せながら語りかける。
「黙れ!」
京が黒いオーラを纏わせた右手で男に殴りかかる。
男は京のその攻撃は避けずに、立ち尽くしていた。
(避けないのか?……だったら、これで終わりにしてやるよ)
京は右手に纏わせていた黒いオーラを大量に放出させ、男に殴りかかる。
京の右手は男に届く前に男の右肩から伸びた光輝く手によって、止められていた。
「これが神の阿修羅。体の至る所から六本の腕を出現させる事が出来る異能だよ。神の人体シリーズの左手を造ろうとした過程で造られた個体が得たのがこの異能さ。この光輝く手は二メートルまで、触れた魔法、能力、異能を無力化出来るんだ。そして、この光輝く手はあらゆる武器にも変化させる事が出来る」
「わざわざ、説明する必要があるのか?」
「……久しぶりの戦闘で舞い上がっているのかな。自分でも分からないな。説明した理由なんて」
「そうかよ」
京は右手に纏っていた黒いオーラを激しく放出させ、それを維持する。
その黒いオーラを見て、男はため息をつく。
「どれだけ、その黒いオーラを放出させても、それを無力化出来る以上無駄に終わるよ」
「だったら、やってみろよ」
京は右手に維持させていた黒いオーラを男に向け、放つ。
「残念だよ。それは無力化出来るよ」
迫り来る黒いオーラを男は背中から生やした二本の手で受け止める。
それと同時に黒いオーラをかきけす。それと同時に男は背中から二本の手の平から新たに光輝く手を生やし、その新たな光輝く二本の手で京の両手を掴むと、勢い良く、京を左壁へと投げつける。
「いい忘れてだけど、生やした手からも生やす事も出来るよ。言うのが遅かったかな」
「……いちいち、言う必要はねぇよ」
壁に投げ飛ばされた京は立ち上がると黒いオーラを右手に纏わせる。
「……何度やっても、無駄だよ。神の阿修羅は神の人体シリーズの右手を出現させる事が出来る荒川玲愛の情報を元に管理する神が造り出したのが、神の阿修羅って訳さ。元々、違う異能を持っていたけど、儀式によって、無理矢理、奪われ、その変わりに神の阿修羅を体内に入れられたんだよ」
「それがなんだ?」
「神の阿修羅は荒川玲愛を元に造られたって言っただろ?本当は神の人体シリーズの左手を造ろうとしたんだが、出来たのが、左手にもなれず、右手にも及ばない異能。皆、呆れ、別の研究へと移り変わった。ディジーからも必要ないと言われ、チーム[ジャンク]を造る事にしたんだよ。造るだけ、造っておいて、捨てられた文字通りジャンク達の集まりさ」
「そんな話を聞いて同情なんてしねぇぞ」
「する必要も無いさ。ただ知って欲しいんだ。ディジーに造られた者で管理する神にのこれる者は少ない。その多くは皆殺されてきた。それ以外は別の利用価値のあるものや誰かに救われたり、脱走等した者だけが生き残ってこれた。君の救ったナギサも君が居なければ死んでいた筈だ」
男のその言葉を受け、京は暫く考え込むと、考えていたその言葉を告げる。
「何故、ナギサは殺されそうになった?あいつは頭から光輝く脳を頭上に出現させる事が出来た。それはつまり、あいつが神の人体シリーズの脳のパーツを持っているって事だろ?」
「……神の阿修羅と同じだよ。体から光輝く人体の一部を出せる事が出来てもオリジナル、コピーが存在している」
「つまり、ナギサはコピーだと?」
「そうなるよ。コピーのほうが圧倒的に多いからね」
そう告げた男は背中から光輝く六本の手を出現させる。
その出現された光輝く手は京の黒いオーラを無力化させる事は京が一番理解していた。
「……君の置かれている状況を分かりやすくしたよ。この状況を覆す事が出来るのかな?」
「……やってやるよ」
京は背中から白い翼を生やす。
京の六道輪廻はまだ地獄から得た力があまりなく、自由に扱えるのが、人間道と天界道である。人間道による力が効かない以上、京は天界道を使うしかなかった。
人間道は黒いオーラを自在に操り、その黒いオーラに触れた地獄属性以外の魔法、能力、異能を無力化する事が出来る。それに対して天界道は白い翼を生やし、白いオーラを操れる様になる。この白いオーラは天使属性以外の魔法、能力、異能の発動、発動した後に起きた事を元に戻す事が出来る。
「……地獄の力を振るうのに、それじゃまるで天使じゃあないか」
「そんな大それたものじゃあねぇよ。俺は勝てる力が手に入るなら、悪魔でも天使でも、地獄でも、天国でも構わない。この力でお前に勝てればそれで良い!」
「……それじゃあやってみると良い」
京は男との距離を保つ為、白い翼をはためかせ後ろへと飛行を初める。
「……成る程ね。距離を保ち、上に飛んでいれば光輝く手に捕まれる事は無いからね」
京のその行動を冷静に見続け、男は直ぐ様行動に移す。
男は六本出現させていた光輝く手を一本だけ残し、全て消し去る。
男は一本だけ残った光輝く手に京に向けて伸ばす。京との距離もあって、その手が届く事はなかった。しかし、光輝く手の平から光輝く手が新たに出てくる。それを一瞬にして四回繰り返し、男の移動もあって、京に届く距離まで達していた。六本目の光輝く手は剣へと変化させ、それを振るう。
京は白いオーラを放ち、光輝く剣を防ぐ。
お互いに力が反発し合い弾かれる。
「……神の阿修羅の弾いた?」
「……天界道のオーラをものともしないだと?」
お互いに予想もしていなかった事に戸惑いを隠す事なく、激しく動揺していた。直ぐに冷静さを取り戻した男は再び光輝く剣を京に目掛け、振りかざす。京は慌てて、右手に白いオーラを放ち光輝く剣と再び接触する。
結果はさっきと同じだった。
「……やっぱり、無理か」
「ちっ。これじゃあ、勝負がつかねぇじゃあねぇか」
お互いに力が反発し合う事を再確認をして、お互いに理解した。
お互いのその力では勝負を決める事は出来ないその事実を、そしてお互いの攻撃は全く効かないその事実がある限り、この勝負は決まる事はない。




