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神が宿る世界でー外伝ー能力者が行き交う世界で  作者: 斑鳩
第5章 神の阿修羅(ゴッド・シックス)
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方向操作

男が神の擬態(ゴッド・ミミック)によって、隆起した地面を剣にしてそれを握ると、ゆっくりと歩き始める。


「勝負ありかな?」


地面で造られた剣を握った男は警戒することもなく、大地の元へと近づいていく。


「……君には悪いけど、もう勝ち目は無いよ」

「まだだ!」


大地は右足を、地面に強く積みつける。地面方位(グランド・コンパス)によって、男の周囲の床を突き破り、地面を隆起させる。

男は手にしていた地面で造られた剣を隆起した地面に触れさせる。

それによって、神の擬態(ゴッド・ミミック)が発動する。

隆起した地面は元に戻っていく。


(……これで、理解できたろ?地面を隆起させたり、隆起させた地面同士で挟み、圧殺しか出来ない能力では俺の能力によって、元に戻す事が可能だ。この時点でこの勝負はついた)


勝負を確信した男に対して、大地はずっと考えていた。


「浮かない顔をして、どうした?」

「少し、考えていた」

「……何を?」

「お前を倒す事を」

「無駄だよ。君がどれだけ、地面を隆起させても、俺の能力で無力化出来る事を君を見ただろ?」

「隆起させた地面はな」

「……何をするつもり?」

「例えば、地面同士を振動させ、地震をおこす事も出来る。お前の能力は触れる事が発動条件となっているんだろ?」

「……見えない所で、やるのが、君の策か?だったら、無駄だと思うよ。だって、地面をおこすにしても、この周辺を揺らすんだろ?だったら、この距離に居る君にも被害が及ぶだろ?」

「そうだ。それは分かっている。だからこそ、俺はお前に勝つ方法を思いついた」

「……どんな?」

「それを……見せてやる」


大地は走り出すと、殴りかかる。

そんな大地を見た男は冷静に対処していく。男は手にしていた地面で造られた剣で大地に切りかかる。


(なんだ?何で、俺は逆方向に切りかかっている?)


男が振りかざしたその地面で造られた剣に当たる事なく、大地は己の拳を男の画面にぶつける。大地の拳を避ける事の出来なかった男は後方の壁まで吹き飛ばされる。


「お前は勘違いしている」

「……勘違い……だと?」

「俺の地面方位(グランド・コンパス)は地面を操作するだけでは無い。俺と同じ地面、床に触れていれば、その対象の居場所も分かるし、おおよその特徴や力の強さも分かる。そして、俺と同じ地面、床に触れている相手の方向感覚を狂わせる事が出来る」

「……そう言えば、そうだったな。君の能力については聞いていたけど、忘れていたよ。だって、君は地面操作しか使ってこなかったから……嫌、言い訳だね。でも、わざわざ、教えてくれなくても良かったのに」

「……お前から神の擬態(ゴッド・ミミック)について聞いたからな。これで痛み分けだ」

「そんな事を気にしていたのか。最初に言った筈だよ。君の能力については聞いていたって……でも、構わないさ。もうお互いに何も気にすることは無い。続きをやろうか」

「そのつもりだ」


リーチのある地面で造られた剣を握る男だったが、方向操作の出来る大地なら、男の方向感覚を奪いまともに戦わせない様にすることは簡単な事だった。だからこそ、大地の行動には何の迷いも無い。

大地は右拳を握ると、走り出す。男はこのままでは、さっきと同じ結果になる事に気がつくと考え込む。

男の間合いに入った大地は男の方向感覚を狂わせる。

これによって、男はまともに動くことは出来ないだろう。それは大地も理解していた。だからこそ、大地は何の躊躇もなく、殴りかかる。

方向感覚を狂わされ、まともに対応の出来ない男は、自身の周辺の地面を隆起させる。それと同時に床を突き破り、地面が男を取り囲む。

急に隆起した地面に驚き、対応の遅れた大地は右拳を止める事が出来ずに、隆起した地面へと右拳を当ててしまう。


「ぐぅ……」


大地は後退りしながら、距離を取る。


「方向感覚が分からなくても、俺の周辺の地面を隆起させれば、君の攻撃は防げる。君には攻撃する方法は拳だけだからね。その拳だけでは、地面は破壊出来ないよ」


男の話を聞きながら、大地は痛めた右拳を左手で覆っていた。


「……痛いだろ?」

「あぁ。……もう地面は殴りたくは無いな」

「……殴る攻撃手段しか無い君がそれを捨てて、どう戦う?」

「いつ捨てると言った?」

「……痛めたその拳は使い物にならないって君も理解しているだろ?」


(強がったけど、俺の地面方位(グランド・コンパス)の地面操作より、奴の神の擬態(ゴッド・ミミック)の操作する力のほうが強い。あいつが隆起させた地面は俺では操れない。しかし、俺が隆起させた地面は奴の能力で簡単に操作が出来てしまう)


お互いに相手の行動を観察しながら、相手の様子を伺っていた。

最初に動いたのは、男のほうだった。男は大地の周辺の地面を隆起させ、大地の動きを封じた。逃げ場を失った大地はとっさに目の前に隆起した地面をよじ登る。そんな大地の行動を予測していた男は手にしていた地面で造られた剣を投げつけていた。

大地の能力である地面方位(グランド・コンパス)は大地の足、片足でも地面に触れていれば、発動出来る能力である。隆起した地面をよじ登った大地の足は全く触れていない状態である。そんな大地は今、能力が発動出来ない。大地は飛んでくる地面で造られた剣を痛めた右拳で粉砕する。

もう使い物にならないなら、この右拳を有効に使うと考えたその大地の行動は地面で造られた剣を投げた男も予想していない事だった。

地面で造られた剣は切断能力はなく、大地は右拳を切断することは無かったが、拳を潰す事には成功していた。大地は右拳の痛みを我慢しながら、囲まれていた隆起した地面から離れ、男の元へと走り出す。

男は慌てて、地面を隆起させ、大地の進行方向を塞ごうと試みる。

しかし、男が隆起させようとした場所ではなく、全く見当違いな場所の地面が隆起する。


「何?……そうか、方向感覚を狂わせたか」


男は今起きているこの現象を見て、直ぐに大地の地面方位(グランド・コンパス)によるものだと把握した。そして、男は方向感覚を狂わされた事によって、地面を隆起させても、見当な場所を隆起させる事になる。

だからこそ、男は無駄な行動をしない事に決めた。

男は方向感覚を奪われても、大地の攻撃を凌げる方法として、男は再び自身の周辺の地面を隆起させ、大地の攻撃を防ぐ事に決めた。方向感覚を奪われても、自身の周辺の地面を隆起させるこの方法なら、方向感覚がなくても、ただ自身の回りの地面を隆起させるだけで済むので何の問題もなく、やることが出来る。だからこそ、男は自身の回りの再び隆起させる。しかし、男がそう来る事は大地も予測出来ていた事だった。

男の回りを隆起した地面を大地はよじ登り、大地は隆起した地面の中心に居る男に目掛け、大地は蹴りを入れる。

大地に蹴られた事によって、男はよろけていたその瞬間を大地は見逃さなかった。大地は痛めた右拳ではなく、左拳で男に殴りかかる。

男は自身が隆起させた地面へと激突する。それと同時に隆起した地面は元へと戻っていく。隆起した地面に体を預けていた男はそれを失い床へと倒れ込む。


「能力が維持出来なくなったな。この勝負俺の勝ちだ!」

「……そうだな」


大地のその言葉に反論する事なく、男はその結果を受け入れた。

男のそのあっさりとしたその答えに大地は戸惑っていた。


「随分とあっさりとしているな」

「だって、もう勝ち目ねぇよ。降参だ。殺さないでくれ」


男は寝転びながら、大地に告げる。

そんな姿から男の告げた言葉が本心なのか、大地にも分からなかった。


「……で、殺すのか?」


大地の返答を待ちきれず、男は問いただす。


「殺さん。必要無いからな」

「そうか。一つ聞いても言いか?」

「なんだ?」

「君の所のリーダーは勝てたかな?」

「勝ったさ。そうでなければ、チーム[リベンジャー]はやっていけない」

「勝てれば、良いがな」

「そんなに強いのか?」

「強いよ。あいつは……神の人体シリーズを造ろうとしたディジーによって、生み出された男だからな」

「ディジー……本当に人間を造れるのか?」

「あぁ。君が今見ているものも造られているよ」

「お前も?」

「あぁ、ディジーの異能は必要なDNAさえあれば、人間を造り出す事が出来る」

「それだけで?」

「それが怖い所だ。毎日、こうしている間も人間は造られている。クローン等とは比べ物にならない程完成された人間を簡単に造ってしまう」

「だったら、望んだ人間が造れるのか?」

「DNAがそれと一致すればな。君はこの世に男が何人、女が何人か正確に把握しているのか?」

「正確な数なんて分かるわけも無いだろう」

「確かに分からないよね。でも、その組み合わせの分だけ人間の可能性がある。一人の女性が同じ男性との子供の身籠っても全く同じ人間を女性は産む事は出来ない。それと同じさ」

「それじゃあ、望む人間を造るのはむずかしいだろう?」

「だからこそ、何度も繰り返すのさ」

「……俺には分からないな」

「それが普通だ!」

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