チーム[ジャンク]
神の知識の能力者である少女が神奈川支部防衛局内にあるチーム[リベリジャー]が拠点とする屋敷に侵入したこの頃、別の任務によって、渡辺京と萱沼大地の二人は現在、山梨支部のとある教会の目の前に居た。
「この教会を仕切っているのが、チーム[ジャンク]なのか?」
大地のその発言に隣に居た京は苛立ちながらも答えた。
「最初にそう説明を受けただろうが!」
「そうだが、何でチーム[ジャンク]は教会を建て、そこを居場所としたのか、疑問でな」
大地のその疑問は、京も思ていた事だった。
そんな京の口から出たのは
「知らん」
その言葉には嘘は無い。今回の任務はチーム[ジャンク]が拠点とする教会への侵入であり、京と大地のその疑問は教会の目の前で解決出来る問題では無いことは確実に言える事だ。
「……さっさと、入るぞ!」
教会に入ろうとする京を大地は慌てて、止める。
「簡単に入れるのか?」
「……ここに来る前にナギサが何も言わなかった。つまり、何もしなくても入れると言う事だ」
「しかし」
「だったら、お前はここに居ろ」
京はそう言い残すと教会内に入っていく。
大地は京の背中を眺めながら、覚悟を決め、京の後へと続く。
「静かだな」
「あぁ」
二人が教会内を物珍しそうに歩いていると、一人の女性が近づいてくる。
「……随分と若い女だな」
京のその言葉に大地も共感する。
「……あぁ、シスター服も来てないし、なんか変な感じもする」
「下らねぇ。お前の人を見る目があるとは思えないしな」
「……これは俺の能力によるものだ」
「能力?」
「忘れたか?俺の地面方位は地面操作に加え、地面に接触しているものの、把握と方向感覚の操作が可能な能力だぞ」
大地の能力を再認識した京は大地の告げた言葉が気になっていた。
しかし、大地への信頼は全くしていなかった、京は聞くか、悩んだが聞くことにした。それを信用するかは聞いてからにして
「で、何が変なんだ?」
「……あの女からは様々な人間の気配を感じる」
「そうか」
「随分とあっさりとしているな」
「聞く必要も無かったと思っただけだ」
「そうか……色んな人間の中にナギサと同じ気配もしたんだが」
その言葉は京は激しく、同様する。
「何で、そこでナギサが出てくる。一体どう言う事だ?」
「俺だって、戸惑っている。同じ気配をしている人間なんて今まであった事は無いんだからな。嫌、ナギサとナギアは近いものがあったか」
「で、ナギアとナギサだったら、どっちの気配に近い?」
「ナギサだ。間違いない」
大地のその言葉をを聞き入れた京は迫り来る女性に目を向ける。
女性は笑みを浮かべると、京の目の前で立ち尽くす。
「……はじめて見る顔ね。私は神楽、この教会の案内を行う者よ。それで、何の用ですか?」
「……この教会には未来を見る神父が居るとかって聞いたんだが、見てくれないか?」
「予約は?」
「していない」
「……では、ここでお待ち下さい。確認を取りますので」
「あぁ」
神楽の姿がその場から見えなくなると同時に大地の口は開く。
「本当に居ると思うか?」
「何がだ?」
「未来を見る神父だ!」
「ここに来る前に聞いたのは、そんな噂があると言う話だけだ。俺はそんな事は信じないがな」
「どうしてだ?」
「未来が見えるなら、俺達が侵入する前に対処出来た筈だ」
「確かにな」
二人が居るか、居ないか分からない未来を見通す神父の存在を疑っていたその頃、神楽はとある部屋の前に訪れていた。
そんな部屋の前で神楽がノックをしようとしたその時、
「待て!」
その声によって、神楽の体は硬直する。
「……貴方が教会に居るなんて珍しいわね」
神楽は黒髪の男を睨みつけながら、告げる。
「たまにはなぁ。チーム[ジャンク]のリーダーとして、ここは守らないとな」
「リーダーとしての自覚があったのですか?」
「意外にもあるんだよ」
「それで、今回は何の為に戻ってきたの?」
「今日、面白い事が起きると聞いてな。神の知識から」
「あの子、何を考えて」
「どうでも良いだろ?ディジーによって、造られた欠陥品の俺達チーム[ジャンク]は自由を認めるものだ。あいつもお前も俺もそれぞれの自由があっても良いだろ?」
「自由がなんて無い。この部屋には何があるのか、分かっているでしょ?」
「理解している。だが、この部屋には今日は入るな。それから、今日の神父役は俺がやる」
「何を言っているの?」
「お前には俺を止める術は無いだろう?それに、中々、面白い奴みたいだしな」
神楽には男を止める事が出来ない事から、止めるの止めて、その場から立ち去る。
「神楽。お前は知らないこの部屋はただの予知をする機械を置いているだけだと認識しているだけのお前はこの部屋の真実を知る事は出来ない」
男は立ち去る神楽を哀れむ様に告げると、部屋の中へと入っていく。
部屋に入って、早々男は声を荒げる。
「……さっさと出てこい」
男のその声が虚しく、部屋に響き渡る。
男は苛立ちを隠す事も無く、機械の前へと向かい、その機械の前で立ち尽くす。
「おい!」
「未来を聞きに来たか?」
「……さっさと元の姿に戻れ」
「……機械にその様な事を告げるのか?」
「あぁ、お前は機械に擬態をしているだけだ。そうだろ?俺と同じくディジーに造られた神の擬態!」
その男の言葉に応じる様にして、巨大な機械は人間の姿へと変化する。
人間の姿へと変化した男は慌てて、口を開く。
「いつまで、機械の姿で居たら良いんだ?」
「いつまでだろうな?」
「他人事だと思って、未来を告げる機械なんて皆に紹介しておいて、君は殆んど教会に居ないし」
涙を浮かべながら、男に迫る機械に変していた男は次の瞬間に態度を一辺させる。
「もう嫌だ。僕は自由が欲しいんだ」
「……泣いたり、叫んだり、情緒が不安定なのか?」
「誰のせいだ?」
「誰だ?」
「君だよ。1日中機械で居るって事は何も出来ずに過ごすってどれだけ不満が溜まるか君に分かるか?」
「嫌、全く分からん!」
「だろうね。経験もした事もない君に分かって溜まるか!」
「一旦落ち着け」
「だったら、僕に自由をくれ」
「お前が、嫌、俺達が自由を手にするにはこの世の何処にも無い」
「……分かっている。親も戸籍も無い造られた僕達では不自由だろう。でも、それでも」
言葉を詰まらせた機械に変していた男に男は不適な笑みを浮かべて見せた。
「一つだけ、方法がある。神の知識が面白い未来を告げて、神奈川支部に行った」
「……どうゆう事?」
「その未来によって、中々面白い事になるぞ」
「君の言葉は信じるに値しないよ」
「お前なら、そう言うだろうな。でも、お前は知るだろう。俺達チーム[ジャンク]の一人一人を人として扱い、共に管理する神を敵に回す、そんな奴等が現れる」
「そんな奴等がこの世に居ると?」
「……俺達はいつも諦めてきた。たまには、一度位は、信じても良いのかと、思っただけだ」
「珍しいね。君がそんな事を言うなんて」
「俺達チーム[ジャンク]が教会をやっているのも、誰にも頼れず、信じられなかった者達が集まった結果の形の一つだ。それにあいつらの将来もなんとかしないといけないからな」
チーム[ジャンク]のリーダーである男から告げられたその言葉は聞いていた機械だった、男は戸惑っていた。
何故なら、彼の知るチーム[ジャンク]のリーダーを務めている男が口にする類いのものでは無いことを口にしているこの現状に男は呆然と立ち尽くしていた。
「どうした?」
呆然とする男を促す様にして、チーム[ジャンク]のリーダーは尋ねる。
「……暫く見ない間に何かあったのか?」
「何も無いさ。ただ久しぶりに信じても良いのかと思えたのさ」
「……そうか。それでどうするのかは決めているのか?」
「取りあえず、来客者に会いに行こうか」
「……分かった。俺はどうすれば良い」
「あれをやって貰う」
「あれってなんだ?」
男の問いにチーム[ジャンク]のリーダーを務めている男は不適な笑みを返した。
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待たされていた京と大地は木製の椅子に腰かけていた。
「……誰が来るだろうな?」
「……誰が来ると、言うよりも、何故待たされているのかが、俺は気になっている」
「何かの準備だろ?」
「俺達が来た事によってする準備とは何だ?」
今日のその言葉に反応する様に大地は立ち上がる。
「まさか、俺達を倒すために準備をしているのか?」
「どんな準備をした所で俺には勝てねぇよ」
「……取りあえず、誰が来ても警戒して置こう」
「勝手にしろ!」
京のその言葉を受け、立っていた大地は再び木製の椅子に腰かける。
「勝手にと、言われてもなぁ。チーム[リベンジャー]のリーダーがメンバーに言う言葉とは思えないな」
「……チーム[リベンジャー]はナギサを守る為だけに存在しているそれ以外はどうでも良い」
「どうでも良いって、俺達はナギサを守る為に動くのは勿論だが、チーム[リベンジャー]の仲間を守る為に動く!」
「それはお前の考えだろ?俺は俺の考えがある」
「人として、それぞれの考えがあるのは、分かる。しかし、リーダーなら、人をまとめるものなら、皆と足並みを揃えろ!」
「それがやりてぇなら、お前らが俺に合わせろ!」
「リーダーがそう言うなら、メンバーである俺は言うことを聞くさ。でもな。これだけは忘れるな。俺達は無償で時間や命をお前に委ねたりはしない。俺は妹の命を守る為なら、お前を裏切るし、殺しもする」
「奇遇だなぁ。俺もお前と同じ事を考えている」
売り言葉に買い言葉で京に思わず食って掛かってしまった事を気に病んで居る大地はなんとかして、京とのこの溝を埋めようと考えていた。
そんな大地とは違い己の本心で語っていた京は大地との関係をどうこうしようとは全く考えてもいなかった。
「待たせて、悪いね」
京と大地の目の前に黒いロングコートを来た青い髪の青年が現れる。
「誰だ?」
その胡散臭い笑みを浮かべる青年に敵意を剥き出しにして京は話しかける。
そんな京の問いに表現を崩す事なく、青年は答える。




