勝利の聖神剣(レヴァンティン)
少女の背から生えている白い翼から飛んでいった白い羽はリンの体へと接触した瞬間に炎に包まれ、燃え尽きる。
「……神の知識のかき消された?」
「私の勝利の聖神剣は私の不利になるものを自動的に燃やすのよ。凄いでしょ?勝利をもたらすこの剣を握る限り、私に敗北は無い」
「……面白い異能ですね。剣を握る限り、死ぬ事は無いって事ですね」
「そこまで、分かるなんて凄いね」
「貴女の口振りから、そうだと確信しました」
「だったら、勝てないと認める?……と、言っても、剣の切れ味を確かめないまま、終わらせはしないけど」
不適な笑みを浮かべたリンはゆっくりと少女の元へと歩いていく。
少女が出来るのは、後退りをして、距離を保つ事位だ。
神の知識は触れた相手の情報を得る事に加え、その情報を書き換える事が出来る能力だ。白い羽を燃やされた事によって、それが出来ない事から、勝てないと悟った少女はこの状況から最善の行動をするため、考え続けていた。
しかし、神の知識が効かない時点で少女の出来ることは逃げる事しか出来ないのは間違い無い事だ。
相手であるリンが持つ勝利の聖神剣を防御も逃れる事も難しいのは少女が一番理解していた。研究所で研究ばかりだった少女が実践等は勿論したことは無い。そんな少女が燃え盛る剣を避けられる自信は本人にも無い。
「逃げるの?逃がさないけど」
後退りする少女を見て、リンは少女を威圧しながら、近づいていく。
リンを見ながら、どう逃走するか考えていた。
神の知識によって、生えている白い翼で飛んで逃げる事も出来るが、それはリンも同じことだ。リンの背にも燃えている翼があることから飛行は可能だろう。その事から少女は飛行しての逃走を諦める。
そもそも、ディジーによって造られた少女に行く宛も無く、頼れるものも居ない。そんな少女が逃げても、生き延びるのは厳しいだろう。少女は後退りを止め、覚悟を決める。
切られ、燃やされても、もう動く事はしない。それを決めた少女にもう迷いが無い。死を受け入れた少女のその表情は清々しく、リンからしたら、気味の悪いものだった。
「……逃げないのは、良いけど。戦わないの?」
「……勝てないだろうから」
「そう。人を切る感覚は覚えられるから、良いけど」
燃え盛る剣を構えたリンは自信に満ち溢れた表情のまま、少女の首元へと切りかかる。防御も避ける事もしなかった少女はリンのその剣を受け入れる。
しかし、その剣は少女に届く事なく、止められていた。神楽の能力によって。
「誰?」
自身の攻撃を止めた面識の無い神楽にリンは存在を問い出す。
「……私は神楽。この山梨支部の外にある研究所の服所長を務めていた者よ」
「いた……過去系だね。まさか」
「そう。そこに居る子と同じく、私もこの研究所から命を狙われる者よ」
「……それで、どうやって私の攻撃を止めたの?」
「能力と言ったでしょ?私の神々の社で止めたのよ」
「神々の社?」
リンはディジーに造られた間もない事もあって、魔法、能力、異能の知識が全く無いと言っても、過言では無い程の知識しかないリンにとって、神楽の告げた神々の社の能力を知る訳も無い。
「神々の社は私が思い描いた場所に境界線を引き、その境界線を誰も越えられなくする能力よ。貴女の剣が止まったのも、境界線を越えようとしたからよ」
「つまり、私の攻撃は貴女には届かないし、私は貴女の元に行けないって事?」
「そうよ」
「……今の状態でしょ?それは」
「何が言いたいの?」
「勝利をもたらすこの剣は私の不利を焼き尽くす」
リンは手に持つ、勝利の聖神剣から大量の炎を放出させる。
「……リン。覚醒はまだ不安定でしょ?」
リンはその言葉を聞いたことに事によって、炎を止める。
「……何で止めるの?」
「覚醒は誰も見せないと約束したでしょ?」
「したけど、このままじゃあ逃げられるよ」
「もう良いわ。その二人にはもう用は無いから」
「……分かったよ」
リンは渋々、ディジーの話を聞き入れ、勝利の聖神剣を消し去った。
「貴女達は今日から自由よ。勝手に生きない」
ディジーはそう言い残すと、リンを連れ、研究所内へと入る。
外に残された二人はこれからの方針について、話し合っていた。
「これからどうしよう?」
少女のその言葉を受け、神楽はすぐに答えた。
「私達と同じ境遇の人間は少ないけど、居るわ。そのもの達と協力して組織を造ろうと思う」
ーーーーーー
「これが私の過去よ。あれから、私達はチーム[ジャンク]を結成し、活動してきた。それを踏まえて、貴女に聞きたいことがあるの。神の頭脳の能力者でもあるナギサにね」
少女のその問いにナギサは直ぐ様答える。
「……チーム[ジャンク]は今まで、阻害され、行き場も無いと思う」
「そうね。ディジー達に造られた人間達は個人情報を持たない。名前も無いしね」
「私に一つ考えがあるの」
「考え?」
「うん。チーム[リベリジャー]が住まうその神奈川支部の屋敷で住まない?」
「……本気で言っているの?」
「……私はもう見えているから。貴女もでしょ?だからこそ、それが確かなものなのか確認しに来たのでしょ?」
ナギサのその一言に思わず、少女は笑みを溢す。
「そこまで、見抜かれるなんて、驚いたわ」
「……そんな事は無いよ」
「……私の神の知識の上位互換である神の頭脳の能力者である貴女ならそれぐらいは可能よね。神楽さんにもそう言われたわ」
「神楽?」
「チーム[ジャンク]の副リーダーを務めている女性よ」
「それじゃ、リーダーは貴女?」
「違うわ。男性よ」
「……つまり、そのリーダーを説得出来なければ、私の提案は受け入れなれないよね?」
「……どうかしら?神楽はチーム[リベリジャー]との関係を持ちたいと言っていたわ」
「そこまでは理解したよ。そのリーダーの所に連れていって」
「そこまで、信用していいのかしら?」
「うん。大丈夫。そこには京も居るから」
「……もしかして……どこまで、先の未来を知識としているの?」
「……貴女と変わらない位に」
ナギサのそれが嘘である事を理解しながらも、少女はナギサの提案を聞き入れ、チーム[ジャンク]が拠点としている場所まで案内をする事となる。




