神の知識(ゴッド・ノウズ)
「まだ、玄関に」
「……私が今から手伝ったら、どうかなる?」
「……無理ですね。もう突破されましたから」
「それじゃー」
「はい。玄関の長谷川さんと衝突しています」
「分かった。私達もここから出て、玄関に向かおう」
「しかし、長谷川さんの時間稼ぎが無駄になります」
「時間稼ぎはただの口実。経験値を積んで欲しかっただけ」
「なるほど、長谷川さんには足りないものが多すぎるからね」
「うん」
ーーーーーーーーーー
玄関が開き、侵入者の姿を捉えた長谷川は警戒を強める。
長谷川の電光石火によって、高速で移動をして、拘束を考え付く。
そんな考えに至った長谷川は改めて、侵入者を見つめる。
改めて見た侵入者の背には白い翼があり、その白い翼から白い羽ぎ無数に撒き散らしていた。
白い羽の一枚が長谷川の右肩に触れる。
「……そう。電光石火によって、私を拘束を予定みたいね」
「……なんで?」
「私の能力は触れた相手の知識を全て理解することが出来、情報を書き換える事が出来る能力だからよ」
「……君の能力は凄いけど、僕の電光石火を目で追うことは出来ない。君が僕の考えが分かった所でね」
「……情報を書き換えるって言ったでしょ?」
「それが?」
「能力を使ってみたら」
侵入者の言う通り、長谷川は電光石火を発動させ、自身のスピードを極限まで引き上げ、動こうとした。
しかし、移動速度は変化する事なく、通常に走っていた。
その事実に一番驚いていたのは、長谷川だった。
「……驚いた?私の神の知識は触れた相手の情報を書き換えるって言ったでしょ?能力を書き換えて、無能力者に変える事も出来るのよ」
「……そうな」
「……無能力者の貴方にはもう出来る事は残されていない。終わりにしましょう」
「でも、無能力者にするだけ。男と女の腕力はそう簡単に覆す事は出来ない」
「そうね。でも、私の神の知識はそんな単純な能力では無いわ」
「……どうゆう意味だ?」
「情報を書き換えるってどこからどこまでか正しく認識出来ている?」
「……それはー」
「出来ていないみたいね。今活動しているその状態を書き換えれば、活動出来ない状態へとなるのよ」
「……触れなければ、発動しない筈」
「触れているでしょ?」
侵入者の少女のその一言に長谷川は辺りに舞い続けている白い羽の存在を改めて、再認識する。
白い羽は長谷川の頭や肩に乗っかって居るだけでなく、走った事によって触れて居る白い羽がある事を悟ると長谷川の全身から、力が抜けていく。
それは長谷川が、この勝負を諦めたとも取れる行動だった。
「……目的はなんだ?」
「……ナギサと話がしたい。誰の邪魔の入らない所でね」
「僕に出来る事は少しでも、ここで足止めすることだ」
「そう。それじゃ、もう倒れなさい」
侵入していた少女は神の知識を発動させ、長谷川の情報を書き換え、気絶させる。
気絶した長谷川に目もくれず、部屋の中へと入り込んでいく。
そんな侵入した少女は床を伝って、ナギサの位置を正確に捕らえる。
「……見つけた」
ナギサの位置を捕らえた侵入した少女は移動をしないナギサに疑問を抱きながらも、ナギサの居る場所まで歩いていく。
ナギサを姿を捕らえた侵入した少女はナギサを守る様にして、立ち尽くす愛花とナギアの存在に苛立ちながらも、ようやく出会えたナギサのその姿を見て、笑みを溢す。
「……回りが邪魔だけど……取り敢えず会えて良かったわ。貴女がナギサね」
「うん!」
「……貴女を守ろうとしている二人には退場して貰おうかしら」
「何もしないで、二人には、しばらく部屋に待機してもらうから」
ナギサのその一言によって、侵入してきた少女と戦う準備を整えていた愛花は驚きと、戸惑いを隠す事が出来ぬまま、ナギサに迫る。
「ちょっと、待って!」
「どうしたの?」
「京さんにも頼まれてるし、何よりもナギサちゃんを置いていけない」
「大丈夫だよ。信じて!」
「……でも」
「彼女は私でないと、止められない」
「……絶対に?」
「うん。お願い」
「連れていかれそうになったら、止めに入るよ」
「……うん。隣の部屋に行ってて」
「何かあったら、呼んでね」
愛花、ナギアが部屋に入った事によって、廊下にはナギサと侵入してきた少女だけとなった。
「……貴方には色々と聞きたいことがあるの」
「なに?」
「神の人体シリーズについて」
「それを聞いても、神の人体シリーズの頭のパーツにはなれないよ」
「知ってるわ。最初は私、次は貴女……でも、私達二人は捨てられた。この意味が何かは言うまでも無いわよね?」
「うん。ディジーが私達よりも優秀な人材を造る事に成功したってことでしょ?」
「そうよ。それだけで、私達は殺されかけた」
「……そうだね」
「憎しみは無いの?」
「……あるよ。でも、憎しみは誰かにぶつけるものではない」
「……随分と出来た人間ね。私はそうはなれないわ」
「……」
「薄々気づいているんでしょう?」
「ディジーによって、組み合わせられたDNAの母親は貴女も私も一緒なのよ。それに、三人目もね。そんな私達は他人とは言えないでしょ?」
「……確かに否定は出来ないよ」
「そんな貴女には見てもらいたいの」
「見る?」
「そう。私の神の知識によって、私の過去を」
「分かった」
「あっさりしているわね。断られると思っていたんだけど」
「そんな事はしないよ。でも、全て終わった後で私は貴女に聞きたいことがあるの」
「奇遇ね。私もよ。それじゃ、見てもらうわ」
背から白い翼を生やした侵入した少女はナギサの頭に手を起き、自身のこれまでの記憶を送り込む。
 




