数時間後
チーム[ハンド]が能力者育成機関神奈川支部の防衛局に侵入してから数時間後、チーム[リベンジャー]は自身達が住まう屋敷内に居た。
しかし、そこにはリーダーの渡辺京と萱沼大地の姿は無く、萱沼美咲は寝たきりの状態であった。
意識のある中鏡愛花、長谷川翼、ナギサ、ナギア、特徴の無い少女は椅子やソファに腰掛けながら、とある話をしていた。
「……でも、信じられないよ。厳戒体勢が続く防衛局を敵に回すとは思えないんだけど」
長谷川は聞いた話に納得出来ずにその話をした相手に真相を確認する。
そんな長谷川に対して、話した張本人であるナギサが答える。
「間違いないよ。神の頭脳によって、得た知識だから。これだけは揺るぐことは無い真実だよ」
「でも、ナギサちゃんに近い存在が来るってどうゆう事?」
「私と同系統の能力で……ディジーによって造られた存在だと思う」
「……何処から聞いたら良いのか分からないけど、その相手の目的は?」
「私!」
曇りの無いその表現に戸惑いを隠せずに居た長谷川の隣に居る愛花は身を乗り出し、ナギサに顔を近づける。
「大丈夫。ナギサちゃんは私が守る!京さんと約束したから」
目を輝かせながら、告げる愛花にナギサは苦笑いを浮かべると
「あ、ありがとう」
ひきつった表現で、ナギサは告げる。
「安心してね。京さんから任されたからには守ってみせる」
「うん。京と何があったのかは、聞かないでおくね」
「別に聞いてくれても良いよ」
「……嫌、遠慮しておくね」
「そ、そう?まぁ、良いけど」
いつもとは、明らかに様子が違う愛花に戸惑いながらも、その場からはなれ、ナギサはナギアの元へと移動していた。
ナギサが向かって来る事を目にしたナギアは微動だにせずに、座っていた。
「少し、話したいんだけど」
ナギサからのその提案にナギアは少し間を空けると、直ぐに答える。
「はい。なんでしょう?」
「相手は管理する神が神の人体シリーズの脳を司るパーツとして、造られた存在」
「……ナギサ。貴女が居たのに造られたのですか?」
「今から来るのは、私よりも前に造られた存在だよ」
「……どの様な能力なのかは分かっているのですか?」
「神の知識」
「……厄介な能力ですね」
「うん。最悪、私の神の頭脳で対応しようと思ってる」
「それは分かりました。それで、私に何か出来る事は?」
「相手が神の頭知識である事からこの施設のセキュリティを狙ってくると思う」
「……なるほど、では、私はそれに対抗すれば良いのですね?」
「うん。護衛をお願いする人には今から交渉するから」
「分かりました。それでは、私は一足早くコントロール室に向かいます」
「うん。お願いね」
ナギアがリビングから出る所まで見届けたナギサは一人だけ立ち尽くしている無表情な少女の元へと足を進める。
ナギサが歩いて来る事を目に捉えた無表情な少女はナギサに問う。
「なんでしょうか?」
「頼みたい事があるの」
「なんでしょうか?」
「コントロール室に居るナギアを守って貰いたいの」
「何かあったのですか?」
「うん。ここにもうすぐ来るから」
「あまり時間が無いのですね。では、直ぐに向かいますね」
「うん。お願い」
神の頭脳の能力によって、未来を知ったナギサはこれから来る者に対して、対策を完了させていた。
そんな頃、神奈川支部防衛局に一人の侵入者の存在が確認されていた。
侵入したのは長い金髪の少女で見た目は二十代のその少女は背に白い翼を生やし、羽ばたかせていた。羽ばたかせた翼から無数の羽が勢い良く、その場に撒き散らすと、その場に居た人々に接触を果たす。
白い羽に触れた者は受け身を取ることも無く、倒れていく。
「……なるほど、ナギサは特別に造られた屋敷に居るのね」
白い羽に接触を者から得た情報からナギサの居場所を特定した。
居場所を把握した少女は白い羽を辺りに舞散らしながら、歩いていく。
そんな少女が接近していくのを屋敷のコントロール室の監視カメラで捉えたナギアはマイクに手を伸ばす。
「報告します。侵入者は真っ直ぐここを目指し、歩いてきます」
ナギアのその言葉を聞いた愛花、長谷川は気を引き締める。
ナギサは徐々に近づいている少女の存在を肌に感じながら、神の頭脳を発動させ、侵入者の行動を考え込む。
屋敷に居る全員が侵入者の存在に気がついたその頃、侵入を果たした少女はナギサの居る屋敷に到達していた。
屋敷のオートロックを見て、少女は扉に手をかざす。
それと同じく、コントロール室に居るナギアはパソコンのキーボードを慌ただしく、指を動かしていく。
「どうかしたのですか?」
「敵がコンピューターに侵入してきています。この屋敷の全ては、このコントロール室で管理しています。ここを突破されれば、敵の侵入を許してしまいます」
「敵は何処に?」
「監視カメラには玄関に居るみたいです」
ナギアの言う通り、モニターには侵入者と思われる女性の姿を目にした無表情な少女はこのコントロール室に居ても、出来る事はないと判断して、ナギアに提案する。
「私が侵入者と戦います」
「……お願いします。敵の侵入を阻止するには、それしか無さそうですから、私が出来るのは、ここで食い止める事ぐらいしか出来ませんから」
「分かりました。なんとしても、止めてみせます」
「はい。お願いします」
無表情は少女は裏口から外に出来ると、正面玄関にいる侵入者の元へと向かい、走り出す。
無表情は少女は息を切らしながら、正面玄関に手を触れる侵入者の姿を捉える。
「……これ以上は侵入は許しません」
背後から声をかけられたにも関わらず、驚く事もなく侵入者の少女は何食わぬ顔が振り返り、無表情な少女の顔を見つめる。
「この屋敷から生命反応が一つ消え、目の前に来たって事は私を排除しに来たってことかしら?」
「手に触れるだけで、私の存在を把握したのですか?」
「ええ、私の神の知識は触れた物の情報を全て把握し、触れた物の情報を書き換える事が出来る能力」
「なるほど、それで、この屋敷の私の存在の把握と、システムへのハッキングをしていたのですね」
「理解して、どうする事も出来ないわ」
「それは、どうでしょう?」
無表情な少女は背に蝶の翼を出現させる。
「……猛毒蝶羽。私と同じく、ディジーに造られた存在。私達は同じ痛みを知る者同士、どう?私と手を組まない?」
「お断りします!」
「……ナギサによって、調教済みなのかな?」
「そんな事はされておりません。私は私の意思でここに居ます」
「それは、残念。貴女の能力では私には勝てない」
「そうですか?」
無表情な少女は蝶の翼を羽ばたかせる。
その翼から、大量の燐粉が侵入者の少女の元へと向かっていく。
猛毒蝶羽によって、撒かれた燐粉は神経毒で、吸い込んだ相手、触れた皮膚の神経麻痺を起こさせるだけでなく、毒でも、あるその粉は死にも至る粉と言える。
そんな粉を吸い込む、皮膚に触れていく中、侵入した少女は自身に満ち溢れた笑みで無表情な少女を見つめる。
通常の人間なら、倒れていても良い時間が経過しているにも関わらず、未だに立ち尽くす侵入者を見て、戸惑う無表情の少女に侵入してきた少女は舞続ける燐粉に構う事なく、無表情な少女の元へと足を進める。
「……私の神の知識は全ての情報を書き換える事が出来るのよ。粉が私に触れた瞬間に私は有害から無害へと書き換えたのよ」
「そんな事が」
「人に触れたら、その人間の情報も書き換える事も出来るからね」
「触れなれなければ、問題は無いはず」
「……出来ればね!」
「……私は飛行も可能です」
「それは私も。それよりも確認したいことがあるんだけど、良い?」
「何でしょうか?」
「白い羽を地面にまんべんなく置いておいたんだけど……今、踏んでいる?」
「……」
「踏んでいるみたいね」
不適な笑みを浮かべた侵入してきた少女は白い羽を伝って神の知識を発動させる。
これによって、無表情な少女の情報を書き換える。
起きている状態の無表情な少女を寝ている状態へと書き換え、無表情な少女を眠らせる。
倒れ込む、寝ている無表情な少女を気に止める事なく、侵入してきた少女は再び扉に触れ、屋敷のシステムを書き換え、扉の鍵を開けようとする。
そんな状態を監視カメラ越しで見ていたナギアはマイクを掴み取る。
「緊急の連絡をいたします。侵入者の攻撃力は無い為にシステムに侵入して、侵入をしようとしています。それを止めるべく、護衛をしていた彼女は一瞬でやられてしまいました。侵入されるのは時間の問題です。皆さん、対策をしてください」
ナギアのその放送を耳にした愛花、長谷川はナギサを守る為に行動をする。
「どうしよう。ここに居ても良いのかな?」
「はぁ?逃げる訳には行かないでしょ」
「僕たちはね。でも、ナギサちゃんはここに居ない方が」
「……そうね。それじゃ、貴方は玄関で侵入者を止めて、私は京に頼まれた通りにナギサちゃんを守る」
「ちょっと、僕一人で守るの?」
「それ以外無いでしょ?さっさと行けよ!」
「……ナギサちゃんはどうしたら良いと思う?」
愛花の説得は無理だと感じていた長谷川はこの場に置いて、頼れるたった一人の人物を頼る。
「……愛花ちゃんの言う通り、長谷川君は玄関に向かって、私と愛花ちゃんはコントロール室に居るナギアの元に行くから」
「分かった。玄関には行くけど、ナギサちゃんの神の頭脳では、どこまで分かっているの?」
「……この騒動では人は死なない事は分かってる」
「そっか。それじゃ、僕は死なないんだね」
「うん。だから、寝たきりの美咲も大丈夫」
「分かった。僕は玄関で侵入者を向かい打つよ。気を付けてね」
「うん。長谷川君も気を付けてね」
「うん」
長谷川は玄関に向かい、駆け足で向かっていく。
そんな長谷川の真逆の方向に向かい歩いていく。
そんな愛花とナギサはコントロール室へとたどり着いた。
コントロール室へと入り込むと愛花とナギサは椅子に腰かけるナギアの姿を捉えた。
「ナギア。侵入者は?」




