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神が宿る世界でー外伝ー能力者が行き交う世界で  作者: 斑鳩
第3章 神の義手(ゴッド・ハンド)
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地面方位(グランド・コンパス)

指示通りの場所で待機していた萱沼大地、萱沼美咲の二人は敵の接近を肌に感じながら、身を潜めていた。


「……愛花達は大丈夫かな?」

「分からん。しかし、無事だと信じたい」

「そうだね。きっと無事だよね」

「……敵は接近している筈だが、感知出来ない」

「お兄ちゃんが感知出来ないって事はじめんに接触する事無く、移動しているって事?」

「あぁ、俺の地面方位(グランド・コンパス)は地面操作と相手の方向感覚の操作と地面に触れているものの把握だからな。しかし、チーム[ハンド]らしきものは近づいて来ていない」


大地の不安そうな表情が移ったのか、美咲の表情は次第に強張っていた。

そんな美咲に気がついた大地はなんとかしようとする。


「……美咲。大丈夫だ。俺が守る!」


大地はそれしか言う事が出来なかった。


「うん。ありがとう」


美咲が感謝が述べると美咲の目線に空飛ぶなにかが視界に入る。

黒い翼を持つが、美咲が今まで見た事の無い形状から鳥では無いことを直ぐに理解出来た。


「お兄ちゃん。あれって?」

「……」


美咲に言われ、大地はそれを眺めるものの、直ぐにはその存在を理解は出来なかった。しかし、徐々に近づいてくるそれを目にして、ようやくそれの存在を正しく理解する事が出来た。

空を飛んでいたのはロングの金髪をなびかせ、悪魔の手を翼の代わりにして飛んでいた女性だった。

そんな女性を目にして美咲は驚きと戸惑いからその女性の名を口にしていた。


「……荒川玲愛(あらかわれあ)!」


玲愛は地面に足をつけると、背に生やしていた悪魔の手を消し去る。


「……神奈川支部の防衛局が守りに任せたのが……あなた達って事で良いのかしら?」

「……そうだ。俺達兄妹でお前を食い止める」

「出来ないわよ。絶対!」

「……やってみなければ、分からない」

「そう。やってみると良いわ」

「言われなくても、やってやるさ」


大地は地面方位(グランド・コンパス)を発動させ、玲愛の左右の地面を隆起させると、一瞬で隆起させた地面を操作させ、玲愛を挟み込む様にして動かす。このまま行けば、玲愛は圧殺される事はその場にいた全員が理解出来ていた。玲愛そんな状況にも関わらず、逃げる事はしなかった。

隆起した地面は玲愛を圧殺する前に地面で出来た手へと変化していた。

地面から切り離され、地面によって造られた手は浮遊を続けながら、玲愛の左右に1つずつ存在していた。それは大地の地面方位(グランド・コンパス)によって隆起された地面を利用して造られていた。


「……なんで俺の地面方位(グランド・コンパス)が手に変わっている?」


戸惑う大地に背後に居る美咲は未だに目の前に居るのが荒川玲愛だと気がついていない大地に伝える。


「お兄ちゃん。目の前に居るのが、荒川玲愛だよ」

「……そうか。あれが荒川玲愛」

「……どうしよう?」

「心配するな。俺がなんとかする」

「無理だよ。私の能力もお兄ちゃんの能力を荒川玲愛には通用しない」

「……俺の地面方位(グランド・コンパス)を手に変換したからといって、勝敗が決した訳ではない」

「荒川玲愛の能力は神の義手(ゴッド・ハンド)。生物以外を全て手に変換させる能力。私がどんな魔法を使っても、荒川玲愛によって魔法の手へと変換されるだけ。お兄ちゃんの地面方位(グランド・コンパス)でどんなに攻撃しても、手へと変換されるだけだよ」

「……だからと言って、なにもしない訳にはいかない。もしもの場合、お前だけでも逃がす」

「……でも、勝てる相手じゃあ無いよ」

「分かってる。それでも俺はチーム[リベンジャー]の一員として、戦うと決めた。それに俺は渡辺京(あいつ)に借りもある。ここで食い止められる事こそが、俺の役目」


大地の言葉を受け、踏ん切りがついた美咲は大地の背後から、前へと動き出す。


「……借りなら、私もある。私も戦うよ!」

「美咲」

「守られるだけじゃ嫌だよ。私も戦える!」

「……止めても無理の様だな」

「うん。私はもう決めたから」

「分かった。一緒に倒すぞ!」


共闘を決意した二人は荒川玲愛への攻撃を開始する。

大地は地面方位(グランド・コンパス)を発動させ、玲愛の周囲の地面を隆起させ、玲愛の視界を全方向隆起した地面で猜疑(さいぎ)る。


「……そんなに事を仕手も無駄だと理解出来ないのかしら?」


大地の能力によって隆起した地面を目にした玲愛は呆れた様に言葉を吐き捨てた。

そんな玲愛に構う事なく、大地と美咲は攻撃を開始する。

大地は玲愛の背後に隆起している地面に穴を開けると、その穴を目掛け、美咲は魔法陣を投げ込む。


「……なにも理解出来ていない様ね」


玲愛は自身の背から光輝く手を出現させる。

その光輝く手を隆起した地面に接触させる。隆起している地面に玲愛の背から出現した光輝くが触れた瞬間、地面方位(グランド・コンパス)の能力が無効化される。


「……何?今度は手の変化では無く、無効化だと」


隆起した地面が元に戻った事によって、大地は能力が無効化されたと直ぐに理解した。大地の能力を無効化させた光輝く手は美咲の投げ込んだ魔法陣も無効化させた。


「これで理解出来た?あなた達では私には勝てない」

「……まだだ。俺は、俺達は負けていない」

「今、現在はね。でも、直ぐに負けるわよ。私が勝つから」


このままでは、勝機を見出だす事が出来ないと悟った大地は決意する。

背後に居る美咲に作戦を伝えようとした大地は、振り返り伝えようとしたその瞬間、それは大地の目に飛び込んできた。

美咲は足元にある円形状の影から伸びた影によって、体中縛られ、口まで塞がれていた。


「美咲!」


影に縛られた美咲を救う為、大地は敵である玲愛に堂々と背を向けて、美咲を救う為に走り出す。

美咲へと近づいた大地だったが、美咲の足元の円形状の影から漆黒の槍が勢い良く飛び出て、大地の顔面の目の前で停止する。

突然の出来事に大地は動く事が出来ずに居た。そんな大地の影が揺らめき出す。揺らめき出した大地の影から紫色の長い髪に特徴的な髪飾りを付けた女性が出てくる。


「……玲愛。少し遊び過ぎよ。さっさと終わらせましょう」

「……八重。私がやると時点に伝えた筈だけど?」

「少し、早めに終わらせたいのよ。ここの戦闘は、この後のスケジュールがあるでしょ?」

「分かったわ。私と八重で一人ずつ殺りましょう」

「……どっちが、どっちを?」

「任せるわ」

「それなら、私は女の子をやるわ。玲愛はこの男を任せようかしら」


八重は大地の画面の目の前に停止していた黒い槍を一瞬にして、影へと変化させ、大地の体中を縛り上げると、大地の足元の地面から物凄い量の影を放出させ、空中へと放り投げる。

影に縛られている大地は受け身を取る事も出来ずに、地面へと激突する。

地面に倒れ込む大地を見つめる八重は大地に縛り付けた影を地面へと移動させると、自身の元へと移動させる。

自身の元へとやって来た影を地面から放出させた八重はそれを手に掴み取る。八重が影を掴み取るとその影は槍へと変化する。


「……あの男は玲愛に任せて、私は貴女と戦わせて貰うわ」

「……」

「……不意打ちとは言え、拘束されるなんて戦闘慣れしていない者を防衛ラインに配置するなんて、神奈川支部も相当な人材不足ね」


八重によって体を影に縛られた美咲は影に大量の魔力を送り続け、拘束から逃れようとしていたが、未だにその拘束を解ける様子はない。


「無駄よ。影は破壊不能だからね。影を退くなら、無効、光属性でしか無理だからね」


それを聞いた美咲は直ぐ様、魔力を送るのを止め、光属性の魔法によって影を消し去る。


「……光属性の魔法が使えたんだ?」

「もう2度と影には捕まらない。私だってチーム[リベンジャー]の一員なんだ!」

「……チーム[リベンジャー]?聞いた事無いわね。まぁ、良いわ。私の影に貴女は呑み込まれるのだから」


八重は手にした槍を美咲へと向ける。


「……黒影の槍(シャドウ・ランス)。それが貴女の能力」

「そう。私の能力を知っているんだ。……まぁ、だからと言って私に勝てる理由にはならないけど……勝算はあるのかしら?」

「……ある。可能性は低いけど」

「低いね。……試してみると良いわ。出来るならね」

「低くても、可能性があるなら、私はその可能性に全てをかける」

「……低確率な可能性にかける事が最善となるかしら?」


美咲の全てにおいて、否定的な八重は手にしている黒い槍を軽々と回していた。

そんな八重を目の前にして、美咲は冷静に攻撃を開始する。

美咲の魔法は特殊で、通常の人間が黒魔術(オーバーロード)白魔術(オーバーライド)のどちらかに限られるが、美咲はその両方に魔法を進化させる、事が出来る。美咲の様に二つの進化をものに出来るのは世界でも、五十人しか居ない希少な存在である。

しかし、現在の美咲は魔法の進化が出来ない為、それ以外の方法で戦うしかない。

美咲の主な戦闘スタイルは魔法陣に様々な効果を付属させ、それを利用した戦い方をしている。

それ以外にも、簡単な物から、上級レベルの魔法も多少扱える。

そんな美咲は自身の頭上に魔力の塊を作り出す。


「……へぇ~、魔法の球体(マジック・スフィア)を造れるんだ。凄いわね」


美咲の頭上に浮遊している魔力の塊を目にして、美咲の魔法センスの高さを素直に称賛した。

余裕が伺える八重とは違い、美咲に余裕等は存在していなかった。


(黒川八重の能力は黒影の槍(シャドウ・ランス)は自身の影を槍へと変化させ、その槍で触れた影を自在に操る事が出来る能力。私を影で拘束した時には影の中に身を潜ませていた。だったら、影に入られ無い様にして、戦う)


美咲は八重は能力の特徴から、戦闘方法を組み立てていく。

美咲は自身の頭上に浮遊させていた魔力の塊を八重の左右に設置させる。

左右に設置された魔力の塊に向けて、黒い槍を振りかざすが、魔力の塊は黒い槍を避ける。八重は確認する様に動き回る。

動き回る八重の動きに合わせて、魔力の塊も一定の距離を保つ様に動いていた。


(……なるほど、この魔法の球体(マジック・スフィア)は私の行動の監視かしら?よっぽど、影に中に入られる事を警戒しているよね)


美咲が魔力の塊を造り出した目的を把握した八重は思わず、笑みを溢してしまう。


魔法の球体(マジック・スフィア)は地雷の様に衝撃が加わると圧縮していた魔力が解放されたり、相手の追尾等に使われるよね?私の周りに配置されたこの魔法の球体(マジック・スフィア)は追尾様ね。これが有れば、影に入っても私の位置を把握出来るからね」

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