天界道
羽ばたかせた白い翼からは無数の白い羽と共に突風を起こす。
白い羽は浴衣の雷の様な黒いオーラに触れた瞬間、浴衣の雷の様な黒いオーラを一瞬にして、消し去る。
「……浴衣の創造主の意のままにを無効にした?」
浴衣の背後で戦いを観戦しているだけの琴音は驚愕を隠せずにいた。
それは創造主の意のままには現在、有るものを無いものへと変換させる様になっている。そんな状態の創造主の意のままにを無効させるとなると京の背から生える白い翼から飛ばした白い羽が浴衣の創造主の意のままによりも上だと言う事になる。
「……私の創造主の意のままにがこの程度だと思った?今までは貴方の黒いオーラに合わせていただけ。今度からはその白い羽を!」
浴衣の両手に握られた黒いオーラは握られた手の隙間から溢れ出す。
溢れ出した黒いオーラはさっきまでと違っていた。
雷の様な黒いオーラから、炎の様に揺らめく黒いオーラへと変化していた。
揺らめく黒いオーラは京の背に生えている翼から飛ばされた白い羽に触れたら瞬間、白い羽は黒い炎に包まれた様にして消え去る。
「……今までとは違うみたいだな」
「創造主の意のままには私の考え次第で何度も造り変える事が出来る」
「俺の羽を燃やすのに造り変えたようには見えなかったが?」
「ものは考え方によってなんでも出来る。私の黒いオーラに触れた瞬間、貴方の白い羽は燃えるただのものへと変化させた。それだけ!」
「それだけって……人体までも書き換える事も出来るのか?」
「それは出来ないよ。私がどれだけ願ってもね。でも、人体破壊なら、問題無く破壊が可能だよ」
「そうか……」
炎の様に揺らめく黒いオーラを握り締めた浴衣に琴音は近づいていく。
「浴衣。玲愛達が神奈川支部防衛局に侵入を成功させたみたい」
琴音はスマホの画面を確認しながら、浴衣に伝えていた。
「……このままやればあの男を殺せる」
「それは優先事項では無いわ。今は神の全身が最も優先する事よ」
「……分かったよ。今回は引くよ」
二人は無言のまま京を見つめる。
二人は何も告げることなく、浴衣の出現させた魔法陣をくぐり、転移魔法によって移動を開始する。
二人が居なくなった時点で京の緊張の糸が切れた様に倒れ込むと、黒いオーラと白い翼が消滅する。
「大丈夫?」
「心配するな。それより、ナギサあいつらがここまでの事をしておいて、ただで帰ると思うか?」
「それはないと思う。ここから離脱したのは、ここに居るよりも優先するなにかがあったからだと思う」
「……おい。女!」
京は無表情な少女を見つめながら告げる。
「はい。なんでしょう?」
「長谷川を掘り起こしておけ。それと、ここに居る奴等の警護も頼む」
「分かりました」
「ナギサ。お前は俺と来い!」
京は背に白い翼を生やし、ナギサを抱き抱えると宙へと飛行を開始する。
「京。なにを急いでいるの?」
「……あいつらが居なくなったなら、萱沼兄妹がやられた可能性がある。確認しないと分からないがな」
「……そっか。それじゃ、急ごう」
「あぁ」
「……天界道の力をものに出来たみたいだね」
「……そうか。この白い翼は天界道の力によるものか?」
「うん。そうだよ」
「……萱沼兄妹は無事だと思うか?」
「……分からない。でも、そうだと信じたい」
ナギサを抱き抱えたまま、京は萱沼兄妹が配属されていた場所へと向かって飛んでいく。




