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第28話 『ロンデニオン』

 ようやく軌道に乗り始めたかに思えた旅だが、ここに来て急展開を迎えた。自らの信念のため故郷を救った事をきっかけに、魔を滅ぼす事を第一に掲げる大国、ロンデニオンの王に招集された魔女達。

 どんな理想を掲げようと、自分達は反逆者にすぎない。姫百合の騎士などともてはやされもしたが、実際は騎士号も持ち合わせてはいない一介の剣士。その巨大な権力を前に、ロザリーはその全身を硬直させていた。


「ねえティセ、王様にはどんな挨拶をすればいいのかしら……。下手な事言ったらきっと魔女のイメージを落とすわよね? 全国の魔女達の命運が私に掛かっているなんて、吐きそう……」

「うわっ、意外と小心者ねアンタ。そんなんで今まで良くやってこれたもんだ」

「う……じゃあ挨拶はティセ、代わりにやってくれる?」

「ま、そのくらい別にいいけど。そもそもアタシ達が戦ってるのは、権威とか、権力とか、そういう空気でしょ。ガーディアナに対しては無謀なくせに、ビビりすぎなのよ」

「それはそうだけど……」


 ひとまず気の重い挨拶を押しつけ、待合室で一息をつくロザリー。ローランド時代から、相変わらずこういう席は苦手だ。姫に気に入られすぎたためか、それに相応(ふさわ)しい振る舞いをしなければと気に病みすぎた事が原因だろう。

 ロザリーは滅多に着る事もない(きら)びやかなドレスに身を包み、同じくめかし込んだ仲間達を見た。


「みんな、失礼のないようにね。私達はマレフィカを背負っているんだから」

「うん、私は大丈夫。でも、アルテミスの時はむしろロザリーが一番失礼だったよ」

「あ、あれは、いくら何でも女王がやり過ぎだと思ったから……。ねえ、ティセ」

「ふん、余計なお世話よ……。あんな国は例外中の例外。謁見なんて、普通は何も起きないわよ」


 そう言うティセとパメラは、当然のようにドレスを着こなし平然としている。しかしただ一人ドレスに着せられているサクラコだけは、どこかぎこちない。


「とりあえず、心配なのはこいつね……」

「は、はひ……、国王とは、大名くらい偉い方でしょうか? それとも将軍様……?」

「まったく、何言ってんだか」


 彼女が萎縮するのも無理もない。ずっと追われる身だった一魔女が、これから一国の王に謁見するのだから。

 そうこうしていると、突然外から扉が開かれた。現れた兵士は、女性が着替えてるというのに全く気にする素振りもない。


「準備は出来たか? ふむ、よく化けたものだ。魔女にも衣装とはこの事か」


 彼らの魔女に対する視線は冷たい。魔女が悪魔の使いだという噂を、まだどこか心の内で信じているのだ。

 しかし願ってもない事に、これでアルテミスに続いて王族との繋がりがまた一つできた事になる。あれこれ考えても仕方がないと、四人はいよいよ国王との謁見へと臨んだ。


「姫百合の騎士なる者と他マレフィカの三名、ここにお連れいたしました」

「確認した。魔女共よ、ここはガーディアナの地方砦のようには行かんぞ。もしおかしな事を考えているのであれば、城下にその首が四つ並ぶ事となるだろう」

「え、ええ、心得ています……」


 番兵の脅し文句と共に重い扉が開かれる。目にも眩しいレッドカーペットの先にそびえる玉座には、巨躯(きょく)を誇る白髪の男性が悠然と座っていた。、シワに刻まれた引き締まった顔。その眼光は一目でひれ伏してしまいそうに鋭い。銀の鎧姿にロイヤルマントを纏い、今にも戦えるよう長身の剣が傍らに立てられている。

 さらに両端には、ラウンドナイツと呼ばれる高名な騎士達がズラリと並ぶ。ただならぬ威圧感に押されながらも、ロザリー達はおそるおそる王の前へと歩み出た。


「国王陛下の御前である、頭を下げよ!」


 従者の声が響くと、条件反射的に皆頭を下げる。ティセ以外は。


「ほう、お前達がガーディアナに立ち向かったというマレフィカか。ん……お前は……」

「やっほー、ボルガードおじさん、久しぶり」

「おお、誰かと思えば、アルテミスの王女ティセではないか。話は聞いているが、ずいぶん派手にやったようだな」

「まあね。むかついてたからドーンって、もう粉々! キャハハ!」


 ロザリーは愕然とした。まるで久しぶりに会った親戚のおじさんとの会話である。


「ちょっとーっ! 挨拶は任せるって言ったけど自由すぎはしない!? あなた王様にまでそんな態度なの!?」

「うん。っていうか、アタシも王族だもん。アンタこそ一国の王女に向かってずいぶんな態度よね」

「うっ……、そういえば……」

「いいのよ。アタシは気にしない。だから、相手にも気を使わないの。ね、ボルガード王」

「ハハハ、私も元々は平民出身であり、純粋な王族ではない。構わんよ」


 ティセを相手にして腹を立てない器の大きさ、まさにこれぞ一国の王であろう。この中でも平民も平民であるサクラコは、殿上人の会話に目を白黒させるばかり。


「おっ、おひめ、さま……? あのティセさんが……?」

「そうよ。知らなかった?」

「ははー、これまで、とんだご無礼をつかまつりございますです!」

「今まで通りでいいって……」


 サクラコはそのままティセに対しても床に頭をすりつけて平伏した。

 ボルガード王はそれを見て一笑した後、ロザリーに向き直る。


「さて、ルドルフ殿にはすでに話してあるが、来る者は拒まずが我がロンデニオンの信条。侵略者ガーディアナの横暴な振る舞いにより、愛する土地を手放すに至ったローランド難民の全てを我が国は受け入れよう。そしてお前達がマレフィカである事も、この国では罪ではない。同様に受け入れるつもりだ。しかし、理由なき反逆者となれば話は別。お前達を呼んだのは、力を(もっ)て世界に風穴を開けた、その心根を見定めるためである。私欲によってそれを冒した罪人であれば、ガーディアナに身柄を引き渡さねばならない。では一人一人、その名と出身、共に行為に及んだ名目を示すがよい」


 やはり、この機会をもうけたのは、自分達を試すためであった。正義を行うにも人々の理解が得られなければ、それはただのテロリズムに過ぎないのだ。

 このまま魔女を誤解される訳にはいかないと、ロザリーはリーダーとして一歩前へと踏み出した。


「では、まずは私が……」


 一瞬でロザリーの顔つきが変わる。その威風堂々たる佇まいは、まさに英雄の持つそれであった。


「この度の全ての責任は私にあります。私はロザリー゠エル゠フリードリッヒ。恥ずかしながら、ルドルフ様により姫百合の騎士の名を受けた者です。かのローランド国は私の故郷でもあり、かつての戦争では若輩ながら一兵士として参加していました。そしてその後はレジスタンスとして数年間、共に生き残った者達とガーディアナへの反抗運動へと身を転じました。元々、彼らには恨みこそありましたが、そこで行われるあまりに人道を外れた行為に怒りを覚え、真の意味でガーディアナと戦う決心をした次第です。私は魔女であり、力がある。だからこそ、圧政に苦しむ人々を放ってはおけなかった。もしそれが罪であるならば、どんな罰でも受けるつもりです」

「ほう……」


 立派な髭を撫でながら、王はこちらの目をまっすぐに見据える。根負けしそうな眼力を前に、ロザリーも一歩も引かなかった。


「待てよ、フリードリッヒ……? 陛下、このお嬢さん、もしかするとあのブラッドの奴の娘ではありませんか……?」


 そう横やりを入れるのは、最も王に近い場所に位置するラウンドナイツの一人。厳つい顔に黒々とした短髪とあごひげ、背負うバトルアックスは身の丈以上。であれば騎士団長であるラインハルト゠グラニス卿に違いない。ロザリーは沸き上がる興奮を抑えつつ答えた。


「はい、ブラッドは私の父。レジェンドであるラインハルト様の事は子供の頃に私もよく聞かされました。その剛腕は父をも上回る程だとか。お目にかかれて光栄です」

「おお! そうかそうか、いや、確かに似ている。あの礼儀知らずの坊主がこんな娘を作っていたとはな。ははっ、元祖、反逆者の娘まで反逆者と来たか。こいつはいい」


 ラウンドナイツに少しばかり笑いが起きる。ロザリーにはその意味は分からないが、場が一気に砕けた事に緊張もほぐれていく。


「確かブラッドはローランド戦役後、消息不明と聞いた。さぞ辛かったであろう。俺の事も親父のように頼ってくれていい。……陛下、つい懐かしくなり出過ぎた真似を。申し訳ありません」

「かまわん。しかし伝説級の娘か……どうりでいい面構えをしているはずだ。姫百合の騎士……彼の地にとっての名誉ある称号を受け継ぐだけの事はある。では次はティセ、お前の言い分を聞こうか」


 一歩下がったロザリーの代わりに、緊張感の無いティセが歩み出る。


「一応名乗っておくと、アルテミス王女ティセ゠アルテミス゠ファウスト。おじさんは知ってると思うけど、先にアルテミスを侵略してきたのはあっちだから。アタシはやられた分をやり返しただけ。それにロザリーにはちょっとした恩もあってね。力の無いローランドの代わりに、文字通り反逆の口火を切ってあげたのよ」

「反省の色が見えんな……。お前は有罪となればアルテミスへと強制送還となる。そのつもりで沙汰を待つがいい」

「げっ、マジか……。いや、アタシ、ホントは何もしてないんだって! 建物ぶっ潰したくらいで。それもロザリーがやれって言うから……」

「仲間を売るつもりか? 同じくレジェンドであるお前の父が聞けば、さぞ悲しむだろうな」

「えっ、ちがっ。……正直に言うと、アタシも誇り高い英雄の血が騒いで……。そう、弱い者を食い物にする奴らをどうしても許せなかったの! 血は争えないのよ……」


 この国はレジェンドの創り上げた国でもある。父の血など特に意識した事も無いが、ティセは英雄を好む彼らの気質を利用する事にした。


「ふむ、まあお前と私の仲。ふざけていてもその血に流れる純潔、分かるつもりだ。それにしてもレジェンドの娘が二人も関与していたとは……ロンデニオンとしても耳が痛い話だな。では次の者、答えよ」


 どういう訳か、パメラは未だに頭を下げたまま顔を上げない。それを心配したサクラコが、その場を先に答えた。


「わ、私はイヅモ国より参りました琴吹桜子と申します。密偵として、がであな国へと向かう途中、ロザリーさんに命を救われ、そのご恩返しのために同行している身です。そして軟禁された人々の救出に当たって実際に砦を偵察し、確かに“ろらんど”の民に対する“がであな”の非道な仕打ちの数々を見届け、かの悪代官……ではなく僧侶を誅した次第です。ですが今一歩力及ばず、どういう訳か彼は自らの手で命を断ちました。お白洲(しらす)の場では隠し事は無用。嘘偽りは一切ございません」

「ほう、イヅモ人か。彼の地にはサクラフブキの名奉行がいるという噂は聞いている。お前もその名に恥じぬ行いをしたという事だな? まだ幼いというのに見上げたものだ」

「コトブキ、サクラコだと……陛下、我々の仲間にコトブキという名のシノビがいたのですが、もしかするとこの娘も」


 異国の聞き捨てならない名前を聞き、またもラインハルトが割り込む。


「はい、伝説級(れぜんど)の忍、琴吹桜は私のお師匠様で叔母にあたります。あの、それがどうか……」

「これは驚いた。確かに素質に恵まれたレジェンドの血縁は魔女となりやすいと言うが……まるで示し合わせたかのような話だな」

「サクラコ、あなたもレジェンドの教えを受けた一人だったのね……」

「は、はい。でも私なんか、いっつも怒られてばかりでした。鬼かお師匠様か、どちらかに教えを請うのでしたら、私は迷わず鬼の下へ行くでしょう」


 その“お師匠様”を知る者達は、笑いをこらえきれずに吹き出してしまう。お堅いはずの詰問の場だったはずだが、いつの間にか親戚の集まりのような空気にすらなってきた。


「……ごほん、では最後に、青髪の少女、お前の話を聞こう」


 とうとうこの時が来たと、パメラはビクっと跳ねた。いよいよ隠していた正体を明かす事になる恐れから、なかなか決意が定まらない。


「ほら、もういいのよ。頭をあげても。信用できる大人達だから、大丈夫」

「ロザリー……。う、うん」


 おそるおそる顔を上げたパメラを見て、ボルガード王は眉を上げた。その顔に覚えがあったのだ。それは、まごう事なき現在行方不明とされるガーディアナの聖女。王は一人うなり、なるほど、と手を打った。


「聖職者、そう恐れるな。私はガーディアナの一僧侶であるお前の事など知りはしない。加害国の人間として、中立的な立場での意見が聞いてみたいのだ」

「はい……」


 もちろんパメラもボルガード王については覚えていた。彼は元々ガーディアナの属国、フェルミニアの騎士団長である。つまり彼の地位を追いやり、この国を作らせた原因でもあるガーディアナの聖女を忘れるはずがないのだ。パメラはそこにあえて触れない彼のやさしさを噛みしめ、ここは普通の村娘として答える事にした。


「私はパメラ゠クレイディア。詳しくは明かせませんが、ガーディアナの上級神徒です。私は本国を出るまで、人々は教えの名の下に幸せな日々を過ごしているものだと思っていました。でも、それは違った。確かに私から見ても、ガーディアナは行き過ぎた侵略を繰り返しています。教えというのは、本来人を支えるものであり、救うもの。決して、その存在自体を律するものではありません。けれどそうなってしまったのも、現在の教皇、リュミエール゠クレストの支配的な考え方に全ての原因があると思うのです。長きに渡ってガーディアナというものが巨大になる事で、末端に行くにつれ本来の教義は歪み、人々の持つちょっとした傲慢さが、よりその形を支配的、本能的なものへと変えていく。これは、皆が心に持つ弱さのせい。私は、それ自体に罪は無いと思う。これが、力で支配した世界の、当たり前の形だから……」


 それこそが、パメラが制圧に及び腰であった理由。ロザリーは一歩踏み込んだパメラの考えが、今ならば分かる気がした。


「だから、あまりに道を間違ってしまった人には罰を与える。その罰が、こちらも行き過ぎてしまった事も私は否定しない。ですから、王様、どんな結果であっても、私はロザリーと同じように全てを受け入れます。でももう一つ、私は、ロザリーのように反発する者が現れるのも、今の世の中が生み出した自然の形だと考えている事だけはお伝えしておきます」

「パメラ……」


 やはり彼女には、一国の象徴を務めてきただけの迫力があった。ロザリーを罰すれば、聖女である自分も後を追うという脅しすら軽く使ってみせる(したた)かさ。それに対し、ボルガード王は納得せざるを得ないかのように頷くばかりである。

 その仕草を見て、きっと悪いようにはならないと、ティセもサクラコもほっと一息をついた。


「うむ。お前達の思い、しかと聞き届けた。最終的な判断はガーディアナ側の罪人の裁きを終えてから下す。だが、お前達がマレフィカである事、それがガーディアナの法において、無条件で不利に働く事は明白。そこで、被害を受けた側である証人を用意する事とした。アニエス゠ベルモンド、いや、今はアニエス゠ロードリングだったな。ここへ」


 王に呼ばれ現れたのは、領主ルドルフの養子となり、見違えるように身なりを整えたアニエスであった。


「アニエス……!」

「ロザリー、いつでも力になるって言ったでしょ。裁判の事はまかせて。私を罪から救ってくれたあなた達を、罪人にはさせない。絶対に」

「……ありがとう。けれど、魔女の戦いにあなたを巻き込んでいいのかどうか……」

「もうこれはあなた達だけの問題じゃないの。魔女が背負わされたこれまでの仕打ち、私には痛いほど分かる。だから、魔女である事そのものが罪だと言うのであれば、私が全力で相手をする。例え力があろうと無かろうと、ただの人間である少女達に不当な罪をでっち上げた奴らを、私は許さない!」


 力を持たぬ少女の、力強い言葉。もしかすると自分達以上にその憎しみは深いのかもしれない。彼女のもう一つの戦いは、すでに始まっていた。


「公平を期すため、力で勝るお前達を裁判に出席させる事は出来ない。相手が萎縮してはいかんのでな。だが心配するな、ルドルフ殿や彼女が代わりに戦ってくれるだろう。吉報を待つが良い」

「アニエス……、頼んだわね」

「ええ、あなたのためなら……」


 アニエスはその続きをためらい、ごまかすように微笑んだ。


「では、これにて謁見を終わりとする。裁判中はこの国から出ることは禁じるが、移民で賑わう自由都市デュオロンが受け入れ先を名乗り出てくれた。お前達もそこを今後の拠点とするがいい」

「何から何までありがとうございます、ボルガード王」

「うむ。ここはお前達にとって第二の故郷。存分に羽を伸ばせ。それから、ガーディアナの聖職者よ」

「私……?」


 パメラに対して、というよりも、国王はもっと大きな存在に対して語りかけるような、かしこまった態度で一つだけ付け加えた。


「ガーディアナにないもの、閉じこもっていては見られないものが、ここにはたくさんある。いったん神の事は忘れ、世俗に浸かり見識を広めるがいい」

「王様……お心遣い感謝します」


 その言葉を最後に、マレフィカ達はうやうやしくロンデニオン城を後にした。

 それらを見送り、王は思わず口角を上げる。


「ふふ、次代の英雄達か。思わず肩入れしてしまいそうになるな」

「陛下。あの者達、まるでかつてのあなたのようではないですか。祖国の腐敗から多くの人々を救い、世界の盾となったあなたと……」

「いや、恥ずかしい限りだが、私はそれ以上の事は為してはいない。今この世界に本当に必要なものは剣。我が愛剣エクススウォードの如く、かの国を穿(うが)つための力。我々は魔を滅ぼす大義こそあれど、同じ人類を同様に裁く事は難しい。しかし、それが出来るのがマレフィカであり、姫百合の騎士なのかもしれんと私は考えている。そして、あの青い髪の少女……彼女こそが真の世界の盾(ガーディアン)であるならば、きっとこの世界は自ずと変革するに違いない」


 年老いた王は、いつか果たせなかった夢を託すかのように、遠い目で答えた。そんな夢物語のような話に、騎士団長ラインハルトもまた深く頷く。


「老兵は去るのみ、ですな。しかし、まだうら若き彼女達をデュオロンなぞに送ってもよいのでしょうか。あそこは確か……」

「毒には毒をと言うではないか。もしかすると、と思ってな。彼女達に英雄の資質があるかどうか、まずはしっかりと見届けさせてもらうとしよう」


 こうして、ロザリー達の逃亡劇はロンデニオン王の庇護の下、ひとまずの終局を迎える事となる。


 マレフィカに求められた役割。それは、受難からやがて起きる奇跡までを演じる神秘劇の女優であった。しばしの休息の中で、彼女達に待ち受けるものは残酷な悲劇か、はたまた心躍る喜劇か……。


―次回予告―

 中立国ロンデニオン。

 それは、ようやく辿り着いた安住の地であるかに見えた。

 しかし都会という名の怪物は口を開き待ち構える。魔女すらも貪欲に喰らうために。


 第29話「自由都市」

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