ロック○ンX3で遊ぶだけ
キャラ説明については別の記事を参照してください。
簡単に紹介すれば
留音→普通な人
衣玖→センスな人
西香→うざい人
真凛→にこやかな人
くらいの感覚で大丈夫です。
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「で、なんで3からやるのよ?」
四人ほどが横並びに座れる大きソファーに腰掛け、コントローラーを握る留音の隣でちょこんと座っている衣玖がそう声をかけた。
西香がファンによって貢がれた家具はどれも高級で、ソファーはゆったりふかふかの座り心地抜群の材質。ゲームを遊べるモニターは五十型の超巨大サイズである。
「1と2と4は当時遊びまくったからな。いやーっ、このドットのエックスは懐かしいわぁ!」
キラキラした瞳でオープニングムービーを見ながら言う留音に冷静に聞き返す衣玖。
「え、なんで3だけやらなかったの?」
「いやね、やってたのよ?スーファミでも借りて遊んだんだけど、あたしはセガサターン好きだったから、自分で持ってたのはサターン版ね。でも当時チビだったからディスクの扱いわかんなくてさ、読み取り面めちゃくちゃ傷つけちゃってロードしなくなっちゃったんだよ。泣いたね~、でもその御蔭で今じゃ超繊細に扱うけどな、ディスク。ブルーレイなんて一ミリでも致命傷だしさ」
留音は始めに決定ボタンとなっている○を押すが反応せず、そういえば当時もスタートボタンしか反応しなかったことを思い出しながらゲームをスタートさせた。電子音の軽快なリズムの音楽が流れ、エックスとゼロが敵の飛空ロボットに張り付いてバスターの連射で破壊するムービーに「ウォぉっ」と熱くなる留音。
「やっぱかっこいいなぁ!この曲!サターン版だとちょっと違うんだけどね。オープニングもボーカルつきでめっちゃいい曲で、また聞きてぇなぁ……」
「いいから進めたら?」
手堅くチャージを常に溜めながらダッシュジャンプを繰り返して進む留音、当時を思い出しながら「やべぇやべぇ」と呟いている。
そして現れる謎の敵、マック。
「来た!マック来た!この会話!知ってる?」
留音は衣玖に読ませるようにワンテンポ遅らせて会話を進めるが、天才少女衣玖は斜めに読めば一瞬で文章を把握するからその待ち時間が鬱陶しいくらいだった。
「なによコレ。ずいぶん説明口調ね」
「ひゃー!懐かしい!『きみはゆくえふめいになっていたマックじゃないか!』なんてわかりやすい!マックは行方不明だったのに何故かここにいるんだよ!なんでだ!そりゃエックスも戸惑うよな!」
「あ、青い人が捕まった」
そして音楽がやたらヒロイックな曲調に変わり、天井からゼロが登場する。HPバーが二倍くらいに増え、連続チャージショットにセイバーまで使いこなす最強のイレギュラーハンターの登場に「たまらんたまらん!」と留音。
「これがさぁ!ゼロ!ゼロがさぁ!どんだけ当時やばかったかわかるかコレ!ゼロが使えるんだよ!実際はあんま強くないんだけどさ、性能的に。でもゼロが使えるとかマジ当時はやりやがったって感じなのよコレ」
「知らないけどね。女の人なの?」
ゼロを知らない衣玖がゼロのレッドカラーと長い金髪を見てそう聞いた。
「いや男男。声つくとめっちゃかっこいいよ、この後の作品で声つくんだわ。でも当時はあたしも女なのかもって思ってたなぁ。あたしの髪もちょっとゼロ意識してるところあるからね」
「それは流石に嘘でしょ」
「うん地毛伸ばしてるだけだけど」
そしてステージを進みボスゲートをくぐる。
「ゼロはセイバー使えるから、マックとか一撃だからね」
チャージショットを一発、そしてセイバーを振るも空振りする留音。
「一撃じゃないじゃないの」
「いやちょっと、これ当てるのムズい。ちょっと勘が鈍ってるかな」
その後もフルチャージをしては連続チャージショットを放ち、セイバーだけ外しながらマックをなんとか撃退するのだった。
「むしろ一撃も当てられてないじゃないの」
「いや言わせて?あたしはもうX4のゼロの体で動いてるのよ。発生フレーム的な問題がね?」
「完全にただただ空振ってたわよね。むしろあの青い人捕まえてる動いてない機械にすら外してたわよね、セイバー」
「だってダッシュジャンプボタン配置でムズいんだって!セイバーだけボタン離したときじゃなくて押した時に切り始めるんだもんよ!」
言い訳ばかりのままキャラクターはエックスに戻った。そのままステージを進むと、体力の半分くらいのダメージをくらいながらもオープニングステージラストを飾る巨大ボスの登場となる。
「うわ、強そうね。ロケットパンチとモーニングスターみたいな激アツ武装じゃないの」
「このボスくっそ弱いんだわ。あたしも初見のときはびびったけど、大体エックスシリーズって最初のステージのボスは巨大って決まってるんだよ。でさ、こいつ、この街の平和のシンボルとかなんだよ、確か」
「え、この殺人的なフォルムで?ずいぶん攻めたデザインにしてるわね。顔なんてもう怒った仁王様とかそんな感じじゃない。恐怖政治を敷いてる世界なの?平和を乱すやつはこの鉄球でぶっ潰してやらァって感じなんだけど」
「それな。あたしにもわからん。名前も確か魔王とかでさ。割とマジで意味がわからない」
その魔王の攻撃を的確にジャンプして躱し、凸凹になった地面を飛び越えて顔面に上手くチャージショットを当てていく留音のエックス。
「はぁ……あ、倒した。クソザコじゃないの。魔王で平和のシンボルでクソザコって。こうなるとなんでさっきやたら説明口調で紹介したマックに一瞬で負けたのかわからないわね」
「気付いちゃいましたか。そこ気付いちゃいましたか衣玖さん」
「うざいわよ」
「それがエックスなんだよ~、エックスは全シリーズ通して……あいや、大抵は他のロボットを信じてたりする優しいロボットだからさ、マックのときは超油断してたんだろうなっていうね、感情的な推測が立つわけね。そういう深みがエックスにはあるわけよ、ボス戦使ってそういう裏設定的なのやるのすごくない?これ何年前のゲームよ……素晴らしいわぁっ」
「はぁ……」
そしてステージのデモを挟むと、次はいわゆる”8ボス”のステージセレクトに状況は移る。留音は「さてどいつから倒してやるかぁ」とイキり気味に氷のボス「フローズンバッファリオ」にカーソルを合わせて選択。
見たままバッファローに氷を意識したカラーリング。衣玖も名前と見た目がそのまま一致するセンスの高さを感じざるを得なかった。そこで扉が開き、眠そうな様子でやたらあざといひらひらのついたパジャマを来た西香が入ってきた。
「ふぁあ、おはようございますわ。あら、ゲームですの……?うわ画像ふっる……クソゲーですか?」
「テメェ!神ゲーだわ!昔のゲームなめんな!」
こんなグラフィックで?という表情を作って四人がけソファーの隣にあるお姫様が座るような一人がけの椅子に座る西香。どうやら観戦するらしい。ステージは氷漬けになった町に背景にある大きな三日月が特徴的である。
「氷のボスって大抵弱いんだよなぁ。とりあえずフットパーツ取りに行くか」
そう言って開幕でダッシュとジャンプを繰り返して進み、氷漬けになった坂を下りながらギミックのトゲの上に落ちた。ティウンティウンティウン……というSEに留音の口がへの字を作る。
「ルー、死んだわよ」
「一撃で死ぬとかクソゲーなんじゃありませんの?」
「クソゲーじゃねぇよ!そういうゲームなの!」
もう一度挑戦する。少し進んでは滑り、壁にダッシュ状態でぶつかると大きく滑る、という仕様に中間地点を超えるのですらやっとの留音。
「なるほど、留音さんが下手くそなだけなんですのね」
「ぐぬ……」
西香の言葉に反論出来ず、滑ってはトゲに刺さり、穴に落ちる。それでもようやくフットパーツのあるところまで来るのだが、ジャンプ開始地点が甘くてフットパーツの隠し場所に届かない。そして落下する先には氷の坂があり、歩いてもダッシュをしても勢いよく戻されてしまう上、そこは敵のスポーン地点になっている。
「あの、やっぱりこれ……」
西香がゲーム画面を苦い表情で見つめている。ダッシュジャンプして坂を超す→敵がスポーンしている→ダメージを食らってノックバックする→坂を落ちる→先にスポーンする敵を倒す→奥にいる敵の遠距離攻撃を食らってノックバックする→坂を落ちる(敵がスポーンする)という行動を、留音は飽きるほど繰り返していた。
「クソゲーなんじゃありませんの?」
「違うよ!あたしが下手なだけだよ!」
そんなやり取りをして、ようやく手に入れたフットパーツ。白いヒゲモジャおじいさんの登場に衣玖が「デザイナーはわかりやすい表現の天才ね」と褒めた。
そしてついに来たボス、フローズンバッファリオ。残機を何度か使い果たし、ステージを最初からやり直し続けてようやくの初8ボス登場である。
攻撃方法もわかりやすく突進を繰り返すのがほとんどだ。ただ留音は壁蹴りからのダッシュジャンプが下手でバッファリオが突進した地点にそのまま落下したり、敵の攻撃を避けきれずに敵に捕まったまま壁際まで突進で運ばれたり、ついに残機で勝つことが出来なかった。
「いやちょっとまって!一撃でこのダメージ量っておかしくない!?三発食らったらほぼ終わりじゃん!いやちょっとまってまって!当時こんな強くなかったって!いやダメダメダメ。ちょっと最後に神ゲーってところを証明して終わるわ」
「終わるのね。折れたのね」
ステージセレクト画面に戻ってきた留音は手際よくステージをバッファリオからエビのような見た目のボスにカーソルを変える。
「ここの曲聞いて!」
選択したボスは「シザースシュリンプァー」。ハサミとエビ。エックスの影がひゅーっとクレーンの上に舞い降りた。
「これ!これ!このイントロ!超かっこよくない?!当時なんどこのステージ遊んだかわからんのよ!曲が好きでさぁ」
低い音とエレキギターのような音がかなり早いリズムでかき鳴らされるイントロに興奮する留音に対し、まぁ悪くないわねと衣玖。無関心の西香。それからメロディが始まる。
「聞いてここ!ボーカルがあるかのようなメロディじゃない!?あたしこれ当時ねこれ、『なになにしちゃうと~、なになにしちゃう~の~』ってずーっと聞こえてたんだよ!」
なになに、の部分はその時の気分次第で変わっていたが、今でも完璧にこの曲覚えている。
「お腹がすいたら~、パクパクしちゃう~の~。ほらピッタリ!」
「プフッ」
「目と目が合ったら~、ドギマギしちゃ~う~」
「(ラブソングになってる……)」
「しかもねこれ、ほらここ聞いて!」
なになにしちゃ~う~のリズムの後でメロディの変調から繰り返しに移る部分の直前でやや高めの音がシャウトするように鳴るのを二人に聞かせた。
「アーっ!!って叫んでるみたいでしょ!これはもうボーカル付きの曲としか聞こえないのさよ!」
「さよ言われてもね……」
それから留音はあっさりと自滅で三落ちするとステージセレクトに戻ってきた。
「クリアしないの?」
「シュリンプァーは強かったと思う。今のあたしには無理だ。また今度やることにする……ただ曲が神だったことは知っといてほしくてな……」
「わたくしにはさっぱりわかりませんでした。さて、わたくしは貢がれたカードで課金してガチャを回す作業に移りましょうか」
席を離れた西香。留音も昔読んでいた攻略本を探すために自室に戻り、一人残された衣玖がコントローラーを手に取り、最初からゲームをプレイし始める。
「確かにダッシュが使いづらいわね。これ設定で場所変えられないのかしら」
タイトル画面のオプションからダッシュボタンを右手親指の根本で押す位置から左手人差し指で押すボタンに切り替えると大幅にプレイのしやすさが改善され、軽快にオープニングステージをクリアした。
「まぁ留音が言うほどには面白いわね」
そこへ起き抜けの真凛が現れた。
「あらおはよう真凛」
「おはようございます衣玖さん~。あら、懐かしい~、ロックマンだ~」
「うん。知ってるの?」
ポワポワと今にも浮きそうな声で眠気半分にソファーへごろんと横になる真凛。
「はい~、お兄ちゃんが大好きなゲームだったので、わたしも覚えてるんですよぉ」
「あー、お兄さんか。……さて、どのステージで遊ぼうかな」
衣玖はどうせ初めてだしと、留音の言ったセオリーの攻略は無視しようとステージのボスを見回す。こういうのって周りにいるのが弱そうよね、と自問してカーソルをぐるぐる回している。
「このゲーム、なんかクレーンみたいなのあるステージがありましたよね?」
「ん?あぁもしかして……」
真凛の疑問の答えは直前に留音が遊んだ事でわかっている。シザースシュリンプァーのステージである。衣玖はそのステージを選択して攻略を始めた。
「あ~懐かしい~、そうそう、このステージですよぉ」
「ルーもここ好きって言ってたわ。人気なのね」
「そうなんですか?わたしはここの……『どしたらいいのか~、わっからない~のー。どしたらいいのか~、わっからない~ね↑』って曲はよく覚えてるんですよねぇ」
「ブフッ」
なんでっ!?と吹き出す衣玖。
「どうしてみんな歌うの?!ちょっとツボ入るわ、しかも歌詞違うし!」
「お兄ちゃんがここのステージ遊んでるとずっと歌ってたんですよね。どしたらいいのか~って。で途中でアーっ!!って言うんですよぉ、それをすごく鮮明に覚えてて」
「ブッフっ、なんでアーっだけ共通語なの!!」
こうしてロックマンX3の攻略を始める衣玖だった。
ちなみに作者はエクスプローズホーネックかスクリューマサイダーを先に持ってくるタイプでした。アニコレではマサイダーでしたね。
X2やX4が傑作、次点でX1となる事が多いと思うので隠れがちですが、X3もいいと思います。移植版の音楽も全部好きだし、ボーカルのOPも本当に良かったです。今でもたまに聴きますね。
Xアニコレ、発売が嬉しかったですね。
X9待ってますよ!ロク11も出るしカプコンさん頑張れ~