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いつもの母
「初めまして」
母は僕の顔を見て微笑んだ。
中学校の教師になって早10年。
四十路近いというのに未だ独身のままの僕は仕事を終え22時を少し回った薄暗い街灯の下家に帰っていた。
「僕は孫を見せる事ができるのかな…?」
ボソリと呟くも応えてくれる者などおらず虚しくなる。
いつの間にか家の前についていた。中には明かりが灯っておりほっと心が暖かくなった気がした。
「ただいまー」
玄関の戸を開け母が居るであろう居間に向かって声を掛けた。
「お帰り。遅くまでご苦労様」
いつものエプロン姿の母。
いつもと変わりない母だった。