秋葉原ヲタク白書5 腐女子の旗の下に
主人公は、SF作家を夢見るサラリーマン。
相棒は、老舗メイドバーの美しきメイド長。
このコンビが、秋葉原で起こる事件を次々と解決するという、オヤジの妄想満載な「オヤジのオヤジによるオヤジのためのラノベ」シリーズの第5弾です。
今回は、イケメンテレクラにハマった腐女子は、実は政界のサラブレッド。「腐女子スキャンダル」を狙う対立候補の企みにコンビが巻き込まれます。
お楽しみ頂ければ幸いです。
第1章 彼女はCSO
最近ようやく目にするようになった看板の1つに「イケメン喫茶」がある。
それは大体裏通りにある雑居ビルの3〜4階辺りにあって看板には「イケメン喫茶」とだけ謳うコトが多い。
確か流行りだした頃のメイド喫茶もこんな感じだったけど、どうやら「店内にイケメンがいます」というだけで商売が成立するから、敢えて店名は名乗るまでもないというコトのようだ。
昭和の頃は「店内に美人がいます」というだけの「美人喫茶」が世の男性を癒したらしい。
それに遅れ平成も終わろうとする今、ようやく女子向けに「イケメン喫茶」が出現したワケだ。
風俗って、年号にすれば2つ分まだまだ男子先行の世界なんだね、と妙に安堵する。
しかし一方で、近年のナリフリ構わぬ女子の猛烈追い上げにはプチ戦慄も感じるけどね。
「最近では女子テレクラとかも流行ってルンですょ」
「まぁ!イケメンテレクラ?」
「うーん、顔は見えないんですけどね」
電話なんだから当たり前だろう。
ミユリさんも時折マヌケなコトを逝うょなぁ。
あ、ココは秋葉原で10年続く老舗メイドバー。
開店直後で僕以外に客はいない。
メイド長のミユリさんとヘルプのつぼみさん(愛称:つぼみん)の会話をボンヤリと聞き流している。
「あ!今、私のコト、マヌケな女だと思ったでしょ!」
「え?ええっ?確かに逝ってるコトはマヌケだと思ったけど、決してミユリさん自身のコトは…あわ!あわわっ!」
「ハイ!テリィご主人様からドンペリいただきましたぁー!」
あ!つぼみんが勝手にお屋敷のシャンパンを出して栓を抜く笑。
もちろんドンペリではナイんだけど今夜は出だしから想定外の出費だ。
いや、コレもお約束の範疇なのか。
僕がミユリさんのTO(ファン代表みたいなモノ)になってからもう数年。
最近は良くも悪くも以心伝心で全く隠し事が出来ない関係だ。
「でね、ソコへ電話すればイケメン声優さんとお話しが出来ルンですょ」
「あ、聞いたコトある。芸能事務所から声優さんが派遣されてルンでしょ?」
「今や石を投げれば声優に当たる時代だからな。あ、僕は要らない」
つぼみんはニッコリ微笑んでミユリさんと自分のグラスにシャンパンを注いで2人で乾杯。
お酒が弱い僕は自分の推し(てるメイド)が美味しそうにグラスを干すのを見て元を取る。
ま、ミユリさんがウィンクしてくれたからいいや←
「ソレで今度、艦ヲレとのコラボがあるんですょ」
「あら、つぼみんって艦ヲレやってるの?」
「山風にドップリとハマってマス」
艦ヲレは、ちょっち前に流行った艦コレの女子版。
旧帝国海軍の軍艦を擬人化したイケメン男子を操って太平洋を転戦する海戦ゲームだ。
プレイヤーの女の子は、大和や武蔵を名乗るイケメンキャラを集め艦隊を組んで戦う。
まぁ軍艦の数だけイケメンに囲まれるという、わかりやすい女子版ハーレムゲーム。
「ソレが最近、艦ヲレって変な噂がたってるのょね…あ、マツリ?お久しぶり」
「あらら、シャンパン?夕方から景気がいいのね。私もいただける?」
「私の御主人様にちゃんと御挨拶してね」
今宵の僕に続くお客第2号は…
どうやらミユリさんとは顔見知りのバリキャリ(バリバリ仕事するキャリアウーマン)系。
肩の張ったスーツにCAみたいな引っ詰め髪でシルバーフレームの細いメガネ。
その細いメガネを中指で小さな鼻の上に押し上げ僕に艶然と微笑み名刺を差し出す。
「はじめまして。オフィス・セイレーンCSOのアキノ マツリと申します」
「CSO?チーフ・エグゼクティブ・オフィサーならCEOですょね?」
「失礼、セクシャル・オフィサー、なの」
そして、彼女は自らの豊満なバストを抱きしめるようなグラビアポーズで腕を組む。
はだけたブラウスの下からのぞく胸の深い谷間が(恐らく)僕に向けて熱烈にアピール!
カウンター越しにミユリさんとつぼみんが息を飲み、そして、今回も事件の幕が開く。
第2章 テレフォンヒーロー
マツリCSOの話では、彼女は東京に無数ある声優スクールの1つとの提携に成功。
男性声優の卵を安く集め(勝手に)艦ヲレとコラボした女性専用のテレクラを開設する。
東京の日常に疲れた、専ら地方出身の腐女子相手に日々の癒しを提供するとのビジネスモデルだ。
ところが最近、彼女のお店のナンバークラス(稼ぎ頭)の若手声優が相次いで失踪しているらしい。
「ゲームが当たってブレイクしそうになると即いなくなっちゃうのょ」
「そういえば最近、艦ヲレのヨークタウンくんの声優さん、変わりましたょね」
「あ、彼は観光ビザが切れて…」
うーん、使用者側にも色々と問題はありそうだ笑。
とにかく!売れ始めた声優の相次ぐ失踪はCEO…ではなかったCSOとしては頭の痛い問題だ。
あ、艦ヲレの世界では、史実に基づき外国艦は敵役で、旧帝国海軍艦艇を擬人化したイケメンキャラ同士で相撲をとり勝敗を決する。
従って、敵役の外国艦キャラの声優には外国人声優がつくコトも多い。
うーん、ビザ切れとなると恐らくヨークタウンくんはアジア某国の御出身だね笑。
「あーあ。これからが稼ぎ時だったのに」
「あーあ。前の声優さんが好きだったのに」
「とにかく!あの子達はほとんどウチが育てたようなものなのょ」
アンニュイに溜息(吐息?)をつくマツリCSO。
タイトスカートからスラリと伸びたオミアシを組み直す。
チラリと何か(何?笑)見えたような気がして僕は気が気ではない←
そんな僕をミユリさんとつぼみんが世にも恐ろしい顔をして睨む。
全く話が前に進まない笑。
「マツリ、とりあえず貴女のオフィスを見せて頂こうかしら」
「あら、ミユリは未だ来たコトなかったっけ?」
「マツリさん!もう足を組み直すの禁止!」
全員の利害?が見事に一致して、僕達は彼女のテレクラを見学するコトになる。
☆ ☆ ☆
マツリCSO率いる腐女子向けテレクラは神田川に面した古い雑居ビルの4F(因みに1〜3Fは24時間営業の居酒屋)にある。
それほど広くないフロアいっぱいに昔のLL(語学)教室を思わせる1人用のブースが文字通り鮨詰めで並んでいる。
個々のブースの中には、マツリCSOに雇われたと思しき若き声優の卵達。
マイク付きヘッドホンをつけ、全員かなーり深刻な顔で虚空に向かって話しかけている。
「もう少し力を抜いてもいいんだょ。また週末に電話くれょな」
「ヲレは貴女が腐ってるコト、ちゃんと知ってるょ」
「あぁ、うっ!」
いざ聞き耳を立てて見ると、意外にもテレフォンセックスを思わせる会話は少ない。
会話の大半は「貴女という存在を認めて尊重する」コトに費やされているようだ。
つまり一言で逝うと「励ます」ワケだね笑。
しかし、中には頷くばかりでほとんど喋らないヒーローもいる。
あ、ココでは彼等はテレフォンヒーローと呼ばれている。
「よく間違われるけど、ヲレ達は単なる電話オペレーターじゃないんだ」
「おおっ!では何者?」
「トータルライフスタイル電話アドバイザーだ。叶姉妹の男性版、叶兄貴とでも呼んでもらいたい」
うーん、ソレじゃおっとり系のミカさんはともかく姉貴の方は怒ルンじゃないか笑。
しかし、まぁソレで彼の胸が分厚いワケは何となくワカったような気持ちになれる。
マツリCSOが僕達の相手をするために紹介してくれたのはサマーくんだ。
日焼けした顔にサラサラ茶髪という、昔流行った陸サーファーの亡霊みたいな男。
万事、自信満々に語ってくれるのだが、半年後に彼が駅ソバで丼を洗っているのを見てもおかしくない「何か」も持っている。
「キィラくん、突然失踪しちゃったの?」
「アンタ、誰?艦ヲレのゲーマー?腐ってる?」
「失礼ね!正常位ょ!」
つぼみんとサマーの困った会話には赤面するばかりだ。
因みに腐る云々は同性愛者(注意:同性愛ではない)を好むか否かの問いだ。
モチロン、正常位とは決して体位のコトではない。
念のため。
2人のやりとりから失踪した若手声優の名前がキィラであるコトがわかる。
なんか昭和なSFに出て来る侵略宇宙人の名前みたいだ。
「先週くらいからポチポチ休みだして週明けからは完全失踪って感じだな」
「消える前に何か話してなかったか?何かに悩んでいたとか?」
「水虫くらいかな。男ばかりの職場だから」
露骨に顔をしかめるマツリCSOの横でサマーはあくまで爽やかだ。
体育会系にありがちな男の世界で純粋培養された者の無邪気な発言。
僕は初めてサマーに親近感を覚える。
あ、でも僕はゲイじゃないから。
あと水虫でもないょ念のため笑。
「じゃサマー、コチラに知ってるコトは何でもお話しして頂戴」
「わかりました、CSO!あとは私の方にお任せください!」
「お願いね。私は経営会議があるから失礼」
え?テレクラの経営会議?
純粋にマネジメント的な関心から思わずマツリCSOの後をついて逝こうとする僕。
途端にミユリさんからは襟首を摘まれ、サマーからはシャツの袖を引っ張られる。
まぁミユリさんは間違いなくグラビア出身のマツリCSOを警戒してルンだけど(カワイイところあるよねウフフ)、サマーの方はなんなんだ?
「アンタら、本気でキィラを探してくれるのか?」
「うーん、一応、御期待には応える主義なんで」
「そうか…実はCSOには絶対に黙ってて欲しいんだが…」
爽やかなサマーが一転、顔を曇らせて声を潜める。
恐らくこのタイミングで「好きだ」とかアチコチで囁きまくってルンだろうなヤレヤレ。
なーんて思いがフト頭をよぎったコトは絶対お首にも出さずに、僕は営業用の神妙な顔でサマーの次の言葉を待つ。
意外にも彼はホントに話したものか暫し真剣に悩んだ挙句、必死にカミングアウト!
「じ、実は、この店はテレクラを語ったコールボーイ組織なんだっ!」
「やっぱし」
「ええっ?!知ってたのかっ?」
おいおい!こんなコト、とっくにお見通しだぜ。
そもそもテレクラって、男は店で女が電話をかけてくるのを待ち、電話商談が成立したら晴れて店外で、というシステムだ。
ただ店外でイザ!という時にナゼだかトラブルが多発しテレクラ嬢が受難するケースが社会問題化し業界は衰退する。
「その点、テレクラ嬢が男なら何かとトラブルも少なくていいんだ」
「でもチェンジする回数は女の方が多いらしいじゃない?」
「ホントによく知ってるな!(のね!)」
最後のセリフはサマーとミユリさんが異口同音でハモった結果だ←
「キィラは客思いのいい奴だったんだ」
「そうだろうな」
「なんとか無事に見つけ出してくれ。業界のためにも!」
サマーの逝う業界とはテレクラ業界か?コールボーイ業界か?
恐らく後者に違いない笑。
「それにしても何かキィラの消息情報とかないのかな?」
「そんなモノあるか。ヲレ達声優なんて、所詮は潰し合いなんだから」
「うーん私、キィラさんに会ってみ・た・い・な」
ミユリさんが人差し指を唇に当てて勝負角(彼女が自分を最も可愛く見せられると絶対的に確信している角度)を決め、サマーに営業をかける。
するとウンザリするほど効果はテキメンで1発でグニャグニャになったサマーは不思議な答えを口にする。
「そ、それなら…今夜サバゲーやらないか?」
第3章 聖都奪還レジスタンス
「ターミネーターだ!ターミネーターが紛れ込んでいるぞ!」
全身をプロテクターで固めた人類軍のレジスタンス戦士達が夜の秋葉原に散開する!
僕の名はテリィ・コナー。
人類抹殺を図るスカイネットが放ったターミネーターを倒し、聖都アキバを奪還するのが任務だ。
「気をつけろ!敵は人間と見分けがつかないぞ!」
「最新型のターミネーター30000型だ!」
「わっ?や、やられた!」
またひとり、仲間が撃たれてプロテクターを激しく明滅させて脱落して逝く。
僕は素早く電柱の影に身を隠してレーザー突撃銃を握りしめる。
スターリングラードの狙撃兵の例を引くまでもなくココは焦って先に動いた方が負ける。少なくともターミネーター役が誰なのかがわかるまでは、ジッと息を殺して待つに限る。
サバ(イバル)ゲー(ム)と呼ばれる戦争ゴッコがオトナの遊びとして市民権を得てからもうずいぶん経つ。
ココ秋葉原でも、夜な夜なサバゲーファンが集まっては激戦を繰り広げている。
夜の秋葉原は、近未来の戦場を模したテーマパークというワケだ。
サマーの話によれば、僕達が探しているキィラは根っからのサバゲーマニアらしい。
秋葉原から姿を消した今も、このゲームにだけはコッソリ参戦しているとの噂だ。
そこで、同じサバゲーファンのサマーからプロテクターを借りミユリさんと参戦してみたんだけど…
いきなりイベント発生で戦場はもう最初から大混乱だ!
「ミユリさん、何処?未だ生きてる?」
「誰だ?黙れ!このラインは全員がモニターしてるぞ!」
「カチ、カチ」
うっかりプロテクターのトランシーバーでミユリさんを呼んで怒られてしまう。
でもミユリさんはトランシーバーのスイッチを入り切りして「生存」を知らせてくれる。
野山で辺り構わずBB弾を撃ち合うのと違い、アキバのサバゲーは市街戦スタイル。
プロテクターのセンサー目掛け銃を模したレーザーポインターで撃ち合うシステムだ。
センサーにレーザーが命中するとプロテクター全体が激しく明滅してゲームオーバー。
これなら弾に当たった、いや、当たってないという古典的なモメゴトも回避出来る。
もちろん弾が何発も当たっているはずなのに頑として戦死をコールしない「不死身の兵士」も生まれないワケだ。
とにかく、メカニカルなプロテクターを装着しただけで、なんだかSF映画に出て来る未来兵士になったみたいで高まるょね笑。
「ヒット!」
「あ、やられた!お、お前は…」
「シッ!静かに!」
突然、僕のプロテクターが明滅する!
残念、撃たれたようだ!
しかし、電柱の影に隠れてた僕をよく見つけたな。
と、黒い人影が、小走りで僕の傍らを駆け抜けて逝く。
コイツが今宵のターミネーター役のようだ。
ん?よく見たらサマーじゃないか!
サマーはバカみたいにプロテクターを明滅させて立ちすくむ僕に、指2本を唇に当て静かにするように指図すると、ダストボックスの影の闇に身を隠す。
数秒後、サマーは鈍臭い僕が見ても明らかに不用意に飛び出した別のレジスタンス兵士のプロテクターを明滅させる!
おーい、誰か!ターミネーターがココにいるぞ!と、その時…
「Hast la vista, baby!」
「えっ?ぎゃ!」
「MAID, but not obsolete」
音もなくサマーの背後に忍び寄った黒い影が彼のプロテクターのセンサーにレーザー銃を押し当てて引き金を引く!
次の瞬間、サマーのプロテクターが激しく明滅!
呆然とするサマーを押しのけ、黒い影が僕に微笑む。
おおっ!ミユリさんだ!
人類レジスタンス軍の勝利の女神!
「ミユリさん、遅かったじゃないか!僕、やられちゃったょ!」
「ごめんなさい。でも誰がターミネーターか見極めたくて」
「ええっ?!ま、まさか僕をオトリにしてたの?」
ひどい話だ笑。
出逢った頃は「私の御主人様に手を出さないで」が決め台詞だったのに。
僕のために他のメイド(リボンさんだょ)とキャットファイトまでしてくれたんだけど。
でもチョロっと舌を出して笑う横顔が無敵にカワイイからまぁいいや。
ところが、そのとき!
「わ!誰だ?お宅ら?た、助けて!」
「なんだ?どうした?」
「撃たれたら大人しくセイフティゾーンへ行けょ」
声の方を見ると1人のゲーマーが4〜5人の人影に連れ去られようとしている。
おや?彼のプロテクターは明滅してないぞ?
しかも数人がかりで彼を連れ去ろうとする連中はプロテクターすらしてない背広姿だ。
こ、これは?
最近よく聞くサバゲー狩り?
「おい!サバゲー狩りだ!戦友を救え!」
「ええっ?そりゃ大変だ!」
「休戦!一時休戦だ!戦友を救出!捕虜はとるな!」
隠れながらとはいえ、基本的には街中で我が物顔で銃を乱射?するサバイバルゲーマーに眉をひそめる人は意外に多い。
サバゲーを楽しんでいたら、突如大勢に囲まれた!などのトラブルも後を絶たない。
まぁ万事が不寛容な風潮が幅を利かす昨今、どんなコトにも必ずアンチはいるものだ。
実際、過去には「戦友」が拉致されかけたコトもあったらしい。
以来、そんな時は直ちに一時休戦して全員で救出するのが決まりになっているそうだ。
「落ち着けょ!ヲレ達は、ただゲームをしてるだけなんだから」
「とにかく彼を離してやってくれ」
「おや?お宅ら…ヲタクじゃないな?」
見れば背広姿の拉致する側は、なかなか屈強な男達のようだ。
明らかに訓練された動きでキィラを羽交締めにし連れ去ろうとする。
そこへオモチャとは逝え、全身プロテクターにレーザー銃を装備した未来兵士が闇夜から続々と姿を現す。
さすがにコレにはビビったのか動きを止め、無言で顔を見合わせる。
リーダー格と思しき者の目配せでキィラを離し無言で退散する。
コイツら、いったい何者?
どっかのPTAかな?
「わわっ!」
「ぎゃっ!」
「ひ、卑怯者!」
次の瞬間、その場にいたゲーマー全員のプロテクターが激しく明滅する!
助けられたハズの「戦友」が居合わせた全員に向かって突撃銃を乱射する!
居合わせた人類レジスタンス軍の兵士は、たちまち全員が戦死。
あ!助けた奴がターミネーターだったのか!
聖都アキバの奪還はあっけなく失敗。
サマーだけが手を叩いて大喜びしている。
「でかした、キィラ!さすが情け無用のターミネーター!」
「なんだ、サマーか?もうやられてたのか?」
「今宵は人類軍に手強い女戦士がいてさ」
そう言いながらサマーはターミネーターとハイタッチ。
そして、僕とミユリさんに紹介してくれる。
「テリィさん、ミユリさん。このターミネーターがキィラです」
第4章 腐女子の旗の下に
サマー、キィラ、ミユリさんに僕の4人でマチガイダに流れる。
あ、マチガイダって逝うのは僕達のアキバのアドレスでチリドッグが美味いホットドッグステーションだ。
実は4人共、ヘッドセットにプロテクター、手にはSFチックなレーザー銃という重装備。
しかし、まぁソレがアキバ的日常というコトなのか店内の常連達は振り向きもしない。
フト見ると店長のユーリさんはライダーベルトをしている←
「サマー!久しぶりだな。お店のみんなも元気でやってるのかな」
「そんなコトよりキィラ、ずいぶんと危ない連中とつるんでルンだな?奴等、誰だょ?」
「…実は参ってルンだょな」
「ただの(一)般ピー(プル)じゃないょね?」
ヘッドセットを取るとキィラはイケメン。
ただコールボーイを辞めてから少し過食気味とかで端正な顔が微かに丸みを帯びている。
キィラの話では、サバゲーの最中に自分を拉致しようとした連中は、恐らくセイトー絡みの人間だという。
セイトー?南大西洋条約機構(SATO)?
いや、「政党」だ←
「サマー、覚えてるか?みんなに一芝居打ってもらって別れたストーカー女のコト」
「げげっ!あのキィラが散々手を焼いてた永田町のお嬢様?」
「そうそう。実はあの女、どうやら今度、立候補するらしいんだ」
始まりは、よくある話だ。
都市生活に疲れた女が声だけの恋人を求めてメンズテレクラの常連になる。
しかし、声だけのお付き合いは、ほどなくカラダだけのお付き合いになる。
カラダだけのお付き合い。
そう、テレクラボーイズにとっては単なるビジネス。
しかし、女はソコにリアルな愛を求める。
キィラの苦しげな告白が続く。
「彼女は…妄想彼氏を追うストーカーになってしまったんだ」
「よくある話だね、そういうコトは。そこでヲレ達の出番だ」
ある日、白昼のパーツ通りを堂々と腕を組みデートするキィラと彼女の横に真っ黒なSUVが乱暴に停まる。
中から黒覆面の男達が飛び出す!
黒覆面達は、あっけにとられる彼女の眼前でキィラを羽交い締め!
さらに、キィラをSUVに連れ込むとそのまま猛スピードで走り去る!
後には呆然と立ち尽くす実は腐女子のストーカーが残される。
「アレはホント上手く逝ったよな!ヲレ達は白昼堂々とキィラを拉致したんだ」
「あの姉ちゃん、ワケもわからず呆気にとられてたょなクスクス」
「あの日を境にスマホもアカウントもみんな変えて、それっきりってワケさ」
ところが、拉致?後、暫くしてから何処で誰がどう調べたのか、新しいスマホに無言電話がかかるようになる。
なんとなく街中でも誰かに監視されているような気配を感じる。
やがて、ある日、店の電話にキィラ宛の指名通話が入る。
指定された待合せ場所に逝くと、さっきのような背広姿の男達がいる。
カフェのテーブルに大金を積まれ秋葉原から姿を消すように逝われる。
「誰かが彼女を候補に立て選挙を戦う決意をしたというワケだ」
「え?何の候補?何の選挙?」
「ソレは僕にもわからない」
ココでサマーが口を挟む。
「じゃ、さっきの連中は、その政党の運動員だったのかな」
「いや、知らない顔だった。恐らく対立候補の陣営じゃないか」
「なぜ?あ!キィラから女性候補のスキャンダルを買うつもりだったのか!」
キィラが口を挟む。
「確かに秋葉原は夢を売り買いする街だ。でも誰が乙女の寝物語なんか売るかょ」
「そういう話か!ちくしょう、ヲタクを舐めやがって!」
「しかし、選挙って、何の選挙だろう?」
その夜、僕達4人は頭をひねり、答えのないまま別れる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コレで翌日、海の向こうで大統領選に日系の女性候補が出馬!
とでもなれば海外TVドラマを地で逝く展開だったんだけどね。
実際は、僕達の国の与党の大物とやらが突然の引退を表明する。
時をおかずして東京1区の衆議院議員の補選というのが始まる。
まぁコレはコレで当事者や政権にとってはタイヘンなコトだったらしい。
でも、僕達には正直なトコロ、いまいちピンと来ないょね笑。
というワケで、たちまち秋葉原の街並みには候補者のポスターがあふれ返る。
僕達の全く関知しない次元での盛り上がりが騒々しく街を覆って逝く。
そんな最中、ドンキ秋葉原の前でポスターを見たキィラ。
たまたま傍らを歩いてた僕に何とも間抜けな感じで呟く。
「あれまぁ。彼女だょ」
「ええっ?清楚系のお嬢じゃないか!とてもBLなコールボーイに溺れてたとは…」
「政治家って見かけで判断しちゃいけないんだな」
その通りだ笑。
しかし、刮目すべきは彼女の選挙戦略だ。
お嬢様イメージ?を逆手にとり選挙戦の冒頭で自らヲタクであるコトをカミングアウト。
以降は何と積極的に「腐女子代表」を標榜して戦う作戦に出る。
主に30代独身の都市生活者を税制などで優遇する政策を打ち出す。
うーん、しかし。
彼女は厳密には腐ってない(BLではない)んだがなー。
「しかし、まさか当選するとはなぁ」
「しかも激戦の東京1区を歴史的大差で制するとは!」
「よほど浮動票を食いまくったんだねぇ」
東京1区(千代田・中央・港区)は地盤に頼れない典型的な浮動票選挙区だ。
彼女は、ヲタクのメインストリームである30代の独身男女にターゲットを絞る。
彼女が打ち出す政策パッケージは、結果として空前の都市型浮動票を呼び込む。
「コレは風が吹き山が動いたどころではない。地軸がズレて山脈が出来たのだ」
コレは官邸筋が「あくまでもオフレコ」との条件で苦しげに吐露した敗戦の弁。
政権が総力を挙げて推した官僚出身の候補に彼女はダブルスコアで楽々と圧勝する。
「ハイ!そこのメイドさん達、カメラに目線ください!スタンバイ!」
「先生の横に並んで!ハーイ手を振って!」
「アキバのみなさーん!ボク、当選しちゃいましたー!!!」
JR秋葉原駅の電気街口では大型選挙カーの上から、今は先生と呼ばれる立場となった彼女が、集まった群衆に呼びかける。
「勝利の第一声は電気街口で!」
ソレが彼女陣営の作戦、いや、彼女自身の偽らざる思いだ。
そんな喜色満面の彼女の周りを秋葉原のアイコンであるメイド達が彩る。
もちろん、彼女の隣で集まったヲタク達に手を振るのほミユリさんだ。
「テリィさん、ミユリさんって脱ぐともっとカワイイだろ?」
「ええっ?ヲレだって脱ぐとスゴいんだぜ?」
「なにぉ?!それならヲレだって!」
僕とサマーが不毛な言い争いをしている間も電気街口に集まるヲタクの数は増え続ける。
勝利集会はますます盛り上がって逝く。
目を凝らせば、そのほとんどは男は所謂サエないアキバ系ばかり。
女は…よくわからないけど、何処か腐女子っぽい気もする笑。
いずれにせよ、みんな三十路に迷い込んで、今回初めて投票をしてみましたって輩ばかりのようだ。
しかし、そんなヲタク達の票が「彼女」という奇跡を生む。
ヲタクの票を如何に吸い上げるか、ソレで国政が動く時代が来たのだ。
「これから、この国を動かして逝くのはヲタク民主主義だ」
キィラがボソッとつぶやく。
しかし、僕とサマーはくだらない言い争いを続けていて、時代を看破した彼の発言に全く気づかない。
おしまい
今回はイケメンテレクラとそこに集う売れない男性声優陣、グラビア崩れのテレクラ経営者、実は腐女子な政界のサラブレッド、深夜の秋葉原を疾駆するサバイバルゲーマーなどが登場しました。
秋葉原を舞台とする青春群像劇ですが、今回は政界方面に少しフィールドを広げてみました。引き続き、色々な方面へ活躍の場を広げて行きたいと思っています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




