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第三者の偏愛

作者: やなぎ好

 教室には夕焼けの陽が入ってきていて、直接目に入ってくると鋭い

痛みが走った。

 近くの席に座って教室全体を見渡す。

 教室には誰もいない。時計の針は5時を指していた。

 外からは鳥の鳴き声が微かに聴こえる。遠くの方からは運動部の練習している声がここまで届いていた。


 自分の足元にある生徒の死体を足でつついてみる。

 彼女は頭から血を流し、その血は周りの机や椅子の脚まで広がっていた。

 自分が殺したわけではないが、他殺だと思う。理由は彼女の近くに転がっている黒板消しクリーナーだ。角には血が付いていて破片が散らばっている。

 どうなって仰向けに倒れたのか知らないが、彼女の顔は知り合いのものではなかった。

 スカートの色から高校生であることがわかる。

 中高一貫校であるため、スカートのチェックの色が赤だと中学生、紺だと高校生と、分けられている。

 自分が高校1年生であることから、彼女は先輩なのだろう。同学年の人にここまでの美人はいない。


 そう、彼女は美人だった。

 ここ、事務棟4階の教室は普段授業で使われない。

 放課後に人気がないトイレを使おうと、さまよっていたら彼女を見つけたのだ。

 驚きはしたが、怖いという気持ちはあまりなかった。それよりも彼女の姿に目を奪われた。

 魅入ってしまったと言った方がいいだろう。


 綺麗な顔から鮮血が流れ出ているのは、不釣り合いで、しかしとても美しいと感じた。

 自分でも狂っていると思う。すぐに先生を呼ぶべきだろう。それか、見なかったことにして帰ればいい。どちらにしろ無関係な事に首を突っ込むことはない。

 そんなことを考えながら、扉を開けて、外を確認し、そして閉めた。

 まだ自分は教室の中にいる。

 携帯を取りだし、彼女を撮った。

 スカートを捲り、ワイシャツのボタンも開けた。

 念をいれてティッシュを挟み、指紋を残さないようにした。これが証拠に残るのかどうかは分からない。

 ただお気に入りの動画をトイレで見るより、断然こっちのほうが興奮すると思い、その気持ちの方が強くなっているのが解る。

 脳が麻痺して鈍っているのだろう。

 正常ではないのが判断できる。

 とりあえず写真を撮りまくった。

 触りたい気持ちもあったが、それはさすがにリスクが高いと感じ、出来なかった。


 帰りは頭がボーとしていて、あまり記憶がない。

 気づいたら自分の部屋にいた。

 携帯を起動すると、あられもない姿の彼女が写っている。

 その写真を見ていて、ふと思った。

 彼女の名前はなんと言うのだろう。

 彼女とは友達になれたかもしれないのに。

「大好きだよ」

 そう言って画面にキスをした。

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