モデル『 』-1
ガチャっと控え室の扉を開けると、事務所の皆川さんが自分の仕事をしながら『俺』の仕事が終わるのを待っていてくれた。
「皆川さーん!今日も無事に終わったよー!」
「…そ?お疲れ様」
ちらりとこっちを見て、またすぐ仕事に戻るザ・クールビューティーな雰囲気を漂わせてるのが、『俺』をこの仕事に誘った張本人だ。
「ねぇー俺着替えたいんだけど、皆川さんちょっと席外してくれない?」
さすがに年頃なので、美人なお姉さんの前で着替えるのは少し気が引けるんだよな。
「あんたの裸なんか見たところで別に何の感情もわかないわよ」
「いやいや、そこまで言わなくても」
こっちを見ないでズバッと言われるから、ちょっとメンタル削られるんだよなー。
ひらひらとしてキラキラ輝ける服を脱いで、いつも通りの等身大の『姿』に戻る。
夢の世界から現実に戻るような、嘘の姿から本当の姿に変わるような違和感はまだ直らない。
でも一度病み付きになると抜け出せない、不思議な世界に未だ魅力を感じ続けてしまっているからこの仕事はやめられない。
いや、まだなんとか『ばれない』でやってける。
いつまで続くかわからない、危険で魅力に溢れた世界。
俺はいつまでこの世界にいれるのかな。