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1-3 旅人達の村③

 

「あそぶって……これ?」

『それは赤カブ!』

「これ?」

『それはめかぶ!』

「これ?」

『たんこぶ!』

「ジェイコブ?」

『誰よ!』


 マシロは既に首を縦に振って了承するという天使的行動をしていたが、要領がつかめない。思わずコントをしてしまった。


『しょうがないでしよ! 何十年も誰も来なかったんだから、久々にそういうことしてみたくなるじゃない!』

「いや、拒否してるわけじゃねーよ。何か企んでるんじゃねーかと」


 思っているが、本心なのはわかっていた。先程の仕返しも込めてどうせならからかってやっただけだ。

 しかしおれの行動は天使マシロによって止められる。水の精の手を引いて、湖の中に入ろうと言うのだ。


『えっとマシロちゃんだっけ? いいの?』


 マシロはコクりと頷いた。そしてさらに強く手を引く。


「おいおい、こいつはおれ達の出逢いを恨んで飯を食わせなくしようとしたやつだぜ?」


 マシロはおれの言葉に対し首を横に振った。そして、懐から木の棒を取りだし、地面に文字を書き始める。


“寂しかっただけ”


 マシロの言葉はそれだけだった。それが誰にたいしてなのか“誰のことなのか”、おれには考えられるようなことではない。


『マシロちゃ~ん!』


 水の精はマシロに抱きついた。白色のきれいな髪が巻き上がり、ふんわりとした陽の匂いがおれの鼻孔を突く。

 天使が抱かれている様は正に天使。おれのボキャブラリが貧弱になるほどの衝撃に、おれはうっかり理性を失いそうになった。魔王は色々激しいのだ。


『ほら、そうと決まればレッツゴー!』


 水の精がマシロを連れていこうとするがそれは困る。


「待て待て、お前はいいかもしれないがマシロはそのままじゃ駄目だ」

『お前じゃない、私はウンディーネ! そのままじゃ駄目ってどういうこと?』

「へ、見てろよウンディーネ」


 おれの魔力の高まりに気づいたウンディーネ。魔王らしくどす黒く色塗り不適な笑みを浮かべ、おれはマシロに魔法を掛ける。


「マシロの服を繊維レベルで網み直す。耐水の魔法を掛け、体の動きを邪魔しない程度に天使レベルを上げる」


 着ていた質素な服におれは魔法を掛けた。

 この世界に干渉するということが、つまり魔法を使うということ。この世界にある物ならば、おれは“神”にも等しく形を変えることができる。

 服の繊維をほどき、見えてしまうマシロの体からどうにか目をそらし、ウンディーネの拳骨を回避する。マシロの服はそうして耐水の水着へと変貌していく。

 肩と腰回りに純白のフリルをつけ、少し染色した胸の部分とへそ回りを一番肌によい素材に変える。何よりも見た目を重視し、尚且つ過激ではない素朴なもの。

 巷ではやれ幼女が、やれあられもない姿にと騒ぐ輩がいるが、それは断じてあり得ない行為である。幼女が幼女足るのはその素朴さから来る天使力のためである。幼女の枠を越えるような個人的感情の押し付けは、只の着せ替え人形であり極論を言えば強姦だ。 そんなものは許されるわけがない。

 そして、おれの魔法によって余った布でマシロの髪を一つにまとめ結う。ポニーテールの完成だ。


「名付けて、究極魔法【抱擁の正しき在り方エンジェル・カンパニュラ】」


 ウンディーネがおれに焦点さえ合わせなくなった頃、マシロは湖へと入っていった。それから、おれ達は日が暮れるまで文字通り遊び尽くした。


『ほら、水草に乗れるのよ!』


 水面を駆け回り、


「ま、待てよ! ずるいぞ!」


 水の加護を百パーセント用いた鬼ごっこ。鬼が移動しない特殊な鬼ごっこだ。


『私だって水魔法には自信があるの』

「スゲー、空中展望室だ!」


 地上何百メートルというところまで持ち上げた水の中で優雅に泳ぎ回り。水で作った城を使ってのお姫様ごっこにも付き合わされた。


『あ~楽しかった~。マシロちゃんは泳ぎが上手ね』


 どうやら記憶がないといっても泳ぎや徒競走などは出来るようだった。おれが造り出したボールでも遊べるようで、カラダが覚えていたのだろう。


「もう空が茜色だ。そろそろおれ達は休みたいんだが……マシロはどうする。ここに残るか?」


 おれは一つの決心をした。

 そりゃあマシロは天使のように微笑ましい絶世の美幼女だが、この半日行動を共にしてわかってしまった。こいつはおれなんかといるよりも、ここで毎日遊んでいられる方が幸せだ。

 おれのことなんかよりも、マシロ自身が幸せになるなら快く去っていける。


『マシロちゃん、どうする?』


 黙ったまま動こうとはしない。それが、答えのようなものだった。


「服は戻しとくぜ。それとこれが着替えな。風邪引くなよ、それと言いたいことがあったらすぐに伝えるんだぞ。お前表情読めないからな」


 マシロの服を戻し、おれは次の目的地へと歩み始める。


「そうだウンディーネ、悪かったな。湖に魔法を使ったりしてさ」


 最後に謝罪をしたその時だった。

 腰にとんと何かがぶつかり、お腹の辺りまで伸びてくる細い腕。白く儚いそれはマシロの両腕だった。おれに抱きつくようにして走ってきていたのだ。


「マシロ……お前……」


 理性を吹き飛ばすには充分なほどの本能が襲いかかってきたが、今はそんなことに構っていられない。鼻血が吹き出しそうだったが、無理矢理魔法で抑え込む。


『マシロちゃん、今日はありがとね。またいつでも遊びに来て。私これでも長生きしてるから、あと百年くらいは余裕で待てるよ』


 ウンディーネはマシロにそっと手を振った。マシロだけに。


「いいのか? おれと一緒にいても良いこと無いかもしれないぞ?」


 マシロは首を横に振った。


『いい加減気づきなさいよ変態。マシロちゃんにはあんたみたいな保護者が必要なの。性格は最悪だけどね』

「……そっか。ならもう一度頼むよ。おれの目的はこの世界の人々を救う旅をすること。この世界全てを救いきるまで、一緒に旅しようぜマシロ」


 差し出した手を小さな手が握り返す。おれ達はこうして、運命の歯車を回し始めた。


『ねえ、ちょっと』

「ん?」

『“存在し得ない存在”は、この世界に長居できない。私が言えるのは恐らくそれだけよ』

「え?」


 ウンディーネは、背を向けたおれに突如語った。『存在し得ない存在』とは、つまりマシロのことか。

 マシロへのその言葉がどういう意味なのかはわからないが、ウンディーネの心を見抜く力は本物だ。恐らく世界の理のことも考えて、おれ達にヒントをくれたのだろう。


「サンキュ、じゃあな」

『な、なによその笑顔。気持ち悪いわよ』


 したらば暫しのお別れを。

 おれ達は歩みだした。おれはこいつのためにも世界を救う。たとえこの旅がどれ程壮絶なものでも、おれは決して救うことを諦めない。記憶を無くして行き場のないこいつも、そして全世界の民達も、全てを救って見せる。

 魔王の名に懸けて。

 ウンディーネも湖に戻って、ようやく歩き始めたおれ達。マシロはまるで二人きりになったからこそだというように、おれの手を引っ張った。


「なんだ?」


 木の枝で文字を書き始める。書かれた言葉は、驚くべきものだった。


“少しだけ思い出した”


 続く言葉は、とてもマシロほどの少女が書くには重すぎる言葉だった。


“私には殺さなければならない者がいる”


 運命の歯車は、一体いつから回っていたのだろうか。そして、どこで狂ってしまったのだろうか。これは、おれ達の世界を救う旅をまとめた短い物語である。

 


ここまでのご閲覧ありがとうございます!

というわけで「ロリコン魔王と少女の旅」が始まりました。何の捻りもないタイトルですみません。次回から不定期更新となりますが、年内には上げたいと思います。


次回「怠惰の村」

お楽しみに!

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