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1-1 旅人達の村①

無口な幼女とのコンビとかそういったアレがアレで、つまり好みなので書きなぐってます。文才も展開力も人並み以下ですが出来ることはやっていきたいなと思います。よろしくお願いします!

 

 改めましてこんにちは、魔王です。世界広しといえどこのような紹介ができる存在というのは、およそおれだけだと思う。しかし断言しよう。


 この世界に魔王はいないのだ、と。


 もちろんおれの親父(おやじ)がいわゆる本物の魔王なわけなので、正確にはおれは魔王子と呼ばれる者である。それが前言に繋がるわけでもないが。

 勇者を殲滅し終え、世界の終末をさあ迎えるぞと言うところでおれが魔王を引き継いだという成り行き。

 勿論おれに秘められた魔力を使えば世界を七回ほど滅ぼせるし、少しくらいなら次元も歪められる。そんなことをすればこの世界どころか他の世界にまで影響を与えてしまうが、しかしそれだけの力がおれにはある。

 この世界を滅ぼそうと親父が決意したその日から、勇者との壮絶な戦いは始まった。前述の通りおれと親父の二人で事足りて、世界は掌握したが、しかしおれには究極の悩みがある。

 もうこれ以上世界を滅ぼしたくはない。おれはこの世界が大好きなのだ。

 だからこそこの世界を壊したくはなく、むしろ救いたい。だから、親父から魔王を引き継いだおれはこの世界を救い直すべく立ち上がった。おれは魔王だ。そして魔王がいなければ世界は平和だ。

 だからこの世界に魔王などいないのだ。


 * * *


 爪先で水面をつつく。龍皮でこさえた耐炎の靴は水にも強い。足先から伝わった振動が水へと届いて波紋を作り出す。深く先の湖底を見せてくれる透き通った湖にそっと力を流し込んだ。

 “魔法を使う”ということは“世界に干渉する”ということ。“魔法”は“神”の力の一部だ。持つべき魔力の量によって全ては決まり、俺ならば足先一つ動かすという小さな所作だけで陸を作ることができる。

 数々浮き上がってくる足一つ分の陸地たちをまじまじと眺めてから、おれはそれらを渡っていく。


「ほいっほいっと」


 右に左に限りなく続くような湖を割ったおれは、生み出した陸を歩く。目的は湖畔に佇む孤島。おれが作りだした陸のおかげで渡れるようになったそこへ向かって歩くが、勿論理由がある。


「お嬢さん、こんにちは」


 不審者扱いされないように邪気のない微笑みで。

 孤島には巨木が一本しか存在せず、この湖の精霊が住むと言われる場所。その巨木に寄りかかるようにして眠っている少女に、おれは語りかける。

 腰まで伸びた純白の髪と華奢で透明感のある肌。健やかに眠る少女は本当に気持ち良さそうだった。うっかり手を出してしまいそうなほどに。

 魔王とはいってもおれはまだ十七だ。お年頃だ。可愛すぎる少女はもちろんストライク。ロリコンの本能に目覚めてしまった。


「グヘヘ、可愛いねぇ……じゃなくて、お~い大丈夫か? こんなところで寝てたら風邪引くぞ」


 この麗らかな晴天の下で熟睡する謎の少女。本当に気持ち良さそうで、それでいて薄幸を漂わせ、そして何よりも多くの悲哀に満ちている。


「あちゃ~こりゃ起きねーな」


 流石の魔王であるおれ様にも、眠りから覚ます魔法は使えない。そんなもの必要ないし、どちらかと言えば永遠に眠らせるタイプだ。という冗談はさて置いて、どうにもならないこの状況。


「しかし可愛いな~」


 無意識のうちにその少女の頬に触れた。


「んっ……」


 そして、目があった。


「でゅえああああああ!」


 声にならない声をあげ、おれは後ずさる。瞬きしまくり、心臓ばくばく、過ったのは逮捕される姿。おれ、なにもしてません。勝手に目覚めました。


「おはよう、ハロー、グーテンモルゲン!」


 試しに声をかけて遠くから観察する。瞳の色は赤色。ぱっちりとした瞳は宝石を埋め込んだような輝き。寝起きだからこそ涙に包まれ、それはもう美しい。何より幼女というところで既に満点。


「どどどどどうしたのかな~? こんなところで寝てたら風邪引くよぉ~?」


 おれにとっての満面の笑みを浮かべたが、そういえば昔二度とその面を見せるなと言われたことがある。犯罪を匂わせるような微笑みだとか何とか。しかしまあ、この少女は無反応だ。というよりは多分、


「君もしかして、喋れない?」


 ということなのだろう。少女は否定せず、じっと見つめるままだ。


「お父さんとお母さんは?」


 まるで人形のように動かない。


「何処に住んでるの?」


 微動だにせず。


「お名前わかる?」


 名も無き少女なのだと思っていた。しかし今の質問で、少女はすっと上体を起こした。とても持ちやすそうな枝を見つけて、少女は地面に何かを描く。


「“マシロ”。君、マシロって名前なんだね?」


 おれの問いに、少女は首を縦に振って肯定した。だとするならば言葉は通じるし、少女はおれと意思疏通が出来る。

 可愛い少女マシロは、じっとおれを見つめる。そうだった、まだおれのことを何一つ明かしていなかった。


「おれの名前は……」


 おれを見つめる瞳がまぶしい。ルビーを散りばめたような瞳の光が、単純な好奇心に包まれていて、至極可愛い。可愛すぎて、言葉が詰まった。


「そう、エクス! おれはエクス・ブライト。よろしくなマシロ」


 一瞬思考が止まってしまうほどの可憐さだったようで、素直で心清きおれはまんまとやられてしまった。


「なあ、お前どうしてこんなところで寝てたんだ? ていうか、ここにどうやって立ち入った?」


 ここは湖畔に佇む孤島。おれは魔法で道を作ったのでまだしも、マシロは最初からこの島にいた。とてつもなく不自然だ。


“わからない”


 マシロは地面にそう書いた。小さな手のひらで木の棒を使う姿が、やはり可愛い。抱き締めたくなっちまうや。そんなことよりも。


「名前以外に何か覚えてることは?」


 とても気になっていた質問をした。

 両親についても反応を示さなかった辺り、こいつは施設や何かで育った孤児の可能性が高いと思う。だとしたらそこで働く人間が探している可能性がある。

 この子とお別れするのはさみしいが、一刻も早く安心させてやりたい。この子の幸せが、健全な意味でおれの幸せでもあるのだから。そう、健全な意味で、だ。


「“わからない”か。どうしたもんかね~」


 どうやら記憶喪失のようだった。となると、どこかで保護してもらわなければならない。この世界で安全な場所でだ。

 しかし時は、魔王対その他の対戦も終わった正にその頃。安全もなにもこれからさらにひどい時代へと移っていく。それこそおれがその元凶なわけで、世界を滅ぼすのはおれ次第というわけなのだから余計に困る。しかし、答えの方は先に決まっていた。


「なら、おれと一緒に来いよ。訳あっておれも旅してんだ」


 おれの顔と太陽を重ねて覗きこむと、マシロは眩しくなくなったようだった。こちらを見上げることが出来るようになったマシロは、宝石のような赤々(あかあか)としたその瞳をこちらへ向ける。可愛い。

 しかし、先ほどのお誘い云々に下心は無い。断じて無いぞ。おれはそもそもこの世界を壊したくなど無い。朝目覚めたときのあの澄んだ空気、静かな時間の中で聞こえる畑を耕す音、外で遊ぶ子供達の笑い声。どれを取っても幸せに包まれているその生活を、おれは奪いたくない。

 おれは悪の魔王だが、それでもこの世界を滅ぼしたくはない。たとえおれの存在意義が無くなったとしても、この考えを曲げることはしない。


「訳っていうか人助けの旅。そのうち何か思い出せるかもしれねーしな」


 右手を差し出す。その手をとれば、マシロはおれと運命共同体になる。他意はないが、下心は少しあるかもしれない。等とは口に出せるはずもなく、おれはただ待つことしかできない。

 極論を言うとおれの傍にいればまず安全だ。最早その他扱いされる程に成り下がったやつらは、危険ではないにしろ安全ではない。

 だからこそ、このおれのビューティフル・アルティメット・ギャラクシー・ユナイテッド・エストワール・ハンパナイ・ロリコンパワーで、こいつを救ってやる。


──パシン

「パシン?」


 ぱしん、そう音がした。おれの手が先ほどのように伸びてはおらず、マシロの小さな手が逆に伸びていた。叩いたあとの所作で、おれの手にやって来た痛みが我に帰してくれる。彼女はおれの差し出した手を、寸分の狂いなく叩き返したのだった。


「……え?」


 見つめてくる瞳の赤は、業火のように強みを増していた。


「行きたく、ない?」


 縦に首を振って頷いた。

 おれのビューティフル・アルティメット・ギャラクシー・ユナイテッド・エストワール・ハンパナイ・ロリコンパワーでは駄目だとでも言うのだろうか。

 確かにおれのビューティフル・アルティメット・ギャラクシー・ユナイテッド・エストワール・ハンパナイ・ロリコンパワーにはそれこそ猫の額ほどの下心があるかもしれない。

 しかし、それはマシロちゃんが、いやマシロたんが可愛いからでは無かろうか。おれでない誰かにも、その猫の額ほどの下心は沸くはずだ。


──ぐううぅぅぅ


 続いて鳴ったのは、聞き覚えのある身近な音だった。よく空腹になったときに出るあの音なのだが、おれの音ではない。


「腹、減ってんのか」


 マシロは、少し渋ったように俯いた後首を縦に振った。可愛い。


「近くに村があるんだ。とりあえず腹ごしらえだな」


 もう一度差し出したその手を取ってくれたマシロを、おれは守りたいと思った。たとえ下心を見抜かれて、そりゃもう敬遠されていても、おれはこの子を放っておけない。


「行こうぜ」


 おれたちの歪んだコンビは、そうしてこれからの旅の一歩を踏みだした。


 * * *


「ここら辺の宿場にもなっている通称『旅人達の村』だ。ほんとの名前は知らんがそれなりのトコだろ。何度か寄ったことあるけど、ここの六ツ足ポークの丸焼きは絶品だぜ」


 おれの腹まで減ってきた。

 隣国へ馬車を走らせるために道を成し、いつしかここが休憩所となった。それから徐々にここを拠点とするようになり、気づいた頃には村が出来ていた。

 宿に寄った商人たちの様々な食の知識と材を活かし、いつしか名産品とまで呼ばれるものも生まれた。人が年月をかけて築き生まれた村に、壊す側のおれが足を踏み入れる。皮肉をたっぷりと含ませた笑い顔しか繕えない。


「ここだ」


 気づくと目的の店に着いていた。目の前にそびえる巨大な看板の店は大衆食堂と雑な酒場を、足して二で割ったような造り。

 むさ苦しいおっさんの笑い声が響いてくるようなところだが、今日はそれほどうるさくない。結果としてマシロに変な影響を及ぼさないならば大歓迎だ。おれ達は店の中へと入った。


「今日はマジでラッキーだな」


 お昼時だというのに人はほとんどいない。昼から酒を飲むのもどうかと思うが、そのような賑わいが通常なのだ。 だが今日はそのような人達は一人としていない。うるさくないのはやはり良いが少し寂しくもある。


「やあお姉さん、六ツ足ポークの丸焼きを一つ頼めるかな?」


 おれのイイカンジの笑顔と口調で、お姉さんは足を止めた。一瞬虫を見るような目付きだったことは気づかない。


「ごめんなさいね、今は出せないの」

「出せない? じゃあ、音速コンドルのスープとかは?」

「それも今は……」


 ここはこの村で一、二を争うほどの繁盛店で、もちろんその理由は料理だ。だというのに肝心の看板メニューを二つも出せないのはおかしい。


「何かあったのか?」


 少し、気になる事態になっているようだった。おそらくおれが頼もうとしていた料理の他にも出せないものがあるらしい。だからこんなにも人気が無いのか。


「う~ん、実はねぇ、何か火が付かないのよ。昨日までは魔法じゃなくてもどうにかなったのに今日は魔法使い様達も駄目みたい」


 火を出すことはこの世で一般的な魔法だ。火起こしやマッチなどでなら魔法の苦手な奴でも火は付けられる。魔法でも道具でも火を付けられないなどあるのだろうか。


「そんなことが? どれ……」


 おれは指を一つ鳴らした。別にその動作自体に意味はないが、何となくの気分である。

 何度も言うが、おれは『魔王』だ。魔を統べる絶対的な王であり、何人たりともおれの魔法を妨げることはできない。

 目の前のテーブルを一気に燃やして、あのお姉さんが驚いた瞬間何事もなかったかのように元に戻す。着火魔法と復元魔法の応用くらい魔王である俺ならば、という格好よさを見せつける。はずだったのだが、


「え?」


 全く何も起こらなかった。

 おれは、魔王だぜ?

 

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